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(写真:高島チェアマン<右>からMVPの盾が贈られる中靏)

 15日、ラグビーのトップリーグ表彰式が都内で行われ、最多トライゲッターを受賞したWTB中靍隆彰(サントリーサンゴリアス)が自身初のMVPに輝いた。4年ぶり4度目の優勝を果たしたサントリーから中靍の他、キャプテンのSH流大、SO小野晃征ら6名がベストフィフティーンに選出。小野は得点王も受賞した。新人賞にはルーキーながら全試合出場し、10トライを挙げたNo.8松橋周平(リコーブラックラムズ)が選ばれた。

 

 王座を奪還したサントリーのトライゲッターが、初のMVPを手にした。リーグ最多の17トライを挙げた中靍が、司令塔で得点王の小野や大黒柱FLジョージ・スミスを押し退けての受賞だ。

 

 地道な取り組みが実った結果だ。中靍は早稲田大学からサントリーに入社して4シーズン目だった。これまで試合に出られなくても腐らず、トレーニングを続けてきたのだ。身体作りにもこだわり、食事は鶏のむね肉を中心に摂る徹底ぶり。大学時代と比べると、10kg近く増量した。開幕戦はメンバー外だったが、長男の誕生にも立ち会うことができ、“父親としてカッコ良い姿を見せたい”と精神的にもノッた。

 

 2節目からリザーブ入りし、試合に出場。3節はスタメン、4節で初トライと徐々に階段を駆け上がってきた。速いだけでなく、強さもあった。ステップのキレも冴え渡る。そこから量産体勢に入り、パナソニック ワイルドナイツやヤマハ発動機という優勝を争う相手からもトライを奪った。積み上げたトライは17個。「トライに繋がるパスをくれたチームメイトに感謝したい」と最多トライゲッター獲得を喜んだ。

 

 チームは昨季9位からの復活劇を見せた。「今年は空いているスペースを攻めるということをサントリーはやっている。その中でコミュニケーションが必要。チームの中でしっかりと試合中に取り組んできたことがチームの躍進に繋がったのかなと思う」と中靍。ワイドに攻撃を展開するチームの戦術とマッチしたこともあるが、中靍の決定力がサントリーに栄冠をもたらしたと言ってもいいだろう。

 

 中靍は「この素晴らしい賞に恥じない選手となるように日々努力していきたいと思います」とスピーチした。目標は日本代表、スーパーラグビー参戦も視野に入れる。「スピードが一番の武器。世界と戦う上ではフィジカルが重要になってくるので、そのレベルをインターナショナル・スタンダードまで上げて、チャンスを狙っていきたい」と意気込んだ。

 

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(写真:沢木新監督<右手前>、キャプテン流<左手前>の新体制で栄冠を手にしたサントリー)

 ベストフィフティーンにはサントリーが最多の6名が選ばれた。初受賞は過半数を超える9名。高島正之チェアマンは「ベストフィフティーンが象徴するように若手の台頭が目立つシーズンとなりました。日本ラグビー界にとって非常に大きな前進であり、成長であると思っています。トップリーグ全体の底上げが証明されたといっても過言ではありません」と胸を張った。

 

 一方で今シーズンの総入場者数は46万364人。高島チェアマンは「大きな悩みの種」と語るように、開幕前に掲げていた目標の54万人には遠く及ばなかった。1開催平均も昨季の6470人から2割以上減の5059人となった。「選手はレベルアップしてくれている。集客には工夫が必要」と述べた。昨季は2015年イングランドW杯でのジャパンの躍進が動員を大きく後押しした。今季はリオデジャネイロ五輪で7人制ラグビーが4位に入る大健闘を見せたが、ラグビーブームを持続することはできなかった。来季はW杯もオリンピックもない。地力が問われるシーズンとなるだろう。

 

 主な受賞チーム、選手は次の通り。

 

【優勝】

サントリーサンゴリアス 4季ぶり4回目

【2位】

ヤマハ発動機ジュビロ

【3位】

パナソニック ワイルドナイツ

【ベストファンサービス賞】

神戸製鋼コベルコスティーラーズ 2季ぶり11回目

リコーブラックラムズ 初

【フェアプレーチーム賞】

ヤマハ発動機ジュビロ 初

 

【MVP】

中靏隆彰(サントリーサンゴリアス) 初

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(写真:昨季の新人賞・小瀧<右>と記念撮影をする松橋)

【新人賞】

松橋周平(リコーブラックラムズ)

【最多トライゲッター】

中靏隆彰(サントリーサンゴリアス) 初

【得点王】

小野晃征(サントリーサンゴリアス) 初

【ベストキッカー賞】

ゲラード・ファンデンヒーファー(ヤマハ発動機ジュビロ) 初

【ベストホイッスル賞】

麻生彰久 4季連続4回目

 

【ベストフィフティーン】

PR1 稲垣啓太(パナソニック ワイルドナイツ) 4季連続4回目

HO 日野剛志(ヤマハ発動機ジュビロ) 初

PR3 伊藤平一郎(ヤマハ発動機ジュビロ) 初

LO ヒーナン・ダニエル(パナソニック ワイルドナイツ) 2季連続6回目

LO ジョー・ウィーラー(サントリーサンゴリアス) 初

FL ジョージ・スミス(サントリーサンゴリアス) 3季ぶり4回目

FL 布巻峻介(パナソニック ワイルドナイツ) 初

No.8 松橋周平(リコーブラックラムズ) 初

SH 流大(サントリーサンゴリアス) 初

SO 小野晃征(サントリーサンゴリアス) 4季ぶり3回目

WTB 中靏隆彰(サントリーサンゴリアス) 初

WTB 山下楽平(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 2季ぶり2回目

CTB ヴィリアミ・タヒトゥア(ヤマハ発動機ジュビロ) 初

CTB 立川理道(クボタスピアーズ) 初

FB 松島幸太朗(サントリーサンゴリアス) 2季ぶり2回目

 

【特別賞】

北川智規(パナソニック ワイルドナイツ) ※通算100トライ達成

大野均(東芝ブレイブルーパス) ※通算150試合出場達成

大田尾竜彦(ヤマハ発動機ジュビロ) ※通算150試合出場達成

山村亮(ヤマハ発動機ジュビロ) ※通算150試合出場達成

山下裕史(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) ※通算100試合出場達成

タウファ統悦(近鉄ライナーズ) ※通算100試合出場達成

金哲元(近鉄ライナーズ) ※通算100試合出場達成

飯島陽一(パナソニック ワイルドナイツ) ※通算100試合出場達成

田邉篤(近鉄ライナーズ) ※通算100試合出場達成

杉浦敬宏(宗像サニックスブルース) ※通算100試合出場達成

ホラニ龍コリニアシ(パナソニック ワイルドナイツ) ※通算100試合出場達成

猪瀬佑太(NECグリーンロケッツ) ※通算100試合出場達成

田中史朗(パナソニック ワイルドナイツ) ※通算100試合出場達成

ヒーナン・ダニエル(パナソニック ワイルドナイツ) ※通算100試合出場達成

ロビンス・ブラス(宗像サニックスブルース) ※通算100試合出場達成

竹本隼太郎(サントリーサンゴリアス) ※通算100試合出場達成

湯原祐希(東芝ブレイブルーパス) ※通算100試合出場達成

 

【功労賞】

戸田京介 ※通算100試合担当レフリー

平林泰三 ※通算100試合担当レフリー

 

(文・写真/杉浦泰介)