今季は残念ながら優勝には届きませんでしたが、1年かけてチームは一回り成長することができました。その中心にいたのは、ピッチャー陣です。エース松本英明を中心に非常にまとまりがありました。野手では、後期から参加した深江真登の存在が大きかったです。

 

 オリックスで4年間プレーした深江は、チームの中で自分をいかす方法を考えながらプレーできる選手です。独立リーグにいる選手のほとんどがNPB入りを目指しているので、とにかく良い成績を残してアピールしようと、自分のことで手一杯になる選手が多い。そのため、チームが勝利するために自己犠牲を払える選手は、あまりいません。

 

 これはプロでも共通して言えることですが、タイトルをたくさん獲っている選手なのに、チームの優勝に縁がない選手がいます。その一方で、脇役的な選手でも移籍先で優勝を経験する選手がいます。後者には、井端弘和(中日-巨人)や稲葉篤紀(ヤクルト-北海道日本ハム)が挙げられます。彼らが移籍先でもチームに貢献できたのは、自分の役割を理解し、きっちり実践していたからだと思います。

 

 井端や稲葉のように、深江は組織の中で良い化学反応を起こせる選手です。僕が選手たちに「あぁしろ、こうしろ」と指導する以上に、深江はチームメイトの良い指標になってくれたと思います。深江は数字以上にチームに良い影響をもたらせてくれました。

 

 既存の選手は危機感を

 今オフ、エース松本をはじめ、抑えの平良成、左の強打者・河田直人などチームを支えてきた選手たちが退団しました。彼らに代わって、新たに投手4人、野手5人を先日行われたドラフト会議で獲得しました。

 

 投手は、2位の加藤佳樹(TFUクラブ)、3位の西川拓馬(愛知大学)の“長身コンビ”に期待しています。身長188センチの加藤は、スリークォーターから球威のあるボールを放ります。総監督の江本孟紀さんタイプです。西川も身長183センチと長身のピッチャーです。今まではどちらかと言うと、他の3球団に比べて小柄な投手が多かったのですが、2人が加入したことでイメージは変わると思います。加藤と西川が中心になって、勝ち星を稼いでいって欲しいです。

 

 一方、野手は4番タイプのバッターを2人獲得しました。1位で指名した外野手の安藤優作(愛知大学)と6位の高野勇太(関東学院大)です。彼らは非常にパンチ力があります。ドラフト8位ながら内野手の森田吉輝(新日鐵住金大分)も良い素質を持っています。バッティングはともかくとして、守備が非常に巧いです。新人選手の存在は既存の山下和則、大城優太、祐人などに刺激を与えることでしょう。

 

 また、先月には初めて韓国でトライアウトを実施しました。僕も現地に伺いましたが、大柄でパワーのある選手が何人かいました。今季は常に「打線の強化」が課題に挙がっていましたが、来季からはガラリと変わると思います。

 

 今年のドラフトは大満足な結果に終わりましたが、その分、既存の選手たちはもっと頑張らなければいけないでしょう。既存の選手とドラフトで獲得した新人たちが試合をした場合、もしかすると新人チームが勝つかもしれません。それぐらい新人たちには力があります。既存の選手たちは今季以上に危機感を持って、更なる技術の向上に取り組んで欲しいです。来季も応援よろしくお願いします!

 

駒田徳広(こまだ・のりひろ)プロフィール>:高知ファイティングドッグス監督
 1962年9月14日、奈良県出身。桜井商高から80年にドラフト2位で巨人に入団。3年目の83年にNPB初のプロ初打席での満塁ホームランを放つ衝撃デビューを果たす。この年のリーグ優勝に貢献。89年には一塁手のゴールデングラブ賞を獲得(以降、一塁手では最多の10度受賞)。恐怖の7番打者として日本シリーズMVPに輝く。94年にはFA宣言をして横浜へ移籍。98年にはマシンガン打線の中軸を任され、ベストナインを受賞。チームは38年ぶりの日本一を達成する。チャンスに強く、満塁ホームランは歴代5位タイの13本を記録。00年に2000本安打を達成し、同年限りで引退。05年には新規参入した東北楽天の打撃コーチに。09年は横浜の打撃コーチ、12年からは常磐大の臨時コーチを務めた。16年より、高知の監督に就任。現役時代の通算成績は2063試合、2006安打、打率.289、195本塁打、953打点。

 

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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