2017年のJリーグの日程が発表されました。J1は2月25日に開幕を迎えます。今季からJ1は3年ぶりに1シーズン制に戻ります。Jリーグは英動画配信大手パフォームグループと10年2100億円の放映権料契約を結びました。J1を制すると均等配分金、強化配分金、優勝賞金合わせて21億円超の巨額資金が手に入ります。その効果もあり、今までにないほどJリーグの移籍市場が活発です。優勝するか、しないかで得られる軍資金は雲泥の差となります。そのため、各チームは補強に余念がありません。

 

 今季からJ1は均等配分金3億5000万円、優勝すると優勝賞金3億円、強化配分金は15億円とのことです。連覇をしたクラブは雪だるま式に資金が増えていきます。そうすれば、それを元手に補強や育成を充実させることができ、クラブのレベルが上がる。こうなるとJリーグで二極化が進むでしょう。今後、J1で生き残っていくためにはフロントがプロフェッショナルかどうかがカギを握ります。選手が戦って稼いだ資金をどう使うのか。フロントの腕の見せ所ですね。

 

 今オフは主力選手の国内移籍が目立ちます。賞金を勝ち取るために各クラブが先行投資に必死です。すごく良い傾向だと思います。移籍市場が活発になり、選手が自分のことを必要としているクラブに移籍できる。選手にとって選択肢が増えたという意味でも良いことです。プロの世界は試合に出場して評価されてナンボ。ベンチを温める日々が続くのであれば出場機会を求めて移籍する。それはごく自然なことです。

 

磐田、俊輔獲得で古豪復活なるか

 

 中でも僕はジュビロ磐田に注目しています。“何とかクラブを再建させたい”という思いが伝わってくる補強です。磐田は過去に鹿島アントラーズと熾烈な戦いを繰り広げていた名門。補強の目玉はやはり中村俊輔でしょう。攻撃で起点になれる選手ですし、なんといってもセットプレーで彼の左足は大きな武器になります。中村のキックの精度は日本一。他の選手は中村としっかりとセットプレー時の打ち合わせをすべきです。あとはそこに飛び込めば高精度のボールが来るわけですから(笑)。試合終盤、“ここぞ”の場面で磐田のセットプレーは脅威になりそうです。

 

 名波浩監督と中村が同じクラブに属するのも面白い。名波監督も現役時代は中盤を支配するタイプのMFでした。名波監督と中村はお互いの意図を感じ取れると思います。名波監督はピッチ外から全体をコーディネートする。中村はピッチ内で自身の経験をもとに攻撃を司る。2人の相乗効果で古豪復活となるか、非常に楽しみです。

 

 あとは川崎フロンターレからライバルチームのFC東京に移籍した大久保嘉人が注目を集めていますね。3年連続得点王を獲得し、去年も日本人最多タイの15得点を決めました。とはいえ、さすがに各クラブの大久保対策も進んでいるはず。環境も変わり、大久保にとっては難しいシーズンになるかもしれません。能力が高いことは実証済みなので、この環境下でどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。

 

 巨額資金がきっかけで激しい競争が生まれそうなJリーグ。天国を味わうか地獄を味わうか……競争の原理として弱い者は廃れていきます。各クラブの生き残りをかけた戦いが間もなく始まりますね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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