5日、バドミントンの全日本総合選手権大会が開幕する。前回ベスト8の選手をはじめ、今季の全日本社会人選手権、全日本学生選手権(インカレ)、全国高等学校選手権(インターハイ)など、各カテゴリーにおける上位選手に加え、4日に行われた予選を勝ち上がってきた選手たちが出場。東京・代々木第二体育館を舞台に、バドミントンの日本一を決める戦いがいよいよスタートする。
 待望のニューヒロイン誕生

 一世を風靡した“オグシオ”も2010年に現役を退いた小椋久美子に続いて、潮田玲子が今年9月に引退した。さらに、ロンドン五輪銀メダルペアの“フジカキ”こと藤井瑞希、垣岩令佳組(ルネサス)が今季限りの国際大会でのペア解消など、日本女子バドミントン界は転換期を迎えている。また、強豪パナソニックが今季限りの休部を決めるなど、暗いニュースも立ち込める中、ニューヒロインの誕生が待たれる日本バドミントン界。その筆頭候補がシングルスに存在する。大宮東高校3年の奥原希望だ。

 奥原は前回、最年少の16歳8カ月で日本一に輝いた。今季はインターハイを連覇し、さらには11月に行なわれた世界ジュニア選手権で日本女子初の優勝を果たした。ジュニアの世界ランキングでは頂点に立っている。日本代表としても海外遠征を経験し、1打1本に対する集中力は増した。素早いフットワークを生かした粘り強いプレーを武器に、V2を達成したい。日本バドミントン界の“希望”が“真の女王”となるか。今後の日本を背負って立つであろうエース候補の真価が問われる。

 その奥原に対抗するのは、前回決勝を急性胃腸炎で棄権し、4年連続6度目の優勝を逃した廣瀬栄理子(パナソニック)だ。北京五輪ベスト16の元日本女王は、ロンドン五輪出場を逃したものの、11年の全英オープン、今季のヨネックスオープンで準優勝を収めるなど、実績は抜きんでている。休部の決まった所属チームのユニホームを着る最後の大会で、女王への返り咲きを狙う。

 そして現在、新旧女王のふたりに割って入る勢いを見せているのが、三谷美菜津(NTT東日本)だ。10月のフランスオープン決勝で、ロンドン五輪銅メダリストのサイナ・ワネール(インド)をストレートで破り、初優勝を達成した。日本人女子のシングルスで五輪、世界選手権に次ぐスーパーシリーズの大会を制したのは初の快挙である。前回の全日本総合では準決勝で敗れた奥原にも、今季の日本リーグでストレート勝ちを収めている。初の全日本総合のタイトルを目指し、好調の21歳が新たな風を吹き込むことができるか。

 雪辱の頂上決戦

 一方、男子シングルスは、田児賢一(NTT東日本)が史上3人目の5連覇に挑む。今季はマレーシアオープンで準優勝、全英オープンでベスト4入りするなど、メダル獲得も期待された日本のエースは、ロンドン五輪で予選リーグ敗退。さらに9月のヨネックスオープンでは初戦で敗れるなど低迷が続いていた。ただ、ここにきて10月のフランスオープン、11月の香港オープンで4強に入り、復調の兆しを見せている。BWF(国際バドミントン連盟)世界ランキングも日本人最上位の5位。世界トップを狙う田児にとって、日本のエースの座を譲るわけにはいかない。

“ストップ・ザ・田児”の一番手は、5年前の王者・佐々木翔(トナミ運輸)だろう。30歳のレフティーは、ロンドン五輪では男子シングルス日本人初となるベスト8入りを果たす活躍を見せた。準々決勝では、北京、ロンドンの金メダリスト・林丹(中国)に敗れたものの、フルセットまで持ち込む大接戦を演じた。世界王者を苦しめたパワフルなショットで現日本チャンプを打ち崩したい。ここまで3年連続決勝で田児には苦杯をなめさせられている。リベンジの機会を虎視眈々と狙っているはずだ。

 そして、ジュニアからは、今季、インターハイと世界ジュニアを制した18歳・桃田賢斗(富岡高校)の活躍が期待される。桃田は前回の全日本総合では準々決勝で敗退。その対戦相手が田児だった。世界ランクでは84位と遠く及ばない格上相手に、成長した姿を見せつけたいところ。世界ジュニアでは田児の成績(準優勝)を上回った桃田。「近い将来の目標」と語る “田児超え”は、コート上で証明する。

 女子ダブルス、新時代の到来か!?

 女子ダブルスは、北京五輪4位の末綱聡子、前田美順組とロンドン五輪銀メダルの藤井瑞希、垣岩令佳組のルネサスが誇る2チームに加え、前回の覇者・高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)、同準優勝の松尾静香、内藤真実組(パナソニック)の4強が凌ぎをけずる。

 BWF世界ランキングでは、松尾、内藤組が5位、末綱、前田組が6位と上位だが、現在最も勢いに乗っているのは、連覇のかかる高橋、松友組だ。7月のUSオープン、カナダオープンで連続優勝すると、10月には、デンマークオープン準決勝では、ロンドン五輪金メダルの中国ペアを破る大金星を挙げ、準優勝を果たしている。世界ランクもこの半年で21位から、7位まで上昇。“オグシオ”“スエマエ”“フジカキ”ペアに続いて、“タカマツ”ペアで女子ダブルスの新時代を築きたい。

 また田中志穂、市丸美里(法政大学)は、学生日本一の余勢を駆って、世界学生選手権をオールストレート勝ちで制している。学生世界No.1ペアが、4強の一角に食い込めるかにも注目が集まる。

 そのほか、男子ダブルスは平田典靖、橋本博且組(トナミ運輸)が4連覇を目指す。混合ダブルスは、前回の覇者“イケシオ”こと池田信太郎、潮田組(日本ユニシス)に続く新たなペアが現われるのか。

 王者が挑戦者をはね退けるのか、それとも新風が吹き荒れるのか、今後の日本バドミントン界を占う舞台の幕が上がる。今大会の成績は、来年の日本代表選考の基準となる。つまり、得られるのは日本一の称号だけでなく、日の丸を背負う資格。リオデジャネイロへ向けて、戦いのゴングはもう打ち鳴らされている。

【全日本総合選手権大会】

・5日(水) 10時〜 1回戦
・6日(木) 10時〜 2回戦
・7日(金) 12時〜 3回戦
・8日(土) 12時〜 準決勝
・9日(日) 12時〜 決勝

※会場はすべて代々木第二体育館