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(写真:立ち上がりは「緊張もあった」というアボットだが、ほぼ危なげなかった)

 26日、第49回日本女子ソフトボールリーグ決勝トーナメント初日が東京・神宮球場で行われた。第1試合はリーグ戦1位のトヨタ自動車レッドテリアーズは同2位の太陽誘電ソルフィーユを4-0で下し、27日の決勝へとコマを進めた。4位決定戦となる第2試合は、同4位の日立サンディーバが同3位のビックカメラ高崎BEE QUEENを7-4で破った。日立は太陽誘電との27日の3位決定戦に臨む。一方、ビックカメラは4位が確定し、連覇はならなかった。

 

◇準決勝

 アボット、毎回11奪三振で3安打完封

太陽誘電ソルフィーユ       0 = 0000000

トヨタ自動車レッドテリアーズ   4 = 102010×

勝利投手 アボット(1勝0敗)

敗戦投手 藤田(0勝1敗)

本塁打 (ト)山崎1号ソロ、峰1号ソロ

 

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(写真:女房役の峰はホームランを含む2打点とバットでも貢献)

 8年連続でリーグ戦1位通過のトヨタ自動車が、“順当”に決勝へと進んだ。決勝進出も8年連続となった。

 

 トヨタ自動車はモニカ・アボット、太陽誘電は藤田倭。互いにエースを立てて臨んだ準決勝は初回に試合が動いた。1回裏、トヨタ自動車は投げては最多勝、打っては本塁打と打点の二冠の“二刀流”藤田を2死から攻め立てる。3番・長﨑望未が二塁打で出塁すると、4番・坂元令奈が四球を選んだ。一、二塁のチャンスで5番・渥美万奈が二遊間を破るタイムリーヒット。「必ずチャンスが回ってくる。“絶対私が打つ”と昨日からイメージしていた」という渥美が、イメージ通りの打撃でトヨタ自動車に先制点をもたらした。

 

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(写真:死球で出塁後、常に先の塁を狙う走り。足でも魅せた山崎)

 追加点は3回裏だった。再び2死から6番・山崎早紀、7番・峰幸代が2者連続ホームラン。3-0と突き放すと、5回裏にはデッドボールで塁に出た山崎が二盗してチャンスを作った。続く峰が三遊間へ弾き返すと、山崎が三塁を蹴ってホームへ突入。クロスプレーとなったが、本塁へと滑り込んだ山崎の足が勝った。試合前のミーティングでは「5点」を目標にしていた得点には1点届かなかったが、抜群の安定感を誇るエースには十分すぎる援護点だった。

 

 アボットは今季は10勝を挙げ、防御率0.68、118三振を奪った。10月には完全試合を達成。「チーム全体が強い気持ちで入っていけた」と語る長身のサウスポーは、自らのピッチングに集中していた。球速110キロを超える威力のあるストレートと、落差のあるチェンジアップで打者に的を絞らせない。毎回の計11奪三振。太陽誘電打線を3安打に抑え、シャットアウトした。特に二冠王の3番・藤田、キャプテンで4番・佐藤みなみの太陽誘電のポイントゲッターを封じたのは大きかった。福田五志監督は「100点。安心して見ていられた」と称え、決勝の先発を予告した。

 

 2年ぶりの王座奪還へ。「明日が勝負」と福田監督は気を引き締める。キャプテンの坂元も「どこが決勝に上がってきても、先に点を取ることが大事になる。誰のところでチャンスが回ってきても、自信を持って打席に入れるような雰囲気をしっかり作っていきたい」と意気込んだ。

 

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(写真:昨年の決勝トーナメントMVP上野が4回KOの大誤算)

 山田、2安打3打点でエース上野打ち崩す

ビックカメラ高崎BEE QUEEN   4 = 0000004

日立サンディーバ         7 = 020401×

勝利投手 小薗(1勝0敗)

敗戦投手 上野(0勝1敗)

本塁打 (ビ)北口1号3ラン、山本1号ソロ

     (日)田邊1号2ラン、山田1号3ラン

 

「上野で負けたらしょうがない」。ビックカメラの宇津木麗華監督が自信を持って送り出した絶対的エースの上野由岐子だが、強打を誇る日立打線にとらえられた。上野も「自分のせいで負けた」と唇を噛んだ。

 

 上野にとっては不運な部分もあった。2回裏、1死から6番・林佑季の当たりはボテボテのゴロが三塁線に転がった。サードの山本優は見送ったが、打球は切れることなくフェアグラウンドに残った。続く7番・田邊奈耶には外角の球をうまく当てられた。すると打球はレフトスタンドに飛び込む2ランとなった。伏兵に手痛い一発を浴びて、2点のリードを許した。

 

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(写真:「低めにコントロールすることを意識した」小薗はテンポよく丁寧に投げた)

 上野を援護したい打線だったが、4回表には無死一、二塁のチャンスを生かせなかった。1死後、6番・柳井春奈はライト前ヒットを放ったが、日立の好返球に阻まれてホームが遠い。7番・キャッチャーの我妻悠香もセカンドフライに倒れて、無得点に終わった。

 

 その裏、ピンチを乗り切った日立が勢いに乗る。二死二、三塁で9番・長谷川千尋がショートへの内野安打で得点を加える。そして打席に入るのは1番・山田恵里。上野とは長きに渡って代表で共に戦ってきた。世界最高のピッチャーに対し、「とにかく勝負を楽しんで初球からどんどん振っていこう」と心がけていた山田は、外寄りの初球を叩いた。打球は左中間へ飛び、フェンスを越える。勝負をほぼ決定づける3ランだった。

 

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(写真:7回に意地の3ランを放ったキャプテンの山本)

 日立打線は4回で上野をマウンドから引きずり降ろした。6回裏には上野の後継者として期待されている2番手・濱村ゆかりから1点を奪い、7点の大量リードを奪った。日立は7回表に2番手の山中しほが3ランを打たれて、先発の小薗美希がリエントリーで再登板。続く山本にソロホームランを浴びたものの、7-4で逃げ切った。

 

 日立が“下剋上”で、連覇を狙うビックカメラを打ち崩した。キャプテンの林は「4位からのスタート。失うものは何もない。とにかく前へ前への姿勢を貫きたい」と語った。16年ぶりの日本リーグ制覇へ、あと2勝だ。

 

(文・写真/杉浦泰介)