(写真:効果的に左のジャブとフックを使った井上<左>)

(写真:効果的に左のジャブとフックを使った井上<左>)

 ボクシングのダブル世界戦が21日、東京・有明コロシアムで行われた。WBO世界スーパーフライ級は、王者の井上尚弥(大橋)が同級2位のリカルド・ロドリゲス(米国)と対戦。3ラウンド1分8秒でTKO勝ちし、5度目の防衛に成功した。IBF世界ライトフライ級は、王者の八重樫東(大橋)が暫定王者のミラン・メリンド(フィリピン)との統一戦に臨んだ。八重樫はメリンドに1ラウンド2分45秒でTKO負けを喫し、3度目の防衛に失敗した。

 

「日本ボクシング史上最高傑作」と称される“モンスター”井上。その異名にふさわしい試合を見せた。

 

 1ラウンド目、最初に仕掛けたのは挑戦者のロドリゲスだった。井上をロープ際に追い込みコンビネーションを打ち込む。しかし、王者は冷静だった。慌てることなく、ガードとステップでパンチを防ぐ。相手の積極的な姿勢に井上も応戦。パンパンとコンビネーションを繰り出し、リズムを相手に渡さなかった。

 

 1ラウンド目で、相手の力量をはかった井上は、2ラウンド目にはオーソドックスな構えから、サウスポースタイルにスイッチする場面もあった。「(スイッチを)やってみようかな、と。気持ちに余裕があった」と井上。サウスポーからオーソドックスに戻した後は、左のジャブを多発。相手との距離を取りながら、手数が増えた。

 

(写真:会見では「階級を上げる可能性もある」と語った)

(写真:会見では「階級を上げる可能性もある」と語った)

 迎えた第3ラウンド。井上は左のパンチで活路を見出す。井上は高速の左ジャブを見舞った後、鋭い左フックで1度目のダウンを奪った。ロドリゲスは立ち上がるものの、井上のパンチをかわせるほど、回復はしていない。ここぞとばかりに井上が襲い掛かり、再び左フックをロドリゲスのアゴに打ち込んだ。パンチをもらったロドリゲスは力なく尻もちをつき、勝負あり。井上は5度目の防衛に成功した。

 

 井上は、試合をこう振り返る。

「ダウンを奪ったのは2回とも左のフック。感触はあった。ジャブもスムーズに出ていたので、距離感はつかめていた」

 

 大橋秀行会長は「ボディーブローもよかった。今日は満点」とほくほく顔。圧倒的な内容で勝利した井上だが、「日頃からチャレンジャーの気持ち。気を抜けません。(気を抜くと)こういう舞台で敗北してしまう。初心を忘れずにやっていく」と気を引き締めた。

 

 順調に調整が進めば、次戦は9月。米国進出も視野に入れる。24歳の王者に、気の緩みはない。

 

(文・写真/大木雄貴)