「高校出の選手も1年目から勝負して欲しい」

 

 こう語ったのは、昨季、最大11.5ゲーム差を引っくり返してリーグ優勝、日本一を達成した北海道日本ハムの栗山英樹監督だ。

 

 高卒選手は3、4年後に戦力になればいい、と口にする監督が多い中、この発言は異例である。

 

 しかし、考えてみれば、栗山監督の発言は至極、まっとうだ。高卒選手だからと言って、「3年、4年は解雇しない」とは契約書に書かれていない。ルーキーの契約は、あくまでも1年が基本である。

 

 私が知っている選手の中には、入団する際に「3、4年は面倒を見る」との言質をとりながら、「球団の方針が変わった」との理由で、2年で「戦力外通告」を受けた選手もいる。

 

 だからと言って焦る必要はない。体力もないのにキャンプで無理をしてケガでもしたら元も子もない。逆に解雇が近づいてしまう。「1年目から1軍の試合に出る」との気持ちを持ちながらも、現時点での体力や技術にしっかり向き合い、足りない部分、欠けている所を補おうとするのがルーキーとしての賢明な態度ではないだろうか。

 

 西武時代の森祇晶監督が好んで使った言葉がある。「徐(しず)かに急げ」。慌てる必要はないが、着実に先に進まなければならない、という意味だろう。

 

 ルーキー、とりわけ18歳でプロの世界に身を投じる若者には肝に命じてもらいたい言葉だ。これは齢をとって感じることだが、時間はあるようでないものだ。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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