ロンドンでは震災を乗り越え、強さを増した男子がベスト4に挑むロンドンパラリンピックへの出場権をかけて行なわれた昨年11月のアジア・オセアニア地区予選、大一番となった準決勝、車椅子バスケットボール男子日本代表は韓国にわずか1点差を凌ぎ切り、北京に続く2大会連続出場を決めた。代表12名のうち、7名は昨年3月11日に起きた「東日本大震災」の被災者だ。指揮を執る岩佐義明ヘッドコーチは津波で家を失った。しかし、「あの震災で日本はさらに強くなった」と岩佐ヘッドコーチは語る。ロンドンでの目標は初のベスト4。本番を2カ月前に控えた今、ヘッドコーチ自らが名づけたという"ハヤテジャパン"の現状に迫った。

 

二宮: いよいよロンドンパラリンピックまで2カ月を切りました。今は追い込みの時期だと思いますが、チームの状態はいかがですか?

岩佐: 先月はタイに遠征に行きまして、蒸し暑い体育館の中を、みっちりと走らせました。

 

二宮: 車椅子バスケットボールで重要になるのが、車椅子のタイヤの転がり具合だと思いますが、タイの体育館の床はいかがでしたか?

岩佐: 合板に樹脂ワックスが塗ってありまして、見た目は非常にきれいなんです。ところが、全く滑らないので、選手は車椅子を漕ぐのに苦労していました。

 

二宮: 相当な腕力が必要だったと?

岩佐: はい。普通はワンプッシュすると、そのままスーッと転がっていくのですが、タイの体育館は3メートルくらいで、ズンと沈むような感じで止まってしまうんです。

 

二宮: 暑い中、いつも以上に漕がなくてはいけなかったわけですね。

岩佐: そうなんです。でも、かえっていいトレーニングになりました(笑)。9月のロンドンもまだ暑い日もあるでしょうから、暑さに慣れておきたいと思っていましたから。

 

二宮: 本番のロンドンで使用するコートの床については、どういう情報が入っているのですか?

岩佐: 5月にマンチェスターで開催された「パラリンピック・ワールドカップ」に出場したのですが、その時の体育館と同じ素材の床だと聞いています。合板を1枚ずつ貼っているので、ガタゴトと音はするのですが、意外に走りやすかったですね。

 

二宮: 日本にとっては有利に働くと?

岩佐: やりやすいですね。日本が行なっている「アーリーオフェンス」、つまり相手のディフェンスが整わないうちに攻撃をしかけるという戦術には、何よりスピードが求められます。その点、車椅子が転がりやすいというのは日本にとってプラスになります。

 

二宮: 車椅子バスケットは、「North Greenwich Arena」「Basketball Arena」の2つの会場で行なわれます。どんな特徴があるのでしょう?

岩佐: 驚いたことに、自転車競技のバンクの中央の平らな部分にコートと観客席が作られていると聞いています。自転車競技が盛んなヨーロッパならではのつくりですよね。

 

(第2回につづく)

 

岩佐義明(いわさ・よしあき)プロフィール>

1958年1月6日、宮城県生まれ。大学までバスケットボール選手として活躍した。卒業後、宮城県の外郭団体職員として勤務。1989年、「宮城クラブ」を前身とした「宮城MAX」発足当初からヘッドコーチを務める。今年の日本選手権ではチームを4連覇に導いた。2008年北京パラリンピックでは女子日本代表を指揮し、ベスト4入り。09年、男子日本代表ヘッドコーチに就任。ロンドンパラリンピックでは女子に続いて初のベスト4進出を目指す。

宮城MAX http://miyagimax.com/


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