170416RIZIN4

(写真:コーナーに上り、勝利を誇示する那須川)

 16日、格闘技イベントRIZINの「RIZIN 2017 in YOKOHAMA-SAKURA-」が横浜アリーナで行われた。那須川天心はフランチェスコ・ギリオッティ(イタリア)を1ラウンド1分7秒TKOで下した。那須川は総合格闘技(MMA)3連勝。女子のエース格RENAはドーラ・ペリエシュ(ハンガリー)に1ラウンド2分49秒KO勝ちを収めた。RIZIN初参戦となった堀口恭司、KINGレイナ、石岡沙織はいずれも白星を飾った。そのほか浅倉カンナがRIZIN初勝利を挙げ、11試合中4試合あった女子の試合は日本勢が制した。

 

 2017年一発目の興行は若き力が躍動した。まずその中心にいたのは18歳の那須川だ。昨年末からMMA3連勝。キックボクシングの神童がMMAでも、その底知れぬ力を発揮している。

 

 対戦相手のギリオッティはムエタイをベースにするファイター。立ち技での打ち合いは必至と思われた。序盤からペースを握ったのは那須川だった。「相手をコントロールできた」。3分3ラウンドの試合の幕引きもあっという間だった。

 

170416RIZIN3

(写真:得意の打撃で相手を圧倒した)

 那須川は相手をコーナー際に追い込むと、左ストレートを顔面に当て、左ハイキックでグラつかせる。再び左ストレートを打ち込んでマットに沈めると、猛ラッシュ。レフェリーが試合を止めた。わずか1分7秒でイタリア人を仕留めた。那須川本人も「もっといろいろ技を見せたかったですが、次見たいと思わせる試合はできた」と納得の出来だ。

 

 既にRIZINは年末の2試合を含め、計4試合の興行が決まっている。那須川は「オファーがあれば出たい。キックボクシングの試合を組んでもらえれば、もっと面白い試合できる」と“本職”での戦いもアピールした。しかし、RIZINの榊原信行実行委員長は「RIZINは彼の新しいチャレンジを見せていきたい。MMAファイターとしての成長を見つめていきたい」とキックでの参戦には否定的だった。

 

 榊原実行委員長が「彼のレベルアップに合わせて試合をピックアップしていきたい」と口にするように、RIZINとしては那須川をMMAフライ級エースに育て上げる方針だ。本人はリング上で「皆さんの期待以上のものを見せて必ず格闘技界を変えていきたいと思います」と力強く宣言した。格闘技界の新星は意気揚々だ。

 

 新色は“ジョシカク”

 

170416RIZIN1

(写真:RIZN、そしてジョシカクの顔であるRENA)

<主役はヒーローか、ヒロインか。>

 大会のポスターに銘打たれたコピー。それに呼応するように女子格闘技(通称ジョシカク)が花を咲かせた。榊原実行委員長も「女子の4試合だけ切り取れば成果があった。全11試合の中で我々が求めた及第点を彼女たちは叩き出した」と評価した。

 

 浅倉、石岡、KINGレイナの日本勢3連勝で迎えた女子のトリを飾ったのは、RIZINの顔でもあるRENAだ。大会ポスターは彼女が一番大きく扱われていることが、その期待の大きさを物語っている。MMA5戦目の相手はハンガリー出身のペリエシュは関節技を得意とするグラップラーである。

 

 これまでとは違うタイプのファイターだけにグラウンドに持ち込まれると危険だ。得意の立ち技で勝負を決めたいところだった。しかし、開始早々にその思惑は外れた。「(グラウンドに)引き込んでくるとは思っていましたが、何が起こったかわからなかった」とRENA。腕を取られ、いきなりピンチを迎える。

 

170416RIZIN2

(写真:昨年末のRIZIN3戦目でも三日月蹴りは有効だった)

 彼女の頭を過ったのは「秒殺負け」という記事の見出し。「それだけは避けたいと思った」と、腕ひしぎ逆十字固めをかけるペリエシュからなんとか抜け出した。スタンドで勝負となれば、RENAの土俵だ。1分30秒が過ぎたところで三日月蹴りを放ち、相手にヒザをつかせた。

 

 ここからは完全にRENAのペースだ。前蹴りを腹に当てて、右ストレートが顔面をとらえる。フィニッシュは左のボディ。苦悶の表情でマットにゆっくりと沈んでいくペリエシュ。勝負ありだった。終わってみれば1ラウンドでのKO勝ち。RENAの快勝だった。

 

 この日の興行はゴールデンタイムで放送された。大会のメインは川尻達也vs.アンソニー・バーチャック(アメリカ)だったが、放送上のメインはRENAだった。榊原実行委員長は「興行と放送の両方で女子がメインになる日は近い将来、必ずある」と明言した。

 

「PRIDE時代を懐かしんでもらえるが、オリジナリティを作りたい」と榊原実行委員長。RIZINが示す新しいカラーのひとつが“ジョシカク”だ。既に女子のグランプリを行うことも決まっている。“ジョシカク”ブランドの確立が、今後の成功のカギを握る。

 

(文・写真/杉浦泰介)