打率3割3分5厘、29本塁打、16盗塁(2016年)。今のカープで最も“トリプルスリー”(打率3割以上、ホームラン30本以上、盗塁30個以上)を期待できるのが鈴木誠也である。

 

 カープには過去に2人、トリプルスリーを達成した選手がいる。95年の野村謙二郎(3割1分5厘、32本塁打、30盗塁)と2000年の金本知憲(3割1分5厘、30本塁打、30盗塁)だ。

 

 トリプルスリーこそ達成していないものの、昔からカープには長打があって盗塁もできる選手が多かった。山本浩二、衣笠祥雄、緒方孝市、前田智徳……。その延長線上に鈴木もいる。

 

 今季、鈴木には盗塁王を狙ってもらいたい。先の塁への意識の高まりは、バッティングにも好影響をもたらせると思われるからだ。

 

 日米通算2224安打、293本塁打、224盗塁の井口資仁(千葉ロッテ)はダイエー時代、プロ入り5年目にして初タイトルを獲った。それが盗塁王だった。それまでは99年の14個が最多で走れる足はあるものの、もっぱら自らの関心は打率やホームランの数の方に向いていた。

 

 そんな井口に、外野守備走塁コーチの島田誠は言った。「盗塁王を狙え!」。キョトンとする井口に向かって島田は続けた。「ひとつタイトルを獲れば、この世界で生きていく自信になるし、球界に名を残すこともできる」

 

 島田のアドバイスはバッティングにも生きた。井口は語る。「盗塁王を目指すようになって、打席に入っているバッターへの相手バッテリーの配球を読むようになりました。確率の高いところで走らないと成功しませんからね」

 

 44個をマークし、初の盗塁王に輝いた01年、井口はホームランを初の30本台(30本)に乗せた。盗塁との相乗効果は明らかだった。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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