2月9日から春季キャンプの取材に行ってきました。いろいろな球団を取材した中で阪神は昨年に引き続いてどのポジションもレギュラー争いが激しいですね。その中で正捕手、そしてショートが一番の焦点です。

 

 ショートは北條史也が目を引きました。去年と比べると自信を持って練習に臨んでいますね。去年も一生懸命、がむしゃらに練習していましたが、今年の北條には余裕があります。昨季、1軍で122試合出場したことが自信になっているのでしょうし、だからといって慢心している部分もない。「もっとうまくなってやろう」「さらにレベルアップしてやろう」という気持ちが見ているこちらにも伝わってきます。

 金本知憲監督は開幕まで北條と鳥谷敬を競争させる方針です。どちらが開幕戦でショートを守っているのか、非常に楽しみです。

 

 正捕手争いは原口文仁、岡崎太一、梅野隆太郎、坂本誠志郎と名前はズラッとあげられるのですが、「こいつだ!」という抜けた存在はまだいません。
 バッティングはやはり原口が抜けていますが、守備を考えると13年目のベテラン、岡崎がいいんです。岡崎はマスクを被った紅白戦で、グラウンド内をきちんとコントロールしている感じでしたね。岡崎がリーダーシップをとれるようになったのは大きな成長だと思います。

 

球児に見えた復活の兆し

 梅野は体が去年に比べて逞しくなっていました。ただ彼は守備やリードよりもバッティングが大好きなんですね。もう少しリード、インサイドワークにも積極的な姿勢を見せてくれるといいんですが……。あと梅野はブルペンで受けているときに声が少ないのが気になります。原口、岡崎は大きな声が出てました。

 

 僕はピッチャー出身なのでよく分かりますが、ピッチャーを乗せるのがうまいのはいいキャッチャーの条件のひとつです。「ナイスピー」「いいよ!」「さ、もういっちょ」などの声があると、気持ちよく投げられる。技術の差はそんなにない中でピッチャーと信頼関係を築いていくには、そういう部分も大切になってきますね。

 

 投手陣は中堅どころの成長、レベルアップが必要です。8年目の秋山拓巳など今季こそ発奮して1軍で活躍してほしいですね。昨シーズンは中継ぎ、抑えに苦しんだ印象ですが、今年はマルコス・マテオ、ロマン・メンデス、岩崎優らとブルペンに駒が揃っています。あと、藤川球児がキャンプで目を引きました。昨年までよりも強い球がきていたので、今季は彼の復活も期待できそうです。

 

 WBCの代表に選ばれている藤浪晋太郎は、非常に早いペースで仕上げているのが分かりました。ひとつ気になったのがボールが高めに行っていたことです。スピード、勢いはあるけどコースが高い……。海外の一線級打者を相手にするには気になるところですね。

 

 あと阪神はドラフト1位の大山悠輔も連日、注目を浴びていました。守備は及第点で、バッティングに関してはまだ試行錯誤の段階なのでしょう。1本ヒットが出ればそこから連鎖していくこともあるし、1年目の紅白戦だから先輩相手に遠慮や萎縮があるのかもしれない。オープン戦で他球団とやるようになるとがらりと変わる可能性もあるので、そこでどういう結果を出すのかが楽しみです。

 

 キャンプ、オープン戦は2月末からまた現地取材に行ってきます。今回、話せなかった話や新たな話題は次回をお楽しみに。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商、近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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