好調楽天の起爆剤として打線を支えているのが2番に起用されたカルロス・ペゲーロだ。7本塁打、21打点(5月1日現在)は、いずれもリーグトップ。そのかわり犠打はゼロ。「取られたら取り返す」という梨田昌孝監督のメッセージを「異色の2番」から読み解くことができる。

 

 犠牲的精神を必要とする2番は外国人選手には不向き――。ずっと、そう言われてきた。その典型が1975年から80年にかけて阪急で活躍したバーニー・ウィリアムスである。

 

 ライトの守備は絶品だった。俊足にして強肩。76、78年にはダイヤモンドグラブ賞に輝いている。だがバットの方は、いささか心許なかった。大振りが目立ち、好不調の波が激しかった。

 

 そのウィリアムスを上田利治監督が2番に起用したことがある。本来の2番はベテランの大熊忠義だが、1番の福本豊とささいなことが原因で口論となった。「クマさん、今のはセーフですよ」。「そんなことはない。オレはアウトと見た」。一塁走者の福本が二塁に向かってスタートを切るたびに大熊がカットを繰り返す。「打たんかったらセーフやのに…」。不満をぶつける福本。ついに大熊の堪忍袋の緒が切れた。「それやったら、もうオレ2番やめるわ」

 

 代役のウィリアムスに福本の黒衣が務まるはずはなかった。「世界の盗塁王」がスタートを切ろうが切るまいがお構いなしで初球から手を出す。ついには福本が音を上げた。「すいませんクマさん。もう一度2番をお願いしますわ」

 

 外国人2番の成功例がないわけではない。1979年、球団史上初の首位打者に輝いた大洋のフェリックス・ミヤーンである。猫のように背中を丸め、水平に寝かせたバットで球体の芯を射抜く独特のバッティングは、ボールを飛ばすことよりも当てることを目的にしているかのようだった。

 

 再び楽天に話を戻す。一般的に打順を決めるにあたっては「つながり」が重視される。得点の最大化こそが打線の使命だ。ところが、かつて「いてまえ打線」を率いた指揮官は戦端での「大量破壊」を目論んでいるフシがある。2番から外国製の大砲が3門居並ぶ風景は奇観である。にもかかわらず、それが妙に新鮮に映るのは、このところスモールベースボールに慣らされ過ぎたせいか。杜の都の“バンカラ打線”も悪くはない。

 

<この原稿は17年5月3日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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