表彰式の酒井と丹羽

(写真:結成して間もない中で全日本を制した酒井<左>と丹羽)

 21日、全日本卓球選手権6日目が東京体育館で行われ、男子ダブルス決勝は丹羽孝希&酒井明日翔組(明治大)が、藤村友也&吉村和弘組(愛知工業大)を3-2で下した。丹羽&酒井ペアとしては初優勝。丹羽は松平健太(ホリプロ)とのペアでも制しており、4年ぶりに全日本のタイトルを獲得した。女子ダブルスは平田有貴&永尾尭子組(アスモ)が𡈽田美佳&宋恵佳組(中国電力)を3-1で破って初制覇を果たした。

 

 シングルスは男子が水谷隼(becon.LAB)、平野友樹(協和発酵キリン)、吉田海偉(Global Athlete Project)、吉村、女子が石川佳純(全農)、佐藤瞳(ミキハウス)、平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園高)、橋本帆乃香(四天王寺高)とベスト4が出揃った。8名は22日に同会場で準決勝、決勝を行う。

 

 丹羽、シングルスでの悔しさ晴らす

 

 リオデジャネイロ五輪団体銀メダルメンバーの丹羽が、4年ぶりに全日本でタイトルを手にした。シングルスでは前日に行われた6回戦で敗退。最終日には残れなかったものの、今大会を勝利で終えた。

 

 大学の後輩である酒井と組んだダブルスでは「大会前からチャンスがあると思っていた」と語るように順調に勝ち進んでいった。シングルスでは不調だったが、「シングルスとダブルスでは戦い方が違うので、調子は悪くなかった」と手応えもなくはない。準決勝では昨年の優勝ペアの水谷&吉田雅己(愛知工業大)組に3-1で快勝した。

 

 迎えた決勝は藤村と吉村の愛知工業大のペアと対戦。日本一の男子ダブルスを決める一戦は明大vs.愛工大の図式となった。序盤から流れを掴んだのは丹羽&酒井ペアだった。競った展開から連続ポイントで畳み掛け、11-6で第1ゲームを先取した。

 

 第2ゲームも終盤に4連続得点で突き放し、11-9で取った。優勝まで、あと1ゲーム。ここで20歳の酒井が初Vを意識するあまり「緊張してしまった」という。思い切りのいいショットは影を潜め始め、ミスが目立つ。第3、4ゲームは8-11、5-11と落としてしまう。

 

 一方、丹羽は「決勝で簡単に勝てることはないと分かっていた」と冷静だった。「僕らのプレーが悪いというよりは相手が良かった」と焦ることなく、3学年下の後輩に声を掛けながら、プレーで引っ張った。ファイナルゲーム、逆にミスが目立ったのは相手の方だった。出足のサービスで藤村がミスするなど、丹羽&酒井ペアが優位に試合を運ぶ。チャンピオンシップポイントを取ってからは、2点を返されたものの11-8で押し切った。

 

(写真:丹羽が「攻撃力は日本でトップクラス」と称える酒井のバックハンド)

(写真:丹羽が「攻撃力は日本でトップクラス」と称える酒井<左>のバックハンド)

「たまたま組む相手がいなかった」(丹羽)から結成した即席ペア。組んで間もない中で日本一の称号を手にしてみせた。丹羽にとってはシングルスとダブルス2冠を果たして以来、4年ぶりの全日本選手権優勝だ。丹羽は「(松平)健太さんの時とは違った喜びがある」と、自らが背中で引っ張った自負もある。

 

 丹羽は「パートナーに恵まれてきた」と口にしつつも「誰と組んでも結果を出せている」と言うほどダブルスに対して自信がある。“自分のできることをやる”と迷いはない。3月で明大を卒業し、4月からはプロになる。「今まで以上に勝ちたい」と意気込む。5月の世界選手権が、その覚悟を示す場となる。

 

 伏兵が掴んだ初タイトル

 

 藤井寛子、平野早矢香が現役を引退し、戦国時代に突入した観のある女子ダブルス。昨年も天野優&中島(現・大矢)未早希組(サンリツ)が初優勝した。しかし、連覇を目指して臨んだ今年は初戦敗退に終わった。シングルスも含めると波乱続きの今大会。女子ダブルスを制したのはスーパーシードにも入っていない平田&永尾ペアだった。

 

 平田&永尾のペアは結成1年足らず。ノーマークの中で勝ち上がってきた準決勝は若宮三紗子&森さくら組(日本生命)と戦った。若宮は藤井との女子ダブルス、松平賢二(協和発酵キリン)と組んだ混合ダブルスで優勝している経験ある選手。森も3年前にシングルスで準優勝し、世界選手権に出場した。実績では格上のペアにも臆さず挑み、3-1でファイナルへ進んだ。

 

 決勝は𡈽田と宋が組む中国電力のペアだ。第1ゲームは相手の強打に押され、6-11で落とした。平田は「(パートナーの)永尾はダイナミックなプレーをするので、いつも信頼している。私はミスしないことを意識した」と語れば、永尾は「パートナーを信頼して自分のプレーを最後まで貫いた」と応える。2人の呼吸が合い始めると、徐々にペースを掴んでいく。

 

(写真:優勝が決まり、揃ってガッツポーズをつくる永尾と平田)

(写真:優勝が決まり、揃ってガッツポーズをつくる永尾<左>と平田)

 永尾の強烈なフォア、平田の安定したバックレシーブで相手を圧倒。第2ゲームは11-7で取ると、第3ゲームは11-9で競り勝つ。2ゲーム連取の勢いそのままに第4ゲームも11-7で頂点へ上り詰めた。「パートナーに感謝です」と、平田は涙を流して喜んだ。一方の永尾は「2人で獲った優勝」と胸を張った。

 

 伏兵が掴んだ初タイトル。日本一のタイトルを手にしたからには、これからはマークも厳しくなるだろう。「互いのプレーを大事にしつつ、安定して勝っていけるペアになっていけたらいい」と平田。2人は口を揃えて、日本リーグでの活躍を誓った。

 

(文・写真/杉浦泰介)