(写真:これまでヤンキース首脳陣は田中将大<右>を慎重に起用してきたが、メジャー4年目の今季は200イニング以上は必須だ Photo By Gemini Keez)

(写真:これまでヤンキース首脳陣は田中将大<右>を慎重に起用してきたが、メジャー4年目の今季は200イニング以上は必須だ Photo By Gemini Keez)

 MLBの各チームが続々とキャンプ地に集まり、アメリカ国内でもメジャーリーグの話題が盛んになり始めている。ニューヨーク・ヤンキースのメンバーもフロリダ州タンパに集結。過去4年間で3度もプレーオフを逃した“元王者”は、復活を期してまた新たなスタートを切る。

 

 昨季84勝78敗でアメリカンリーグ東地区の4位に終わったヤンキースが、今年は優勝争いに参戦できるのか。それとも大方の予想通り、再建途上のシーズンとなるか。今回は2017年の4つの注目ポイントをピックアップし、今後の行方を占っていきたい。

 

 ゲイリー・サンチェスは本物?

 

 昨季は53試合で20本塁打、42打点を挙げたゲイリー・サンチェス捕手は地元のセンセーションとなった。この成績を162試合に換算すると、60本塁打、128打点という凄まじい数字。また、盗塁阻止率41%と守備でもポテンシャルを誇示し、今後しばらくヤンキースの正捕手を務めそうな予感を感じさせてくれた。

 

(写真:ニューヨークの新たな人気者となったサンチェス<左>だが、高打率維持には懐疑的な見方もある)

(写真:ニューヨークの新たな人気者となったサンチェス<左>だが、高打率維持には懐疑的な見方もある)

 しかし、打撃に関しては同様のペースを期待すべきではない。昨季メジャーでは10.1打数ごとに1本塁打を打ったが、マイナー通算では24.7打数で1本塁打の割合だった。メジャーでも徐々に落ち着くと見るべきで、「FanGraphs(米データサイト)」が予想する27本塁打くらいが今季は妥当だろう。

 

 ポイントとなるのは本塁打数以外の部分だ。相手チームの研究が進む中で、引き続き確実性をアピールできるか。盗塁を食い止めるだけでなく、昨季は甘さが見えたリード、捕球といった面でも進歩できるか。ヤンキースにとって待望の生え抜きスター候補だけに、その動向は余計に気になるところだ。

 

 田中以外の先発投手陣は安定できるか

 

(写真:36歳になったサバシアが先発2、3番手というのは台所事情が苦しい何よりの証拠だ Photo By Gemini Keez)

(写真:36歳になったサバシアが先発2、3番手というのは台所事情が苦しい何よりの証拠だ Photo By Gemini Keez)

 肝心要の先発投手陣では、田中将大、マイケル・ピネダ、CC・サバシアの3本柱がローテーションに入ることは確実と見られている。残りの2席は春季キャンプで複数の投手によって争われることになりそうだ。ルイス・セベリーノ、ルイス・セサ、ブライアン・ミッチェル、チャド・グリーン、アダム・ウォーレンといった候補たちが、開幕ローテーション入りを狙っている。

 

 正直、エースとしての地位を確立した田中以外は厳しいメンバーで、先発陣は強力と言うにはほど遠い。いかに近年のメジャーがブルペン重視とはいえ、ピネダ(昨季6勝12敗、防御率4.82)、サバシア(同9勝12敗、3.91)が2、3番手を務めるようでは心もとない。今季のヤンキースの前評判が低い最大の理由は先発ローテーションの迫力の無さだろう。

 

 そんな中で、期待は22歳のセベリーノの台頭だ。一昨年には印象的なデビューを飾った本格派右腕は、昨季は防御率5.83と停滞。特に11度の先発機会では0勝8敗、防御率8.50と散々で、チーム関係者も首をひねるしかなかった。ただ、ブルペンでの好投を見る限り、潜在能力の高さを感じさせる。このセベリーノが例えば田中と先発2枚看板を形成するくらいにまで急成長してくれれば、ヤンキースの視界は一気に開けてくるはずだ。

 

 若手の台頭はあるのか

 

(写真:一級品の潜在能力を持つセベリーノ<右>だが、ムラっ気が難点)

(写真:一級品の潜在能力を持つセベリーノ<右>だが、ムラっ気が難点)

 すぐに優勝候補に推せる陣容ではなくとも、現在のヤンキースは将来が楽しみな若手有望株を数多く抱えている。

 

 すでにメジャーデビューを飾った若手の中では、肩のケガで昨季を棒に振ったグレッグ・バード一塁手と昨季は三振ばかりが目立ったアーロン・ジャッジ外野手の活躍に注目が集まる。バードは一昨年に11本塁打、OPS.871をマークした長打力が戻れば、サンチェスと左右の大砲デュオを形成できるかもしれない。一方、パワーではバードをも上回るジャッジは、まずはメジャーの変化球に慣れることが課題になる。

 

 また、昨季途中にチーム史上に残るファイヤーセール(=再建政策)を敢行したこともあって、マイナーに多くのプロスペクト(有望株)を擁するに至った。グレイバー・トーレス内野手、クリント・フレージャー外野手、ジュスタス・シェフィールド投手、ジェームス・カプリーリアン投手、ホルヘ・マテオ内野手……。彼らが開幕メジャー入りすることはないにせよ、その成長度からは目が離せない。

 

 近未来に再び真剣に優勝を狙うために、これらの若手の中から使える選手の選別を進めるのも課題の1つだ。ブライス・ハーパー(ワシントン・ナショナルズ)、マニー・マチャド(ボルチモア・オリオールズ)、マット・ハービー(ニューヨーク・メッツ)といった多くの大物がFAマーケットに出る2018年オフまでに、自前で賄えるポジションと、補強が必要な箇所を見極めていくべき。今季はもちろん当面の勝利を狙いつつ、複数の若手を試していくシーズンになるはずだ。

 

 ジラルディ監督の去就は?

 

(写真:契約最終年のジラルディ監督(左/右はOBのドワイト・グッデン)は、目先の勝利を目指しながら、若手を育てるという難しい仕事に取り組む Photo By Gemini Keez)

(写真:契約最終年のジラルディ監督(左/右はOBのドワイト・グッデン)は、目先の勝利を目指しながら、若手を育てるという難しい仕事に取り組む Photo By Gemini Keez)

 早いもので、ジョー・ジラルディにとって今季が監督として10年目のシーズンになる。毎年のようにペイロール(人件費)に2億ドル以上をつぎ込みながら、優勝は2009年の1度だけ。それでもチーム内でのジラルディの評判は決して悪くなく、意外なことに、いつしか前任のジョー・トーリ以上の“長寿監督”になった。

 

 ただ、4年1600万ドル契約の最終年となる今季がジラルディにとってヤンキースでの最後のシーズンになる可能性はもちろん否定できない。過渡期にいるチームの指揮を執ることは簡単ではないが、少なくとも優勝争いをすることは必須。序盤から大きく出遅れた場合、早々と去就問題が話題になっても驚くべきではない。

 

 鍵はアロルディス・チャップマン、デリン・ベタンセス、タイラー・クリッパードと実績ある投手が揃ったブルペンをどう使いこなし、勝利の術を見つけていくか。そして衰えの見えるジャコビー・エルスベリー、ブレッド・ガードナーといったベテラン外野手たちをどんな風に起用していくか。さらなる長期政権を目指す上で、今季はジラルディにとって正念場の1年であることは間違いない。

 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。

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