日本時間1日、世界フィギュアスケート選手権の男子シングルフリースケーティング(FS)がフィンランド・ヘルシンキで行われ、羽生結弦(ANA)が223.20点を叩き出した。合計321.59点でショートプログラム(SP)5位からの逆転優勝。3年ぶりに王座を奪還した。SP2位の宇野昌磨(中京大)は319.31点で銀メダルを獲得。3位にはSP4位の金博洋(中国)が303.58点で銅メダルを手にした。SP1位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)は4位で、世界選手権3連覇はならなかった。この結果、上位2人の合計順位により与えられる平昌五輪の出場権は、日本とアメリカの2カ国が3枠を獲得した。

 

 表彰台の頂点へ、再び羽生が帰ってきた。FSでの圧倒的なパフォーマンス。会場全体を虜にした。

 

 前日に行われたSPでは開始の遅れで減点されるなど、ジャンプの着地ミスもあり、5位スタートだった。トップのフェルナンデスには10.66点差、2位の宇野にも6.47点差をつけられた。

 

 FSは最終グループのトップバッターでリンクに上がった。久石譲作曲の『Hope&Legacy』に乗って舞う。氷上は羽生のオンステージだ。冒頭の4回転ループ、4回転サルコーを決めると、羽生と会場のボルテージはヒートアップした。

 

 今シーズンは4回転ジャンプを3種類4本組み込んだ高難度のプログラムに挑んでいた。4回転が当たり前になりつつある時代で、羽生が突き抜けた存在であり続けるための手段だ。中盤の4回転サルコーから3回転トーループのコンビネーション、終盤の体力が落ちてきた頃に跳ぶ4回転トーループも着氷した。

 

 ジャンプが決まるたび、ステップを刻むたびに得点が加算されていく。4本の4回転ジャンプに対するGOE(出来栄え点)はいずれも3点満点で2点以上がついた。最後のスピンをまとめると、観客は大歓声で羽生を迎えた。技術点の合計は126.12点というハイスコアだった。

 

 その圧巻のパフォーマンス。演技構成点内のパフォーマンス項目はジャッジ9人中5人が10点満点を提示した。高難度のプログラムを高精度で演じてみせた。叩き出した223.20点というFSのスコアは、自らが持つ歴代最高点を更新した。トータルスコアは321.59点で、暫定トップに躍り出て残り5人の演技を待つ。

 

 続くネイサン・チェン(アメリカ)は攻めの演技で4回転6本に挑んだが、失敗もあって得点は伸びなかった。金は204.94点で自身初の300点超えを達成。それでも303.58点で羽生には届かない。

 

 SP上位3人は、3位のパトリック・チャン(カナダ)は華麗なスケーティングを見せたものの、ジャンプで手をつき、バランスを崩した。2位の宇野は自己ベストを更新する319.31点を積み上げたが、羽生が2.28点上回り、トップをキープした。

 

 最終滑走はSP1位のフェルナンデス。世界選手権連覇中の王者で、羽生の最大のライバルだ。SPは109.05点のハイスコア。FSで212.54点以上を乗せれば、チャン以来の3連覇を達成できる。しかし、その重圧がのしかかったのか、ジャンプに精彩を欠いた。192.91点でトータル301.19点。表彰台にも上がれなかった。

 

 羽生は3年ぶり2度目の優勝。演技後の表情や、採点が発表された後の涙を目に浮かべたことからもFSは会心のものだったはずだ。グランプリファイナルは4連覇中。ソチ五輪金メダリストが3冠を達成した2013-14シーズン以来の世界選手権優勝である。来年の平昌五輪に向け、“定位置”に返り咲いた。

 

◇男子シングル

1位 羽生結弦(ANA)      321.59点

2位 宇野昌磨(中京大)     319.31点

3位 金博洋(中国)       303.58点

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19位 田中刑事(倉敷芸術科学大) 222.34点

 

(文/杉浦泰介)