開幕から約1カ月、ここまでの戦いで見えてきたことをお話ししましょう。

 

 セ・リーグは連覇を狙う広島が首位(4月24日時点。以下同)です。「チームの形」が昨年に引き続いて出来上がっているのが強みですね。巨人と並んで同率2位の阪神は、金本知憲監督の「若手起用」がチームを活性化しています。監督1年目の昨シーズンもそうでしたが、若手や中堅が「頑張ればチャンスをもらえる」とわかったことで、非常にやる気が感じられます。チームに勢いが出ていますね。

 

 パ・リーグは東北楽天が好調です。埼玉西武に2ゲーム差をつけて首位を快走しています。茂木栄五郎とカルロス・ペゲーロ、この攻撃的な1番、2番の並びが非常に効果を発揮していますね。

 

 梨田昌孝監督と私は大阪近鉄時代にコーチ、選手という間柄でした。そのときから思っていましたが、あの人は選手を乗せるのがうまいんですよ。楽天の選手たちもいい雰囲気で野球ができているんじゃないですかね。あと梨田監督はチームを把握する能力に長けています。どのチームでも2年目に結果(優勝)を出しているのも納得です。現状を把握した上で効果的な選手起用、そしてコーチングスタッフの充実など、チーム作りがうまくいった結果の首位快走ですね。

 

ケガ人が出たら脱落も

 パ・リーグの順位表を見ると昨シーズンとAクラス、Bクラスがひっくり返った感じです。西武は辻発彦新監督の下で鍛えられて、守備力が向上しています。元々、攻撃力は群を抜いていたので守りがしっかりしてくれば今の位置も納得です。オリックスは金子千尋を筆頭にして勝つべき投手がきちんと勝っているのがAクラス入りの理由ですね。

 

 広島はすでに「チームの形」が出来上がっていると前述しましたが、パ・リーグのAクラス球団も「形」が出来ている印象です。

 

 開幕当初はいかに早く「チームの形」を作れるか、これが重要なんです。特に序盤は「投手力」、しかもブルペンを整備できたチームが強いですね。開幕して間もないこの時期、先発投手はまだ長いイニングを投げられない。そのために中継ぎ、リリーフがしっかりしているチームが序盤は抜け出します。今の時期に強い球団、弱い球団を見てみると、ブルペン力に差があるのが分かると思います。

 

 最後にひとつ。昨シーズン、日本一に輝いた北海道日本ハムが最下位ですが、原因のひとつは主力選手のケガでしょう。これから大型連休を挟んで、その後には交流戦も始まります。まだまだペナントレースの山場は先のことです。選手たちにはケガにだけは気をつけて熱戦を展開してほしいものです。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商、近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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