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(写真:二代目ミヤマ仮面<左端>、クワガタ忍者<前列左から2番目>などが旗揚げ戦に出場した)

「プロレス団体を作っちゃおう。名前は『森のプロレス』」

 僕は、かねてよりリング復帰を公言しているが、その最終段階として自らがファイトするリングを用意しようと考えた。正直まだ身体は戻ってはいないが、もうすぐ2年を迎える闘病生活の中で、変革を起こしたい気持ちから、このような大胆な発想が生まれたのだった。

 

 もちろん、選手やスタッフを抱える従来のプロレス団体のような大掛かりなことをやろうとは思ってはいない。かなりライトなイベント的プロレスをイメージしているので、団体と言っては少々語弊があるかもしれない。その都度実行委員会的なものを作り、いろいろな人たちの協力を受けながら、みんなで作り上げていく形をとるのが『森のプロレス』の構想だ。まあ、名前の通り、ゆるい感じなのである。心の負担にならないエキサイティングなチャレンジこそが、今の自分にとっては最良の治療にもなる。

 

「いや~、想像するだけでワクワクする」

 このプランを絵空事で終わらせないためにも僕は早速、行動に移した。

 

「組織としてアピールするには、その象徴となるロゴが必要」

161125kakihara3 口で理想を語るよりもビジュアルから入る方が手っ取り早い。

 

「おぉ~~! これこそが、森のプロレスだ!」(イラスト参照

 10年来のお付き合いをさせていただいている漫画家さんにロゴ作成を依頼したのだが、イメージ通りのイラストが届き、ますます力が入った。

 

「これを見ているだけで、自然への感謝の念が生まれてきます」

『森のプロレス』は、他の団体との差別化を図る意味でもキャンプ場などアウトドアで行なう方針でいる。「森へ感謝する」。これを少しでも伝えられるビッグイベントにできたら最高だ。

 

「自然への恩恵を忘れぬ精神で、子どもからお年寄りまでの三世代をハッピーにしたい」

 これこそが、森のプロレスの理念なのだ。

 

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(写真:リング上では子どもたちを対象にしたプロレス流トレーニング教室も行なわれた)

「プロレスを知らない人たちを対象にした場合、どうやったら喜んでもらえるだろうか?」

 そこで思いついたのが体験型のプロレスだ。小さなお子様をリングに上げ、プロレス流のトレーニングを体験してもらうのである。もちろん本格的な形ではなく、マット運動など遊び感覚で参加してもらうと子どもたちだけでなく、見ている人もほっこりして楽しいはず。担当するのはプロの選手だから安全安心だ。

 

 運動不足の大人の人には、「なりきりレスラー体験」がオススメ。

 プロレスのマスクを被り、入場曲に乗ってリングへ登場してもらう。リングアナにコールされるまでの過程を楽しめるのだ。宴会のノリで自由にパフォーマンスしてもらえれば、きっと大きな笑いが起きるだろう。さらに本格的なものを求める一部のマニアには強烈な案がある。それは、プロの選手の胸を借り、エキシビションマッチを行なう。その名も「夢を掴め! ドリームキャッチャー」という仰天プランだ。

 

 僕のまわりのアラフォーのオヤジたちの中には、プロレスラーになるのが夢だったという人が意外にも多いのだ。そんな人たちの夢を何とか叶えたいと思ったのである。ただし、事前に健康状態やスキルレベルをしっかりと把握しておく必要がある。見よう見まねのプロレスごっこは大惨事を招く恐れがあるからだ。事前に稽古を組むなど安全面をしっかりと配慮したうえで、夢を成就するお手伝いができたらと考えている。夢を持つことが、何よりも生きる原動力になることを、僕自身が病気になって気づいたからだ。きっと見ているお客さんも心からその夢を応援したくなるはずである。

 

 他には、猪木さんの闘魂ビンタよろしくレスラーのチョップを胸に受けて、気合いを入れてもらう「気合だ! チャレンジ・コーナー」というのも考えている。

 

 以上のような企画ものと、エンタメ色の強い本物のプロレスの試合(ルチャリブレのような飛び技を中心としたものや女子プロ)をミックスさせた内容で、10月30日に初戦を行なった。

 

 場所は静岡県浜松市にあるキャンプ場『渚園』だ。

 記念すべき旗揚げ戦は、お世話になっているキャンピングカー・メーカー『ナッツRV』の感謝祭でやらせていただいた。これが予想以上に反応が良く、大きな手応えを掴むことができた。

 

「肩の荷が下りた」。これはお客様の反応を見ての僕の率直な感想だ。

 夏前から具体的な準備に取り掛かり、直前まで頭を悩ませながらこの日を迎えたので、皆さんの反応を見て、心底ホッとした。

 

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(写真:「夢を掴め! ドリームキャッチャー」など企画も好評だった)

 前述の企画コーナーが好感触だったのは、当然ながらプロの選手の試合が良かったからだ。

 パフォーマンス技量の高い選手を重視し、ブッキングしたのが正解だった。

 

 課題はプロレス未経験のクワガタ忍者をどう光らすかだった。

 キャンピングカーのイベント内で行なう以上は、馴染みのあるキャラクターを主役に構成するのがベターだというはやて選手のアイデアを優先したのである。はやて選手は「みちのくプロレス」で、三代目・こまち選手と共に東北新幹線をモチーフにしたキャラクターで一世を風靡した大ベテラン選手であり、何よりもプロレス頭脳が素晴らしい。

 

 ちなみに、こまち選手の中身は、後に「神の子」と呼ばれ、メキシコだけでなく世界中で注目を集めているあのミスティコ選手なのだ。「神の子」を育てたと言っても過言ではないはやて選手から特訓を受けたクワガタ忍者は短期間で急成長を遂げることができた。試合でミスのない安定した動きを見せられたのは師匠のおかげなのは間違いない。

 

 少し親バカも入ってはいるが、息子クワガタ忍者の今後の活躍が楽しみでもある。

 当然ながらミヤマ☆仮面も負けてはいられない。今回は僕の代わりに二代目・ミヤマ仮面が頑張ってくれたが、がんを克服した姿を今後はリングで見せていかなければならない。

 

 同じ病で苦しんでいる人たちに「希望の光」を届けられるよう、地道にトレーニングに励み、リング復帰を果たしたいと思う。『森のプロレス』の実行委員長としても手腕を発揮し、多くの人をハッピーにしていきたい。

 

(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)


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