1日、第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝が大阪・吹田スタジアムで行なわれた。56大会ぶりの大阪開催だったが、対戦カードは鹿島アントラーズ(J1)と川崎フロンターレ(J1)の関東勢。結果は鹿島が川崎Fを2−1で下して6大会ぶり5回目の天皇杯王者に輝いた。前半42分、右CKからDF山本脩斗のヘディングで鹿島が先制する。しかし後半9分に川崎FのFW小林悠が同点ゴールを決め、延長戦へ突入する。延長前半4分、鹿島は途中出場のFWファブリシオが右足で豪快にネットを揺らして、追いすがる川崎Fを振り切った。

 

 憎いほどの試合巧者で今季2冠(吹田スタジアム)

鹿島アントラーズ 2-1 川崎フロンターレ

【得点】

[鹿] 山本脩斗(42分)、ファブリシオ(94分)

[川] 小林悠(54分)

 

 元日から両サポーターの声がぶつかり合う。鹿島の選手も川崎Fの選手も選手冥利につきるだろう。詰め掛けたサポーターの声援に背中を押された選手たちは白熱した戦いを披露する。

 

 攻撃が武器の川崎F、堅守が売りの鹿島。狭いスペースをFW大久保嘉人、FW小林悠、MF中村憲剛のパス交換で崩す川崎Fに対して、鹿島は守ってボールを奪うとシンプルに広いスペースを使った。

 

 鹿島は我慢の時間が続いた。前半13分、小林とのワンツーでペナルティーエリア右に侵入した大久保に右足でループ気味にシュートを放たれたが、GK曽ケ端準が右手一本でセーブ。38分には中村とのパス交換で狭いエリアを大久保が突破するも、今度はDF植田直通がブロックした。

 

 攻めあぐねる川崎を横目に先制点をもぎ取ったのは鹿島だった。38分、MF遠藤康が右CKで、弾道を抑えた速いボールをゴール中央へ蹴る。このボールに下がりながら、DF山本脩斗が頭で合わせゴールネットを揺らした。このあたりが勝ち方を知る鹿島らしい。難しい試合での先制点の取り方の手本を示したようなゴールだった。

 

 後半に入ると川崎Fはドリブルのキレが特徴のMF三好康児を投入した。後半9分、鹿島は三好に隙を与える。MF大島僚太が鋭い縦パスを小林へ。小林はスルーをして、ペナルティーエリア右へと走り込む。小林の裏にいてボールを受けた三好は溜めを作って、小林にラストパス。小林は強く右足インステップを振り抜き、ゴール左に突き刺して同点とした。

 

 だが、ここから川崎Fに流れを渡さなかった鹿島の試合巧者っぷりが勝負を手繰り寄せた。相手の攻撃を我慢して受けながらも、逆転ゴールは許さない。しぶとく守って延長戦に持ち込んだ。

 

 すると、延長前半4分、後半終了間際からピッチに立ったFWファブリシオが大仕事をやってのける。MF永木亮太が途中出場のFW鈴木優磨へとつなぐ。鈴木はペナルティーエリア内にいたDF西大伍へボールを託す。西はワンタッチでフリーのファブリシオへ落とす。ファブリシオは右足を振り抜く。このシュートが豪快にゴール右上に突き刺さり、鹿島が勝ち越した。

 

 その後、鹿島はのらりくらりと時計の針を進めてタイムアップ。鹿島が6大会ぶり5度目の天皇杯王者となった。これで鹿島はJリーグと合わせて今季2冠を達成。獲得した国内三大タイトルは19冠目だ。試合後、指揮官の石井正忠は「選手たちが力を振り絞って戦ってくれた。今日来てくれたサポーターのためにも勝ちたかった」とコメントした。主将のMF小笠原満男は「石井さんをはじめ、1年間勝ちにこだわってやってきた。タイトルを獲れてよかった。来季も勝っていきたい。選手、スタッフ、サポーターが一丸となって戦えるのがこのチームの強さ」と語った。

 

 表彰式では小笠原がカップを石井監督に託した。選手たちの中央で誇らしげにカップを掲げた石井の姿は、名将の名にふさわしいものだった。

 

(文/大木雄貴)