(写真:復帰戦をバックアップする大日本プロレスの登坂社長<左>)

(写真:復帰戦をバックアップする大日本プロレスの登坂社長<左>)

「まじりっけなしのUWFをやるのは今しかない」

 深夜、このような想いが突然湧きあがり、僕は興奮して眠ることができなかった。

 

「新生UWFのレジェンド軍団にUWFルールで挑戦というカードはどうだろう?」

 かなり具体的なUWF構想が僕の中で爆発したのである。こちらのコラムでも幾度となく、最終戦となった1990年12月の松本大会でのバンザイのことを書かせてもらっているが、新生UWFのメンバーが集まるのなら、このタイミングしかないと強く感じた。今年に入ってUWFに関する出版物が話題となっているのがその理由のひとつでもある。あの空中分解から26年半の時を経て、今ファンの間でUWF回顧ブームの波が来ているのだ。

 

「僕の復帰戦はUWFが誕生した後楽園ホールが理想」

 3月の新宿中央公園での復帰計画が、雨天のため中止となったことも、すべてが追い風に変わったとさえ思える。プロレスの神様は、聖地での復帰戦を望んでいたのかもしれない。十分すぎるほど機は熟している。念願だったUWFのリバイバルを後楽園ホールで実現させるのは今がチャンスだ。

 

「カッキー、来月そっちに行くやさかい。久しぶりに会おう」

 5月12日に入門前からお世話になっている徳島在住の福田典彦さんと都内で会うことになった。

 

 UWFの四国後援会長をやっていた福田さんとは、僕が16歳の時にUWF入門のアドバイスをしてもらったのがご縁だ。現在は、横綱・白鵬の四国後援会事務局長を務めている。

 

 福田さんは、マット界に入ってからも節目節目でサポートしてくださっている大恩人なのである。選手の時だけではなく、3年ほど前には徳島の商店街のイベントにミヤマ☆仮面を呼んでくれるなど、身内のような感覚でずっと応援してくれているのだ。

 

「福田の大将、大変ご無沙汰しております」

 人望の厚い福田さんの周りには政治家をはじめ色々なジャンルの方が集まる。

 

 その日の会食の席には、なんと前田日明さんもお越しになっていた。

「カッキーの席は、前田さんの隣やな」

 やはり大先輩の前では、45歳になった今でも新弟子状態に戻ってしまう。僕は自分から前田さんに話しかけることなどできず、石のように固まりながら4時間もの時間を過ごしたのだった。

 

「あっ、今日って、もしかして5月12日?」

 帰り道、ふとこの日が新生UWFの旗揚げ日であったことに気が付いた。スゴイ記念日に福田さんや前田さんに再会したものだと驚きを通り越して何か運命的なものを感じる。

 

 会食中には、UWF伝説の旗揚げ戦で、前田さんがマイクで語った「選ばれし者の恍惚と不安ふたつ我にあり」が偶然にも話題に上がった。この言葉は、太宰治の「葉」という短編の一節であることを直接ご本人の口から聞くことができたのだ。これは、ただの偶然に違いないのだが、UWF戦士の端くれとして、この出来事を生かさないといけないと思う。

 

 つまり、UWFのリバイバルをやるゴーサインと取るべきなのだ。

 それに何より復帰戦がUWFのリングなら、僕自身こんなに幸せなことはない。

 

 正直、最近ケガ人が続出しているマット界で、僕のようなリタイアした人間が軽々しくリングに上がるべきではないと迷っていた。しかし、問答無用の強いメッセージ性がそこにあるのなら、このタイミングを逃すべきではないだろう。

 

 原点回帰という意味では、入門のきっかけを作ってくれた藤原組長に胸を借りるとドラマティックだと思う(熱々の大根を背中に乗せるという驚きのエピソードは『Uの青春』を参照)。67歳の今も現役バリバリでリングに上がっている藤原組長は、がんを克服した部分でも尊敬しているし、その強さを今こそ体感したい。

 

「考えてみると新弟子の頃、藤原さんとスパーリングを一度もやったことがなかったなぁ」

 復帰戦は『新生UWF道場スパーリングマッチ』という形で、藤原組長に渇を入れてもらうのが面白い。

 

 3月に予定していた桜庭戦を上回るカードはこれしか思い浮かばない。

 更に追い風だったのは、5月17日に『証言UWF最後の真実』というUWF本が出たことだ。インタビューには、高田延彦さんを除く、新生UWFの主要メンバーが出ている。

 

 前田さんをはじめ藤原組長、山崎一夫さん、船木誠勝選手、鈴木みのる選手、宮戸優光さん、安生洋二さん、中野龍雄選手、田村潔司選手。これだけのメンバーが、一同に取材を引き受けたことは本当に凄いことだと思う。当時最年少であった僕も色々なエピソードをお話させていただいたが、よくある胡散臭い暴露本ではない。絞っても一滴も出ないほどUWFを語りつくしている正統派な一冊となっているのだ。

 

 今回、解散に至るまでの様々な出来事をそれぞれの証言を元に記載されているが、同じ出来事でも人によって捉え方が違ってくるのを読んでいて感じた。当然ながら根が深い問題もあるので、全員が同じリングに集まることはこの先も厳しいと再認識させられた。それでも不可能を可能にすべくチャレンジするのが、僕のスピリットだ。

 

「8月14日は、新生UWFの世界観を再現すべく、当時のメンバー全員に声を掛けてみよう」

 これは面白くなってきた。もうすでにヒートアップしている自分自身を抑えるのが大変である。

 

 大会名は『カッキーライド』。

 みんなの夢を乗っけて熱い大会にするつもりだ。

 

(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)


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