「復帰の舞台は自分で用意しよう」

 このようにいきがってはみたものの、一人の力などたかがしれている。

 

 やはり組織を作らなくては実現など不可能なのだ。僕は『カッキー応援隊』をはじめ信頼できる人間とチームを組み、ひとつひとつ前に進めることにした。

 

 まずは、リングの手配から動いたのだが、コストを抑えなければならないこともあり、かなり難航した。リングを設営するには、多くの人手もいる。こちらは、フェイスブックでボランティアスタッフを募ったのだが、予想以上にたくさんの人から参加表明をいただけて解決した。本当に感謝である。

 

 次にイベント進行の監督ならびに音響スタッフ、リングアナやレフェリーを探さなくてはならなかったのだが、こちらは思いのほかスムーズに決まっていった。かなり有能な方が2名も付いてくれることになったのはラッキーだったと思う。

 

 肝心の対戦相手だが、すぐに思い浮かんだのは桜庭和志選手だ。闘病中に彼から贈ってもらったトレーニングウェアであるラッシュガードが大きな励みとなったからである。

「これを着て、いつの日か桜庭選手と対戦したい」と、それこそ夢のようなことを思い描きながら、つらい抗がん剤治療を耐え抜いたことを思い出す。

 

 今回快く対戦を引き受けてくれた桜庭選手へは心から敬意を表したい。がんを患った先輩とやるなんて、かなり神経を使い面倒くさいはずだ。反対の立場なら、ちょっと考えてしまう。本当に桜庭選手には感謝である。今回のルールは、道場のスパーリングを意識した『UWFキャッチルール』を採用する予定だ。打撃技を省いたタックルなどの立ち技から関節技を競うスタイル。当然ながら病み上がりの僕が、グレイシーハンターと呼ばれた桜庭選手の一級品のサブミッションには逆立ちしても歯が立たないのは明白だが、不屈の闘志だけは伝えていきたいと思う。

 

「病には絶対に負けない」

「ここから上を目指し、まだまだ熱く生きる」

「挑戦する姿勢を絶やさない」

 

 僕はこんな思いを胸にリングに上がり、同じ病で苦しんでいる人たちに希望の光を届けたい。これこそが僕の使命だと強く思っている。とは言うものの、現状は屈強な肉体にはほど遠い。おじいちゃんのような肉体からは脱却したが、人前で見せられるレベルには到達してはいない。常に免疫力が下がらないように気をつけ、セーブしながら練習を行なっているため仕方がない部分もあるものの、歯がゆい。

 

 バーベルを使った筋トレは週に2回、スパーリングなどの実戦練習にいたっては週に1度程度、それも小1時間と習い事以下なのだ。

「こんな練習で強くなれるのか?」。自問自答の日々でもある。ただ、“上を見てもきりがない”と自分に言い聞かせ、現状に喜びを見出すようにしている。これからも不安な気持ちを排除し、目の前のことを楽しむように心がけたい。

 

 さて、メインを任せたのは、現在パンクラスのチャンピオンであるロッキー川村選手だ。UWFの流れを汲む現存する団体は、パンクラスだけ。そこのチャンピオンが上がってくれることは大きな意味がある。新生UWFでデビューした僕がオープニングマッチに出場し、そのバトンを受けてUの遺伝子を受け継ぐ者が大会を締めてくれることは無上の喜びだ。ちなみに川村選手の対戦相手は僕の希望が叶い中井光義選手となった。

 

 彼は、なんと『キン肉マン』の作者である中井義則先生のご子息なのだ。僕は小学校の頃からキン肉マンが大好きで、レスラーになったのもその影響が大きい。キン肉マンから友情の素晴らしさを学ぶなど、まさに人生の教科書といっても過言ではない作品だ。漫画だけでなく、大ヒットしたキン消しにハマったのもなつかしい思い出だ! 僕は今でもキン肉マンフリークなのである。

 

 そんな僕に闘病中、原作者のゆでたまご先生から「火事場のクソ力で頑張れ!」と大好きな超人のイラストが入った色紙が届いた。これには本当に驚き、感謝感激した。今も寝室のベッドの上に飾り、つらいときには心の励みにしている。

 

 試合当日は、キン肉マンのリアル息子である中井選手の熱い友情パワーに期待したい。

 

 さて、『森のプロレス』には、他のプロレス団体と一目で違うキャッチーなものが必要と感じ、それを探しに先日、伊勢志摩までキャンピングカーを走らせた。

 

 この場所に来たのは、「これぞ森のプロレスの象徴」と思えるオブジェがあるからだ。

 所有者は、昆虫に造詣が深く、自然愛も強い尊敬する方なのだ。

 

 その作品と対面した僕は、思わず声を出した。

「これこそが僕が求めているものだ」

 

 僕は、童心に戻ったようなリアクションを見せた。

 ただ、これを引き立たせるためには、少し手を加えるべきだと思った。

 

「そうだ! 大道具さんに相談しよう」

 僕はすぐさま伊勢志摩から都内にある知人の工房へと移動し、職人さんたちにそのお願いをした。往復約1200km以上にも及ぶ道程ではあったが、夢が詰まっているだけに苦にならない。

 

 試合当日は、『森のプロレス』のシンボルとなる、このオブジェにも期待してもらいたい。

 僕は、ファイターとしてだけでなく、『森のプロレス』の実行委員長として、これまで応援してくださった皆さまに、心のこもったイベントを届け、全身全霊で感謝の気持ちを表すつもりだ。

 

 3月26日、新宿中央公園の特設リングで13時ゴング!

 

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(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)


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