第93回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は3日、神奈川・芦ノ湖から東京・大手町までの復路5区間(109.6キロ)が行われた。往路を制した青山学院大学は復路で6区からトップを守り続け、圧勝した。合計タイムは11時間4分10秒で史上6校目の3連覇を達成した。青学大は出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)、全日本大学駅伝対校選手権大会(全日本大学駅伝)と合わせて史上4校目の3冠も成し遂げた。2位に東洋大学が7分21秒差で入り、早稲田大学は8分16秒差の3位だった。

 

 上位10校までに与えられる来年のシード権は順天堂大学、神奈川大学、中央学院大学、日本体育大学、法政大学、駒澤大学、東海大学までが獲得。神大は12年ぶりのシード権獲得。往路12位の法大、同13位の日体大、同15位の東海大は復路で逆転で次回大会への出場権を掴みとった。大会のMVPに相当する金栗四三杯は、6区で58分9秒の区間新記録を樹立した日体大の秋山清仁(4年)が選出された。

 

 アンカーを務めた青学大の安藤悠哉(4年)は大手町に入り、仲間の姿が見えると何度も拳を宙に掲げた。終わってみれば、2位に7分以上の差をつける圧勝で箱根路を制した。

 

 33秒差で制した往路から一夜明け、青学大の原晋監督は当日のエントリー変更で7区に田村和希(3年)、8区に下田裕太(3年)の準エース格の2人を起用した。締めくくりの10区にはキャプテンの安藤に任せた。追う2位の早大も7区から9区までの3区間を入れ替えた。

 

 気温は0度、吐く息が白くなる早朝の芦ノ湖。いの1番にスタートしたのはフレッシュグリーンの襷を掛ける青学大だ。山下りの6区(20.8km)は今年も小野田勇次(2年)が担当する。前回は区間賞こそ新記録を叩き出した日体大の秋山に譲ったものの、区間2位の走りで青学大の連覇に貢献した1人だ。小野田は軽快なピッチで山を下っていく。9.1km地点の小涌園前の通過タイムで、2位・早大に1分を超える差をつけた。

 

 大平台のヘアピンカーブではペースを上げた早大の石田康幸(3年)に差を詰められたが、無駄のない走りで淡々とピッチを刻む。下りの終盤、函嶺洞門付近では1分11秒に差を広げた。小田原中継所まで58分48秒の好記録で襷リレー。区間賞はまたしても区間記録を更新した秋山が獲得したが、小野田は区間2位の走りを見せた。

 

 7区に襷を渡した青学大と早大との差は2分8秒。田村は箱根駅伝2年連続区間賞、今シーズンは出雲駅伝、全日本大学駅伝でも区間賞を獲得している。まさに“駅伝男”とも言えるような田村で一気に勝負を決めにきた。原監督も10kmを通過したあたりで、優勝を確信しかけたと言うが、「アッと驚く“まさか”がありました」と振り返る。

 

 それまで笑顔を見せていた田村が15kmを過ぎて、徐々に表情が険しくなる。顔を歪め、時にフラフラと蛇行するように走った。日差しが照り始め、急激な気温上昇により、体調を崩したのかもしれない。田村には「暑さに弱い」という評もあった。1km3分20秒台と、一気にペースダウンした田村は、なんとか下田に襷を繋いだ。区間11位の大ブレーキ。2位・早大との差は1分21秒まで縮まった。

 

 襷を受けた下田は、前回も8区を走って区間賞を獲得している。当時はレース直後にTVカメラに向かってピースサインを見せる余裕もあったほどだ。飄々としたキャラクターで、田村と並ぶ次期エースがチームを救う。「田村がああいったことになることも想定していたので、平常心で自分の走りができた」。立ち上がりから快調に飛ばし、勢いをつける。

 

 緩やかな風が吹いていたが、20年破られていない区間記録を狙って、快走する。15.6km地点にある遊行寺の坂を通過する頃にはペースが落ち始め、区間記録には16秒届かなかった。「15kmまで攻めることができて、ラスト動かないのは単純に力不足と感じた」と下田。それでも2位の早大とは5分半の差がついた。原監督が「圧巻の走り。後ろから見て惚れ惚れしました」と称え、優勝を確信させたほどだった。

 

“ウイニングラン”となった9区、10区はこれが最後の箱根路となる池田生成(4年)と安藤が務めた。最初で最後の箱根駅伝となった池田は区間2位、2年前の初優勝時にもアンカーを務めた安藤は区間4位で、2位との差を広げた。安藤は「走った選手もそうですが、サポートしてくれた選手も含め、いろいろな思いが詰まった」という襷を無事に大手町まで届けた。

 

 3連覇は日大、中央大学、日体大、順大、駒大に次ぐ6校目。駅伝3冠は大東文化大学、順大、早大に続いて4校目だが、同時達成は史上初の快挙である。原監督は関係者に謝辞を述べた。

「13年前に強化をスタートして、青山学院をそして原を信じて学生を送ってくれた高校の先生に感謝を申し上げたいと思います。各年代の4年生が毎年、毎年、青山学院の歴史を作ってくれた」

 

 圧倒的な強さを発揮した青学大だが、一色恭志、秋山雄飛、安藤ら主力は卒業する。小野田は「もう1回6区を走って区間賞を狙っていきたい」と早くも意気込む。下田は「今回は自分の走りやすい区間で走らせてもらって結果を残せた。来年はエース区間でしっかり結果を残したい」と主要区間へ立候補した。箱根の覇権争いには東洋大、早大、駒大の他にも、主力が多く残る順大、神大、東海大が加わってくるはずだ。来シーズンは青学大の黄金時代ではなく、群雄割拠の戦国時代に突入する。

 

 総合成績は以下の通り。

 

(1)青山学院大(2)東洋大(3)早稲田大(4)順天堂大(5)神奈川大(6)中央学院大(7)日本体育大(8)法政大(9)駒澤大(10)東海大(11)帝京大(12)創価大(13)大東文化大(14)拓殖大(15)上武大(16)國学院大(17)山梨学院大(18)明治大(19)日大(※)関東学生連合(20)国士舘大

※OP参加のため順位なし

 

(文/杉浦泰介)