10日、女子アイスホッケーのソチ五輪世界最終予選がスロバキア・ポプラトで最終日を迎え、C組の日本代表(世界ランキング12位)はデンマーク代表(同19位)に5−0で完勝し、ソチ五輪への出場権を獲得した。 日本の五輪出場は長野五輪以来、4大会ぶり2度目。予選突破は初の快挙となった。この試合に勝てばグループ1位となり、ソチ行きが決まる日本は第1ピリオドに2点を先制。第2ピリオドに2点、第3ピリオドで1点を加点する。守ってはデンマークの反撃をしのぎ切り、零封した。

 

 過去3大会であと一歩、届かなかった五輪切符をついに手にした。これまでの3大会はすべて最終予選最終戦で敗戦し、五輪への望みを絶たれていた。今予選は1戦目のノルウェー代表に第2ピリオド途中まで3点のビハインドを喫しながら、大逆転勝利を果たす。2戦目は最大のライバルと目されていた開催国のスロバキア代表と対戦するも、試合を支配しながらゲームウイニングショットで敗れた。最終戦の相手、デンマークは2連勝で勝ち点5を獲得しており、日本は1差の4。勝利がソチへの絶対条件だった。

 試合が動いたのは第1ピリオド9分。相手より1人多いパワープレーの間に、左サイドからFW平野由佳が相手DFの股下を抜くシュート性のパスを送る。それをゴール前でフリーで受けたFW獅子内美帆がコースを変えてゴールネットを揺らす。待望の先制点は日本が奪った。

 ピリオドの残り4分はデンマークのパワープレー、GK中奥梓が1対1のピンチも好セーブするなど、無失点でしのぐ。すると19分、ミドルシュートのこぼれ球を拾ったFW久保英恵がゴール右隅に叩き込み、2点目。終了間際にFW青木亜優子がペナルティを受け、日本が1人少ないキルプレーとなったが、2点リードを守ってピリオドを終える。

 第2ピリオドは開始から我慢のホッケーが続いた。立ち上がりの開始直後のキルプレーを凌いだものの、2分過ぎに平野がペナルティ。再び数的不利になった日本はここでもデンマークの猛攻に耐えた。

 ピンチの後にはチャンスがやってくる。7分、久保のパスを受けた平野がGKと1対1に。平野は落ち着いて相手守護神の股を抜く技ありシュートを放ち、3−0とリードを広げた。終了間際にはDF床亜矢可のミドルシュートがこぼれたところを、久保が押し込み、4点目。飯塚祐司監督が「いい時間帯に点がとれた」と語る通り、各ピリオド終了間際の得点が相手へ与えたダメージは大きかった。

 いよいよ最終3ピリオド、ソチへの20分のカウントダウンが始まった。デンマークは焦りのせいかペナルティを連発するなど、日本は数的有利に立つパワープレーが続く。カウンターから1対1になる危ない場面もあったが、ゴール前には日本の守護神が立ちふさがっていた。中奥が鋭い反応を見せ、好セーブ。「スロバキア戦に負けてしまったので、力を見せたいと思っていた」とゴールを許さない。

 日本は10分過ぎに1点を追加し、勝利を決定づけると、守ってはデンマーク攻撃陣をシャットアウト。ついに16年越しの悲願を掴みとった。試合終了の瞬間、氷上の選手、ベンチにいた選手は殊勲者・中奥のもとへと駆け寄って、喜びを分かち合った。08年から指揮を執ってきた飯塚監督は「(バンクーバー五輪予選からの4年間で)いい準備ができた。選手たちがよくやってくれた」と褒め称えた。

 開催国枠での出場となった1998年の長野五輪では1勝もできず、世界との厚い壁を思い知らされた。 2得点2アシストの活躍を見せた久保は悲願の予選突破にも「これは通過点」と言い切る。好セーブを連発した中奥も「ここで終止符ではない」と語り、ソチまでのレベルアップを誓った。快挙を成し遂げた“氷上のなでしこ”たちが、大舞台でどんな花を咲かせるのか、1年後が楽しみだ。