浦和レッズの守護神・西川周作のビッグプレーが、チームに勝利を呼び込んだ。

 

 カシマスタジアムで行なわれた鹿島アントラーズとのJリーグチャンピオンシップ第一戦。0-0で折り返した後半6分に“そのとき”は訪れた。

 

 ハーフウェイライン付近での攻防から土居聖真がボールを受け取ると、右サイドからペナルティーエリア目掛けて中に入ってくる遠藤康にスルーパス。浦和にとっては、最大のピンチだった。味方が慌てて戻ろうとするが、西川はスッと前に出て1対1の勝負に挑んだ。

 

 実に落ち着いていた。

 パスを受け取った遠藤の前に立ちはだかると、間合いを詰めたところでドシッと構える。遠藤の利き足は左。西川が体の重心をややファーに傾けると、遠藤は右足でニアに向かってシュートを放った。ボールは西川の胸に当たり、この危機を乗り切った。ファーを警戒していると見せかけて、ニアに打つシュートを誘ったようにも見えた。

 

 試合後、西川はこう振り返った。

「自分としては間合いを詰めながら、(相手よりも)先に動かないってことだけを考えていました。スルーパスに対してうまく間合いを詰めることができたし、遠藤選手も右足(のシュート)だったので、そう慌てることはなかったです。

 先に動くよりも、いい姿勢で(体を)預けるという感じでした。当たったのは胸かな。そのまま手に収まってくれたので良かったです」

 

 はやきこと風のごとく、動かざること山のごとく。

「動」と「不動」でシュートの選択肢を減らせ、完璧に封じてみせた“神業セーブ”だったと言える。

「こういう緊張感のある試合というのはGKの活躍でチームの結果も変わってくると思っていたので、今日必ず(そういうシーンが)一本あると思って守っていました。いい精神状態というか、落ち着いて90分間通してやることができたのかなとは思います」

 

 浦和はこの6分後、興梠慎三がペナルティーエリア内で倒されて得たPKを阿部勇樹が確実に決めた。1点を守り切った浦和が先勝。西川のプレーが、流れを引き寄せた。

 

 西川はGKながら足技のテクニックに長け、攻撃面での貢献も大きい。「自分がゲームメーカーだという意識を持っている」と語るなど、絶対の自信を持つ。だが、本業である守備の安定感が今季は何より光っている。

 

 今季リーグ戦の総失点数は28。18チームで最も少ない数字だ。日本代表でもレギュラーを張り続けている。ガンバ大阪とのルヴァンカップ決勝ではPK戦にもつれ込んだが、西川が一本食い止めたことでチームに優勝をもたらした。

 

 試合を通して安定し、勝負どころの「一本」を抑える。それがチームの勝利に結びつく。流れを読み、チームを白星に導ける存在感のあるGKになってきた。川口能活、楢﨑正剛、そして川島永嗣のように。

 

 チャンピオンシップはまだ終わったわけではない。3日、ホームの第2戦で鹿島を上回って初めて、年間王者の称号を得ることができる。

「いつもどおりにみんながハードワークすることができれば、必ずタイトルは取れると思っています」

 

西川のモットーは「笑顔」。常に沈着冷静で味方に安心感を与えてきた。あのビッグセーブの後もスマイルが出ていた。

 

 ホームの埼玉スタジアムでの最終決戦。優勝して全員のスマイルを引き出すために、西川周作がゴールマウスを死守する。


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