左右の両エースを欠いて、31勝20敗1分(6月1日現在)という戦績は見事の一語である。リーグ随一の強力打線がカープの好調を支えている。

 

 昨季、15勝をあげ沢村賞に輝いたクリス・ジョンソンは体調不良を理由に3月31日を最後に1軍のマウンドから遠ざかったままだ。

 

 5月24日には昨季、16勝をあげ最多勝を獲得した野村祐輔も「腰の違和感」を理由に登録を抹消された。

 

 過日、山本浩二に会った。ミスター赤ヘルは「ジョンソンと野村を欠いても、まだセ・リーグの首位。これは本当にチームに力が付いた証拠よ」と語っていた。

 

 ペナントレースの勝負どころは、まだ先である。畝龍実コーチは「長いシーズンを考えれば、しっかり治す方がいい」と語っていたが、そのとおりだろう。

 

 ジョンソンにしても野村にしても、昨季の疲れがまだ残っているのだろう。25年ぶりの優勝に向けた1球1球は、心身両面に重圧と負担をかけたはずだ。これは2人にとって、初めての体験だったのではないか。

 

 カープは1979年と80年に連覇を果たしているが、この時は抑えに江夏豊という絶対的な切り札がいた。セットアッパーには大野豊がおり、盤石なる勝利の方程式が確立していた。

 

 頼りになる先発が欠けても勝ち続けるためには、まずは後ろを安定させなければならない。その意味では、腰を痛めて一時、戦列を離脱していた中﨑翔太が戻ってきた意味は大きい。彼が試合の“関所”となる7回をピシャリと封じれば、かなり高い確率で勝利が望める。先発不足の投手陣は逆算式で再構築するのが現実的かつベターである。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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