近年のカープの歴史を考えてみると、一つの転機が2013年だったことがわかる。この年、16年ぶりのAクラスと初のクライマックスシリーズ進出を決めている。

 

 続く2014年もクライマックスシリーズに進出し、2015年には黒田博樹の復帰、そして2016年の優勝へとつながっていく。

 

 では2013年には何があったのか。決して開幕から好調だったわけではない。シーズントータルでも負け越している。それでも3位に浮上したのは、7月9日にデビューした新外国人キラ・カアイフエの爆発的な活躍があったからだ。なにしろ7月からだけで14本塁打を記録している。

 

 デビューの横浜DeNA3連戦で4本塁打。たしか左腕田中健二朗からだったと記憶するが、強烈な印象に残るホームランを放っている。

 

 何が言いたいのかと言うと、現在のカープについてである。

 開幕直後に10連勝を記録するなど絶好調だったが、ここへきて、阪神戦3連敗が象徴的だが、負けが込んでいる。

 

 こう思うのだ。あの10連勝は去年の優勝チームの余韻、ないしは残り香なのである。だって去年同様、たとえば新井貴浩が“神ってる”ようなタイムリーを打って勝ったりしていたじゃないですか。

 

 しかし今年はまた新しいチームなのである。新チームの4番は鈴木誠也なのだ。

 だから、新チームの力で、今の苦境をのりこえないといけない。

 

 それには、一番効果があるのは、2013年のキラのような、起爆剤となる選手が出現することだ。

 

 では起爆剤は誰か。一発のある松山竜平は故障してしまったし、こういうときの新外国人選手ということで、ラミロ・ペーニャに期待してはどうか。

 ペーニャはキラのような爆発的な長打力はない。しかし、スイッチヒッターで左右両打席とも、いいスイングをしていると思うのだが。

 

 ここ数試合のラインアップで少し気になるのが「7番野間峻祥」である。

 野間はたしかに素質にあふれる外野手である。しかし、今は打撃改造の途上という感もあり、結果は出ていない。

 

 去年、緒方孝市監督が成功したのは、結果を残している野手を使う方針を貫いたからだ。今回の野間のような、将来を見越しての起用とも見えるのはなかったように思う。

 

 ペーニャは内野手だから、ポジションがない、という反論もあるかもしれない。そこはエルドレッドをレフトにして、3塁ペーニャ、1塁安部友裕(あるいはその逆)でもいいのではないか(新井はお休みしている、という前提で考えている)。

 

 ともかく、「黒田がいない、鈴木が4番」という2017年の新チームが再浮上するには、まずは起爆剤となる選手の出現を期待したい。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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