1964年の東京五輪は10月10日に開幕した。「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような素晴らしい秋日和でございます」。NHKアナウンサー北出清五郎の名調子は今も語り草だ。

 

 東京五輪開催を記念し、開会式の行われた10月10日を「体育の日」に指定したのは2年後の66年だ。「スポーツに親しみ、健康な心身を培う」ことを趣旨としている。以来、この日は全国各地で運動会やスポーツ大会が開かれるようになった。2000年に祝日法が改正され、現在では10月の第2月曜日が祝日となっている。

 

 国民に親しみのある「体育の日」を「スポーツの日」に改める改正案が、今秋の臨時国会にも提出される見通しだ。基本的に私は改正案に賛成だが、どうせならもう一歩踏み込んで「パラスポーツの日」にするのはどうか。

 

 というのも2020年に向け、良きにつけ悪しきにつけオリンピックの話題は至るところで耳にするが、パラリンピックについては“刺身のつま”のような扱いを受けているケースが少なくなく、あまねく浸透するまでには時間がかかると思われるからだ。

 

 先日も東京五輪・パラリンピックを盛り上げることを目的とした集会に参加したのだが、「オリンピックを成功させよう」と力説する政治家ばかりでパラリンピックについては埒外に置かれているような印象を受けた。その口ぶりからして含むところがあるようには感じられなかった。単に関心がないのだろう。ある意味、無関心者に興味を抱かせるのは無理解者を説得するよりも難しい。

 

 ところで祝日は法律で<美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い>と定められている。老人を敬う日があるのなら障がい者と一緒にスポーツを楽しむ日があってもいいのではないか。

 

 あまり知られていないがパラスポーツの中にはシッティングバレー、車椅子バスケットボールなど障がい者と健常者が一緒にプレーできる競技種目が少なくない。同じコートに立ち、ともに汗を流す。それこそは“心のバリアフリー”の一丁目一番地だろう。隗より始めよ、である。

 

<この原稿は17年5月31日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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