151029二宮: 普段、トレーニングはどのくらいされるんですか?

廣瀬: 通常は週2回、練習しているんですが、平日は午前中、仕事をしてから午後練習なので、3時間くらいですかね。日曜日は休憩を入れて、約5時間やっています。普段は千葉県でトレーニングをしているんですが、東京でやる時は、他の選手に混じって練習しています。

 

二宮: 現状、ボッチャ専用の練習場は多くない?

廣瀬: ええ。専用はほとんどありません。公共施設などの体育館を借りて練習しています。許可を貰って、ラインを引けるところは引いてコートを作るとう作業を毎回しています。もっとボッチャをやれる場所があればいいなとは思いますね。

 

伊藤: STANDでもパラスポーツの体験会を行いますが、そのようなイベントにボッチャは向いているんです。室内でプレーするから天候に左右されないことと、比較的道具がシンプルで、大がかりじゃない。そして誰でも簡単にプレーすることがでます。体験された人はみんな「面白い」と言いますよ。

廣瀬: そうですか。それはうれしいですね。

 

伊藤: やはり取り掛かりやすい面もあるのでしょうか?

廣瀬: はい。最初はボールを寄せられなくても、だんだん体が慣れてくると、うまくできるようになってきて、徐々に白熱してきますね(笑)。最後には「負けたくない」と意地になる人もいます。見るのとやるのでは、全然違うので是非挑戦してもらいたいとは思いますね。

二宮: ボールもお手玉を大きくしたような感じですよね。割と日本人に馴染みやすいような感じがあります。駆け引きの醍醐味もあり、やってみたら夢中になるのも分かります。廣瀬さんが国際大会を通じて感じた外国との違いは?

廣瀬: 私は事務の仕事をさせていただいているんですが、海外ではボッチャを仕事としている、プロみたいな選手もいるんです。日本では、まだボッチャだけではやっていけない。ボールなどの用具費や、遠征費などは、まだ自己負担の部分もあるんです。正直、ボッチャだけでは、食べていけないのが実状です。

 

二宮: 世界ランキング上位は、プロのように競技に専念している選手が占めているのでしょうか?

廣瀬: 全員ではないと思いますが、何人かはいると思います。また、海外ではメダルを獲れば一生を保証される国もある。やはりそこが日本と違う面なのかなと思います。

 

二宮: そのためにはボッチャそのものの知名度を上げないといけないですよね。

廣瀬: そうですね。海外では、国自体がボッチャをバックアップしているところもある。まだ日本は、そこまでいっていないですね。それは知名度的に低いことも理由だと思います。ボッチャのことを話すときには、「どういう競技か」という説明から始めなければいけませんから。

 

 普及のために知名度アップを

 

伊藤: 比較的障がいが重い方にも「スポーツは見るものだけではなく、自分たちもやるものだ」と思ってもらえる競技のひとつが、ボッチャではないでしょうか。

廣瀬: そうですね。ボッチャは重い障がいのある方もチャレンジできるスポーツ。私が所属するクラブでも参加は大歓迎なので、是非やってみてください。"ボッチャをやりたい"という気持ちになればなと思います。


伊藤: "私もできるかも"と思ってもらえればいいですよね。障がいのある人だけじゃなく、例えば高齢者の方もチャレンジできるスポーツですよね。

廣瀬: ボッチャのプレーは投げることだけなので、老人ホームでもできると思います。比較的、簡単にできるスポーツだと思うので、是非やってもらいたいです。

 

二宮: シッティングバレーなどでも、健常者と障がい者が一緒になってやっていますからね。あのような環境があればいいですね。今後、競技を普及させていくためには、やっていきたいことはありますか?

廣瀬: ここ何年かは普通学校や特別支援学校から依頼が来ることが結構多くなりました。特別支援学校では、障がいの重い方もいます。そのような学校訪問、またはイベントでボッチャをやることで、もっと人口的に広がっていくのかなと。競技で結果を残すのももちろんですが、そういうところでも頑張りたいなと思います。

 

(第4回につづく)

 

廣瀬隆喜(ひろせ・たかゆき)プロフィール>

1984年8月31日、千葉県君津市生まれ。市原ボッチャクラブ、Noble Wings所属。競技歴12年。ボッチャ競技クラスBC2。先天性の脳性麻痺で高校3年時にボッチャを始める。2003年、日本選手権に初出場ながら3位に入賞すると、06年には初優勝を果たす。同大会では、BC2クラスで史上最多の6度の優勝を誇る。08年北京、12年ロンドンと2大会連続パラリンピック出場するなど国際経験も豊富。今年6月にBoccia World Open Championships Poznanで団体優勝、個人3位入賞すると、7月にはBoccia World Open Seoulで個人準優勝を果たした。左下投げ。


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