13日、世界水泳選手権(7月、ハンガリー・ブタペスト)の日本代表選考会を兼ねた「第93回日本選手権水泳競技大会」初日が愛知・日本ガイシアリーナで行われた。男子400m個人メドレーは世界選手権連覇中の瀬戸大也(ANA)が4分10秒44で同種目での初優勝。2位にはリオデジャネイロ五輪金メダリストの萩野公介(ブリヂストン)が0秒01差で入った。瀬戸と萩野は同種目での世界選手権代表に内定した。女子50mバタフライ決勝はリオ五輪代表の池江璃花子(ルネサンス亀戸)が25秒51の世界ジュニア新記録で優勝。そのほか男子100m自由形は中村克(イトマン東進)が3連覇、男子100m平泳ぎは小関也朱篤(ミキハウス)が4連覇を達成した。池江、中村、小関は世界選手権への切符を手にした。女子100m平泳ぎは青木玲緒樹(ミキハウス)が初優勝。2位の鈴木聡美(ミキハウス)と共に世界選手権代表に内定した。

 

 瀬戸vs.萩野――。同学年のライバル対決は、昨年のリオ五輪を経て世界王者同士の対決となった。瀬戸は世界選手権を14年から連覇中。リオ五輪金メダリストの萩野は日本選手権5連覇中だ。日本一の争いは、世界一の道へ通ずる。

 

 予選1位は瀬戸だ。決勝での第4レーンを確保し、両端に萩野と藤森丈晴(ミキハウス)が並んだ。号砲が鳴り、先行したのは瀬戸だった。得意のバタフライでリードを奪う。それを萩野と藤森が追う展開となった。100mのターンでは萩野の持つ日本記録を0秒19上回るペースだ。

 

 第2泳法は背泳ぎ。ここは萩野にアドバンテージがある。150mのターンを前に萩野が先頭に立つ。萩野と瀬戸のマッチレースの様相を呈した。萩野はさらに瀬戸を突き放しにかかり、平泳ぎに移行するまで身体ひとつ分の差をつけた。

 

 平泳ぎでは瀬戸が差をつめる。250mのターンで2人はほぼ並んだ。そして瀬戸がやや抜け出すと、リードを保って自由形ラスト100mの勝負となった。2人の差はわずか0秒13。残り50mで萩野は逆転し、0秒04とわずかにリードする。

 

 最後の直線勝負は余力を振り絞っての叩き合いだ。ゴールを前にして瀬戸が再び逆転。そのまま逃げ切った。フィニッシュはほぼタッチ差である。わずか100分の1秒早くゴールしたのは瀬戸だった。萩野は6連覇を逃したが、固い握手を交わして勝者を称えた。

 

「この勝ちは自分にとって大きい」。瀬戸は日本選手権において、400m個人メドレーではいつも水をあけられてきた。「ずっと優勝したかった」と初優勝を喜んだ。一方の萩野は「この悔しさはジャパンオープン、世界選手権で借りを返したい」と雪辱を誓う。大学を卒業し、瀬戸は社会人1年目、萩野はプロスイマーとしての生活をスタートさせたばかりだ。新たな船出を始めた2人のライバル対決は今後も続いていくだろう。

 

 主な初日の結果は次の通り。

 

<男子100メートル自由形・決勝>

1位 中村克(イトマン東進) 48秒26

2位 塩浦慎理(イトマン東進) 48秒80

3位 松元克央(セントラルスポーツ/明治大) 49秒02

 

<男子100メートル平泳ぎ・決勝>

1位 小関也朱篤(ミキハウス) 59秒26

2位 渡辺一平(早稲田大) 1分0秒11

3位 山中祥輝(ティラド) 1分0秒46

 

<男子400メートル個人メドレー・決勝>

1位 瀬戸大也(ANA) 4分10秒44

2位 萩野公介(ブリヂストン) 4分10秒45

3位 藤森丈晴(ミキハウス) 4分11秒26

 

<女子50メートルバタフライ・決勝>

1位 池江璃花子(ルネサンス亀戸) 25秒51

2位 相馬あい(中京大) 26秒62

3位 平山友貴奈(筑波大) 26秒80

 

<女子100メートル平泳ぎ・決勝>

1位 青木玲緒樹(ミキハウス) 1分6秒77

2位 鈴木聡美(ミキハウス) 1分6秒91

3位 渡部香生子(早稲田大/JSS立石) 1分7秒09

 

※選手名の太字は世界選手権代表に内定。

 

(文/杉浦泰介)