年明けから愛媛FCの人事は、実に慌ただしかった。

 2016年の年末、昨シーズンまでブラウブリッツ秋田(J3)を率いていた間瀬秀一さんが、新監督に就任。また、1月に行われた臨時取締役会にて村上忠さんが愛媛FCの社長を務めることが決まり、現場・フロントの首脳も一新した。既に新入団選手も合流し、新シーズン(2017シーズン)を始動させた愛媛FCだが、新たなファミリーが加わり、今季は「大きな変革の年」となる。

 

 2017年の初練習から、間瀬監督はファンサービスにも気さくに対応している。接してみて温かく誠実そうな印象を受けた。全体練習の際には、大きく声を発し、ハッキリと独自のビジョンを選手個々に伝えていた。「言葉」を大切にしているのか、長話しになることも多い。トレーニング開始前には会議室で長い時間、入念なミーティングを行う。見学者は無人のグラウンドで待たされることが多くなるのは、ご愛敬。

 

 間瀬監督が提供する練習メニューは多彩で、ユニークなものも多い。室内でのモニターを使った「速読」の練習や5色のビブスを5名で着用するパス練習は極めて面白い。階段や砂浜を使ったハードなフィジカルトレーニングも行い、練習は長時間に及ぶ。

 

 選手に聞くと、「毎日毎日、かなり追い込んだ厳しい練習をしているので疲れますが、シーズン開幕に向けて自信にも繋がっています」と手応えを口にする。トレーニングで培ったことが、実際の試合でどのような効果を発揮するのか楽しみである。

 間瀬監督は現役時代、大学を卒業後にアメリカ、メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、クロアチアの海外5カ国でのプレー経験がある。引退後は、元日本代表監督のイビチャ・オシムの通訳を務めるなど、グローバルな人生を送っていた。厳しく困難なシーズンになると予想されるが、その経験値とグローバルな視点から、愛媛FCが進むべき道を指し示してもらいたい。

 

 1月22日(日)には、愛媛県武道館(大会議室)で日本サッカー協会と愛媛県サッカー協会主催の「JFAサッカーファミリー・タウンミーティング」が開催された。ミーティングのテーマは「日本サッカーのより一層の発展に向けて」。会場にはサッカー協会の会員や競技の指導者、選手たち、愛媛FCのサポーターやスタッフら約80名が集った。日本サッカー協会の田嶋幸三会長の講演を中心に、参加者が自由に意見を述べ合うイベントとなった。

 

 田嶋会長の講演では、日本サッカー界が歩んできた道のり、そして現在の日本サッカーと世界のトップレベルのサッカーの差、障がい者サッカーの取り組み等が、映像と共に語られていた。

 

 中でも「障がい者サッカーの取り組み」に関しては、知らないことも多く、勉強になる内容だった。一括りになりがちな「障がい者サッカー」だが、実際には競技種目の数が多彩であることを初めて理解できた。

 

 これまで「ブラインドサッカー」の選手とお会いする機会があり、その競技レベルの高さには驚かされた。「ブラインドサッカー」はアイマスクを着用した選手たちが、鈴の入った音の出るボールを追いかけ、ガイドのサポートにより自分の位置を確認しながらプレーをする。観戦した際に、選手たちのプレーが素晴らしすぎて、まるで超能力を見ているかのような衝撃を受けたことを思い出す。

 

 その「ブラインドサッカー」以外にも、「アンプティサッカー」「ソーシャルフットボール」「知的障がいサッカー」「電動車椅子サッカー」「脳性麻痺7人制サッカー」「ろう者サッカー」など、色々な立場の方が参加・活動できる競技がある。それを支えているボランティアの方々も大勢いることを改めて知り、サッカー界の懐の深さを感じ取ることができた。

 

「JFA2005年宣言」において2030年までに世界ベスト4になることを目標に掲げている日本サッカー協会。それを実現するためには、トップ選手や育成年代の選手たちの競技レベルの向上と共に、サッカーの競技や文化の裾野を、各地域へ満遍に広げていくことも重要なことかもしれない。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja

Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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