開幕してから約1カ月が経過して、信濃グランセローズは福井(ミラクルエレファンツ)との首位争いを展開しています。今季の戦力はベストを10とすると7、いやまだ5くらいでしょうか。昨シーズン、勝ち星をあげたピッチャーのうち4人が抜けました。逆にライバルの福井はほとんどの選手が残っているんですよ。相当に手強いですよね。でもそれを考えればうちの選手たちもよくやってくれています。

 

 投手陣は3勝をあげている佐々木(勝一)、防御率リーグ2位(0.42)のロン、この2人に頼っている状況です。本当のことを言うと佐々木は後ろ(抑え)で使いたかったんです。そしてシーズンが進んで勝負どころの試合で先発に、と考えていたんですが、先発のコマが揃わずに開幕から前で投げてもらっています。

 

 ただ漆戸駿、高井ジュリアン、樫尾亮磨という若いピッチャーに段々と使える目処が立ってきました。樫尾は先発で使えそうですし、彼らがローテーションに加わると非常に心強いですね。

 

 攻撃陣はライ(加藤頼)が加わって攻撃に幅が出ました。俊足の彼をトップに起用することで機動力を使った野球ができます。4月を終えた段階で5盗塁ですが、これからもっと増えていくことでしょう。切り込み隊長として期待しています。

 

 チーム創立以来の悲願のために

 開幕当初の目標は「4月中に勝ち越し3つ」というものでした。というのも5月前半に巨人戦が3戦組まれているんです(6、7、10日)。そこまでに貯金3あれば、たとえ巨人に全敗しても5割キープという狙いでした。

 

 巨人の3軍は今年は投手力もいいし、結構手強い印象ですね。うちが対戦する前、BCリーグのチームは巨人相手に1勝だけ。しかも大量得点差でこてんぱんにやられました。だからうちも当たって砕けろ、の気持ちでぶつかります(編集部注・信濃対巨人結果・5/6 ●5-10、5/7 ○10-8、5/10●5-8・1勝2敗)。

 

 信濃の監督になって2年目の今季、創立以来の悲願である優勝を成し遂げたいですね。ファンのみなさんに喜んでもらうのはもちろん、日本ハム時代に編成部長としてお世話になり今は信濃球団の会長を務める三沢(今朝治・けさはる)さんのためにも勝ちたいですね。会長には「胴上げのために痩せておいてくださいよ」と言ってあるので、あとは我々、現場が頑張って悲願を達成するだけです。そのためには期待のライを含めて7人の地元選手がいるので、地元選手を育てて、そして強くなりたいです。それが信濃のファンのみなさんへの何よりの恩返しになるでしょうからね。

 

 長野県の冬は雪が多くて思うように練習ができない環境です。それでも強くなれることを我々が証明できたらいいですね。これからも信濃グランセローズの応援をお願いします。

 

<本西厚博(もとにし・あつひろ)>:信濃グランセローズ監督
1962年5月15日、長崎県出身。瓊浦高から三菱重工長崎を経て、86年、ドラフト4位で阪急ブレーブスに入団。1年目から一軍に定着。プロ3年目の89年には、外野手としてゴールデングラブ賞を獲得した。延べ4球団を渡り歩き、01年に現役を引退。02年に千葉ロッテマリーンズのコーチを務める。その後、東北楽天ゴールデンイーグルスと韓国のロッテ・ジャイアンツのコーチを経て、16年から信濃グランセローズの監督を務めている。


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