熱戦が続くプロ野球は5月30日からセ・パ交流戦が始まります。2005年から昨シーズンまで12年、14年(ともに巨人)を除いてすべてパ・リーグのチームが交流戦を制しています。いわゆる「パ高セ低」。この傾向は今季も続くのでしょうか。元千葉ロッテの里崎智也さんに話をうかがいました。

 

 気を使う狭いセ本拠地のリード

 交流戦と言っても普段のレギュラーシーズンとやることは変わりません。いつも通りスコアラーのデータに目を通して、相手ピッチャーの持ち球や相手打者の傾向を頭に入れて試合に臨みます。いくら普段対戦しないリーグが相手とは言っても、「うわ、こいつこんな球を投げるのか!?」と驚くようなことはありませんね。

 

 セ・リーグとパ・リーグの違いとしては、セの投手はみんな丁寧に丁寧に低めをつくタイプが多かった印象です。東京ドーム、神宮、横浜は球場が狭いので、やはり一発を警戒してそういうピッチングになるんでしょう。反対にパ・リーグは「えいやっ!」というパワーピッチャーばかりだったので、最初、打席に入ったときに少し戸惑いましたよ。もちろん自分がリードするときも、それに気を使いました。

 

 実際にプレーして感じた両リーグの差といえばそれくらいですが、交流戦でパ・リーグが強くて、セ・リーグが弱いという傾向は結果にはっきりと現れています。これまでセ・リーグが勝ち越したのは09年の一度だけです。これは「指名打者(DH)前提の編成をしているかしていないか」の差ですね。

 

 DHありきのパ・リーグは野手9人、対するセ・リーグは8人の野手で編成しています。交流戦でセの球団がDHを使う場合、守備に難のある強打者をDHにするか代打の一番手をDHにするか、ほとんどがこの二者択一になっています。前者は東京ヤクルトがそうです。(ウラディミール・)バレンティンをDHにして鵜久森(淳志)あたりが守備につくというオーダーが予想されますが、「投手が打席に入るよりは……」という感じで、爆発的な攻撃力アップは望めません。

 

 巨人・村田の起用がカギ

 反対にダブついている強打者をスタメンDHで使えるチームは有利ですよ。具体的にチーム名をあげれば広島と巨人です。広島は新井貴浩、ブラッド・エルドレッド、松山竜平、DH制の試合ならこの3人をスタメンで使えます。また巨人には今季、阿部(慎之助)、(ケーシー・)マギーに押される格好でベンチの多い村田修一がいます。交流戦なら村田をDHで使えるので、6番あたりにDH村田が入ると打線に厚みと迫力が出る。非常におもしろいですね。グラウンドにいる選手をDHにするのではなく、ベンチの選手をDHにしてしかも中軸に入れられる。セ・リーグでもそういうチームは交流戦で大崩れはしないはずです。

 

 交流戦の最高勝率チーム、便宜上、優勝と言いますが、優勝ラインは12勝6敗か13勝5敗ですね。目下、最下位の千葉ロッテは交流戦を浮上のきっかけにしてほしいです。あり得ないでしょうがロッテが18戦全勝で、他のパ・リーグ球団が0勝18敗となれば交流戦明けが非常に楽しみになります。ロッテにはセ・リーグとの対戦で5つくらい勝ち越して、なんとか今の状況から脱出してほしいですね。

 

<里崎智也(さとざき・ともや)プロフィール>
1976年5月20日、徳島県出身。鳴門工業高を卒業後、帝京大学に進学。98年のドラフト2位で千葉ロッテに入団。03年、規定打席未満ながら打率.319の成績を残し1軍に定着した。05年、プレーオフ最終戦で逆転タイムリーを放つなど日本一に貢献。06年、第1回WBCでは正捕手として活躍し世界一に貢献した。10年、レギュラーシーズン3位からクライマックスシリーズを勝ち上がり、「下剋上」で日本一を達成。14年シーズンで現役引退。通算1089試合、108本塁打、458打点、打率.256。ベストナイン、ゴールデングラブ賞2度受賞。


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