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(写真:四者協議の進行役を務めたIOCのコーツ副会長<右>)

 29日、国際パラリンピック委員会(IOC)、東京オリンピック・パラリンピック組織員会、東京都、政府の代表による四者協議が都内のホテルで行われた。見直しが検討されていた3競技会場のうち、ボートとカヌー・スプリントの海の森水上競技場、水泳はアクアティクスセンターの新設を決めた。バレーボール会場は有明アリーナを新設と、既存施設の横浜アリーナを活用かで結論は出ず、12月下旬まで先送りすることとなった。

 

 開始予定時刻より15分遅れて四者のトップ級会合が始まった。IOCのトーマス・バッハ会長が提案した四者協議。組織委からは森喜朗会長、武藤敏郎事務総長、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恆和会長が出席。IOCのジョン・コーツ副会長、東京都の小池百合子知事、政府の丸山珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣などがテーブルを囲んだ。その注目度は高く200人を超える報道陣が会場に詰め掛けた。当初の発表では一部非公開だったが、全体の時間を短縮してフルオープンで開催された。

 

 コーツ副会長の仕切りで議論はスタート。「我々全員は共通の目的を持っている。それはお金を節約することです」と語った。膨れ上がった開催費用のコストカットは四者にとって、至上命題と言ってもいい。コーツ副会長はボート競技経験者。「我々は一緒に船を漕いでいる。その哲学でこれから進んでいきたい」と例えを用いて、森会長へとバトンを渡す。

 

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(写真:大勢の報道陣に囲まれた組織委の森会長<中央>)

 森会長も「我々は共通の船に乗って、共通のテーマは“いいオリンピックをつくろう”“できる限り節約をしよう”です」と応じた。

「節約は大賛成。小池さんが当選されてご挨拶にお見えになった時も私は『改革をすることは大賛成ですよ』と申し上げています。しかし、期間がある。時間を延ばすことによってかかる諸経費を考えてみたら、その方がプラスマイナス逆になってしまうことだってあり得る。だからできるだけ早く結論を出すことが大事かと思います」

 

 政府の代表として出席した丸川オリンピック・パラリンピック担当相は「バッハ会長からお伺いした時に『この提案を実りあるものにしたい』ということをお伝えしました。国としても四者協議に参加、協力をさせていただいてまいりました」と挨拶した。大会経費を抑えることについては、「今後、納税者の理解を得ながらコストカットの議論をしていくためには、パーツではなくコストの全体像を示しながらの議論が必要と考えております。ラフなかたちでも良いので、なるべく早く国民の皆さまにお示しし、それを踏まえながらコストカットの議論、努力を重ねていく必要がある」と意見を述べた。

 

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(写真:組織委の森会長の質問に答弁する東京都の小池知事<左から2番目>)

「1964年を繰り返すというかたちは取らない。むしろ2020年以降のことも考えながら、日本の成長、首都・東京の成長を見据えた大会にしなければならない」と小池知事はプレゼンテーションを行いながら説明した。

「2020年のオリンピック・パラリピックはどうあるべきなのか。『アジェンダ2020』でバッハ会長が謳っておられる。『既存の施設を使っていきましょう』『持続・可能性を追求していきましょう』。それを実際に生かす初めての大会になると考えております」

 

 今回の議題に上がったのは東京都の調査チームによって、見直しが検討されている3競技会場の行方だ。小池知事は水泳会場のアクアティクスセンターは座席数を2万席から1万5千席に縮小することで合意。建設費を683億円から513億円に削減する。ボートとカヌー・スプリントの海の森水上競技場は代替地として、宮城県と埼玉県が候補に上がった。結局は海の森水上競技場新設となった。“復興五輪”の旗印の下、宮城県の長沼ボート場を進めてきたが、事前キャンプへの活用にとどまった。

 

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(写真:政府を代表して出席した丸川オリンピック・パラリンピック担当相)

 2会場は従来通り新設で決定したが、残るバレーボールの有明アリーナはペンディングのままとなった。東京都は既存の横浜アリーナを提案。組織委の武藤事務総長は「横浜アリーナは大変立派でオリンピックゲームをするのにふさわしい施設です。ただ周辺の環境に問題が多いと聞いている」と疑問を口にする。警備面、輸送面で課題が残るという。一方の有明案に対しては「各競技団体が後利用についても参画していくと意向を表明された。国内スポーツ競技のためのレガシーとなる努力を競技団体自らが行うと言っておられる。スポーツ人口はこれから増加する可能性が高い。その観点からもレガシーを残していく必要があるのではないかと思います」と猛プッシュした。

 

 有明案はJOCの竹田会長はもろ手を挙げて賛成する。スポーツ界を代表して意見を述べた。

「『アジェンダ2020』に則って、コスト削減に努めてきました。有明のアリーナが唯一、2020年東京大会の室内競技場のレガシーとして残せる。夏のスポーツだけでなくアイスホッケー、フィギュアスケートなど冬のスポーツもできるような競技場が東京にあることは、日本スポーツ界にとって大事なことです。なんとかこれを認めていただければありがたいと思っています」

 

 一方、小池知事は「いくつか確認しなければならないこともある」として、「クリスマスまでには最終的な結論を出したい」と答えるにとどまった。新設の会場を作っておいて“負のレガシー”として残すわけにはいかない。だが、東京オリンピック・パラリンピック開催までは4年を切っており、時が刻一刻と迫っているのも事実。時計の針を戻すことはできないのだから、慎重な議論と迅速な結論が求められる。

 

(文・写真/杉浦泰介)