(写真:苦しい試合をモノにし、CSホーム開催の可能性を残した千葉)

(写真:苦しい試合をモノにし、CSホーム開催の可能性を残した千葉)

 3日、男子バスケットボール「B.LEAGUE」の第31節が各地で行われた。千葉ポートアリーナでは東地区3位の千葉ジェッツが同5位の秋田ノーザンハピネッツを79-76で破った。同1位の栃木ブレックスは同2位のアルバルク東京との直接対決を制し、地区優勝を決めた。

 

 最終戦でホーム年間観客動員13万5000人突破(千葉ポートアリーナ)

千葉ジェッツ 79-76 秋田ノーザンハピネッツ

【第1Q】14-10【第2Q】14-19【第3Q】31-22【第4Q】20-25

 

(写真:富樫<左>は26得点の活躍でチームを牽引)

(写真:富樫<左>は26得点の活躍でチームを牽引)

 リーグNo.1の観客動員を誇る千葉のホーム最終戦。記録を目指し、チームも動員に力を入れた。迎えたゴールデンウイークの中日、7327人が詰めかけ、千葉ポートアリーナは千葉のチームカラーの赤に染まった。

 

 先制点は千葉。SF/PF小野龍猛のシュートが外れると、PFマイケル・パーカーがリバウンドを取る。すぐさまゴールへ押し込んだ。千葉得意のアップテンポなバスケットボールに持ち込み、勢いを加速させていくのかと思われた。だが、なかなかシュートは決まらず、スコアは伸びない。第1クオーター(Q)を終えて14-10とリードしているものの、フィールドゴールパーセンテージ(FG%)は31.6%と低調だった。

 

(写真:2本のダンクをリングに叩き込んだストーン<33>。シュートエリアは広い)

(写真:2本のダンクをリングに叩き込んだストーン<33>。シュートエリアは広い)

 第2QはPFタイラー・ストーン、PG西村文男の連続スリーポイント(3P)で序盤を突き放した。すると秋田も反撃を開始。SG/SFレネ・ライオンズの3P、PF/Cイバン・ラバネルが決めて追いすがる。5分を経過したところで一時は10点差あったビハインドを帳消しにした。千葉はCヒルトン・アームストロングがインサイドで奮闘したが、秋田に3Pを続けて決められ、リードを許した。前半終了間際に放った小野のシュートは入らず、28-29で試合を折り返す。

 

「我慢の展開」。千葉のキャプテンである小野、司令塔のPG富樫勇樹が口を揃えたように得意のオフェンスが機能していたとは言い難かった。FG%は32.3%と低いまま。スタッツを見ると、リバウンド、ファウル、ターンオーバーなどは秋田とほぼ変わらなかったが、シュートの成功率は5%も劣った。

 

「ディフェンスからオフェンスにつなげていこうということを意識した」と大野篤史ヘッドコーチ(HC)。富樫も「特に何を変えたわけではありませんが、意識が変わってディフェンスが良くなった」と振り返ったように第3Qは守備を立て直した。ディフェンスが安定したことで千葉のオフェンス陣が爆発。このQだけ見ればFG%は66.7%と高確率を叩き出した。

 

 序盤は秋田のSG田口成浩は3Pなどで離されたが、SG石井謙祐の連続アシストから点差を詰める。2本目はアームストロングが豪快にダンク。会場も大きく沸く。派手なダンクも見られるのが千葉の魅力のひとつだろう。大観衆に背中を押され、勢いに乗る。中でも富樫の活躍は際立った。面白いようにシュートが決まり、このQ15得点。アリウープパスでストーンのダンクも演出した。31得点を奪った千葉が59-51で第4Qを迎えた。

 

(写真:敵地へと詰め掛けた秋田ブースター。チームを後押しした)

(写真:敵地へと詰め掛けた秋田ブースター。チームを後押しした)

 東北から足を運び、一角をピンクに染めたブースターの想いに応えるために秋田も簡単にはあきらめない。PG安藤誓哉、ラバネルなどの活躍で一気に試合をひっくり返した。ここからは点の取り合い。一進一退の攻防が続いた。

 

 勝負を決めたのは、富樫だった。73-73の同点。試合時間は残り1分を切っていた。リプレー検証などで試合の流れが切れた後、タイムアウトでプレーを確認。フリースローライン中央までボールを運ぶと、安藤がマッチアップした。クロスオーバーで右に進む。追いかける安藤はシュートフェイクで完全に視界から外した。

 

「最悪打たなくてもいいと思っていた」。富樫は安藤よりも後ろに控えていたCスコット・モリソンを意識していた。モリソンもすぐにはプレスにこなかった。一瞬空いたシュートチャンス。富樫はそれを逃さなかった。背番号2が放った美しい放物線はそのままゴールに吸い込まれていった。値千金の3Pで76-73のリードを奪った。

 

 残り時間も得点を重ねた千葉が79-76で競り勝った。キャプテンの小野が「負けゲームかなと思っていた」という試合で勝ち切ったことは大きい。リーグも終盤戦を迎えチャンピオンシップ(CS)に向けた順位争いも激化。この日は東地区2位を争うA東京が栃木に敗れたため、勝敗で並んだ。2位に浮上すれば、CS初戦はホームでできる。残り2試合でその可能性に懸ける。

 

(写真:この日も多くのダンクで観客を沸かせた)

(写真:この日も多くのダンクで観客を沸かせた)

 この日の入場者数7327人を加え、千葉の今季のホーム開催は13万5000人超えを達成した。これで1試合平均は4500人を超える。その集客力はリーグでも群を抜く数字だ。選手たちも多くのブースターの前でプレーできる喜びを感じている。この試合のMVPに輝いた富樫は「最高でした。これだけ集まってもらった結果がこの勝利」と感謝した。ブースターの声援がチームの勢いを加速させることは間違いない。

 

 B.LEAGUE初代王者が決まるCSは13日から開幕する。既に出場を決めている千葉の大野HCは「一丸となってCS頑張ります」とブースターに誓った。アップテンポなバスケットボールを展開する千葉。ダンクあり3Pありと攻撃が魅力のチームだ。「チームの1人1人がそれぞれのストロングポイントを持っています。そこがウチの強み」と小野。今後に向けて「あとはチームの完成度を高めていくだけだと思う。さらにギアをもう1個換えられるようにしたい」と意気込んだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)