第4回WBCで2大会ぶり3度目の優勝を狙う侍ジャパンの投手は総勢13名。最も身長が高いのは藤浪晋太郎(阪神)の197センチ。低いのは松井裕樹(東北楽天)の174センチ。13人の平均は182.9センチだ。

 

 過去、NPBでは金田正一(400勝)、米田哲也(350勝)、小山正明(320勝)、鈴木啓示(317勝)、別所毅彦(310勝)、ビクトル・スタルヒン(303勝)と300勝以上をあげた投手が6人いる。身長は金田184センチ、米田180センチ、小山183センチ、鈴木181センチ、別所181センチ、スタルヒン191センチ。当時としては、皆大男である。

 

 近年、低い身長で成功した投手といえばまっ先に浮かぶのが東京ヤクルトの石川雅規だ。かつては「169センチ」と称していたが、実際は167センチ。12球団のローテーション投手の中では最も低い。

 

 子供の頃から小さかった。整列すると先生の前が指定席。「前へならえ!」の号令がかかると決まって腰に手を当てた。高校入学時点でも160センチしかなかった。マウンドに立つと「なんだ、あのチビ!」とヤジられた。それがプロで152もの白星を積み重ねたのだから大したものだ。

 

 リリーバーに目を移すと北海道日本ハムの谷元圭介の健闘が光る。昨季の成績は58試合に登板して3勝2敗3セーブ28ホールド、防御率2・32。リーグ優勝、日本一を文字どおり縁の下から支えた。

 

 登板数は3年連続で50試合を越えた。身長167センチながら、スタミナは無尽蔵だ。しかも投げっぷりがよく、バッターに的をしぼらせない。

 

 170センチに充たない2人に共通するのはフォーム上の特性である。石川はサウスポーのスリークォーター、谷元はスリークォーターとサイドスローの中間だ。生き残るために技巧に磨きをかけてきた。

 

 最後に紹介するオリックスのドラ1ルーキー山岡泰輔には“小さな大投手”の期待がかかる。172センチながら本格派なのだ。右の先発といえば180センチ台が当たり前の昨今、このサイズで成功した投手の名前が思い浮かばない。上背が足りないと言われた桑田真澄でも174センチあった。山岡の場合、ドラフト前には、何人かのスカウトから「あと(身長が)5センチ、いや3センチあれば…」という話を聞いた。プロの“常識”を崩せるか…。

 

<この原稿は17年3月22日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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