IMG_2701

(写真:ガトリン<右>に惜しくも競り負けたケンブリッジ)

 21日、世界陸上競技選手権の日本代表選考会を兼ねた「IAAF(国際陸上競技連盟)ワールドチャレンジ第2戦 セイコーゴールデングランプリ」が神奈川・等々力競技場で行われた。男子100メートルはジャスティン・ガトリン(アメリカ)が10秒28で2連覇した。日本人トップの2位にはケンブリッジ飛鳥(ナイキ)が10秒31で入った。男子棒高跳びは荻田大樹(ミズノ)が5m60で制した。男子110mハードルはシエ・ウェンジュン(中国)が13秒51で優勝。大室秀樹(大塚製薬)が13秒59で3位に入った。

 

 ケンブリッジは競り負けたものの、ガトリンと好勝負した。

 

 この日の最終種目は男子100m。予選なしの一発勝負は入場から盛り上げようと、出場選手1人1人がコールされた。日本期待のケンブリッジをはじめ、サニブラウン・アブデル・ハキーム(東京陸協)にも大きな声援が送られた。最後に登場したガトリンがコールされると日本人にも負けない歓声が上がった。

 

IMG_2689

(写真:スー〈左端〉、ガトリン〈右端〉と国外のトップスプリンターが出場)

 世界トップレベルのガトリンが第3レーン、プロ転向後初の国内レースのケンブリッジが第4レーン、アメリカの大学への進学が決まっているサニブラウンが第5レーンに並んだ。第6レーンには中国人初の9秒台を出したスー・ビンチャンもいる。好記録への期待も高まったが、向かい風1.2メートルと追い風は吹かなかった。

 

 静寂が訪れ、号砲と共に9人が一斉に飛び出した。抜群のスタートを見せたのは、関西学院大学3年の多田修平だ。序盤から1人抜け出し、国内外のトップスプリンターを相手に先手を取った。だが後半からガトリン、ケンブリッジはググッと伸びてくる。

 

IMG_2706

(写真:ガトリンにサインや握手を求める観客。日本での人気の高さを感じさせた)

 ガトリンが先頭を奪って10秒28でゴール。ケンブリッジも追い上げたが、ガトリンには0秒03差届かなかった。まだ本調子と言えない中で、実力者は地力を見せた。ガトリンも「フィニッシュにフォーカスして勝つことができた」と振り返る。一方のケンブリッジは「いけるかもしれないと思った瞬間に力が入ってしまった。少し残念」と悔しがった。

 

 ケンブリッジは昨年の日本選手権を制し、リオデジャネイロ五輪に出場した。リオでは100mで準決勝敗退。400メートルリレーではアンカーとして銀メダル獲得に貢献した。今シーズンからプロに転向し、4月には追い風参考記録ながら9秒台もマークした。

 

 今回はリオの準決勝以来の同組レースとなったガトリンに敗れたものの、手応えも掴んでいる。ダイヤモンドリーグに出場するなど、春先から国外でレースを積んできた。「タイム的には何とも言えないですが、自分の中の感覚としては今日の方が良かった」とケンブリッジ。最後まで競り合うことができたことを評価している。

 

「少しずつかたちになってきている」。2週間後、鳥取での布施スプリントに出場予定だ。まずは世界選手権(8月、イギリス・ロンドン)の派遣標準記録10秒12突破を目指す。「次のレースで絶対切りたい」と意気込んだ。

 

 主な結果は次の通り。

 

【男子100m決勝】

1位 ジャスティン・ガトリン(アメリカ) 10秒28

2位 ケンブリッジ飛鳥(ナイキ) 10秒31

3位 多田修平(関西学院大学) 10秒35

 

IMG_2620

(写真:今季好調の大室〈左から2番目〉は日本人トップの3位)

【男子110mハードル決勝】

1位 シエ・ウェンジュン(中国) 13秒51

2位 ミラン・トライコビッチ(キプロス) 13秒52

3位 大室秀樹(大塚製薬) 13秒59

 

【男子棒高跳び】

1位 荻田大樹(ミズノ) 5m60

2位 江島雅紀(日本大学) 5m50

3位 山本聖途(トヨタ自動車) 5m50

 

※順位は試技数による

 

(文・写真/杉浦泰介)