5月から首位の座を守っていましたが、前期終盤に入り信濃グランセローズともつれた戦いになりました。今はうちが首位を奪い返し、残り2試合でマジック2(6月11日終了時点)です。向こうが負けるのを待つのではなく、「こっちが勝って前期優勝を決めてやろう」と、チーム全員、意気込んでいます。

 

 助っ人が野球に専念できる環境作り

 今季は外国人選手が計6人というこれまでにないチーム編成で開幕を迎えました。投手は新加入のアーレット・マバレ、エディソン・バリオス、オナシス・シレット、2年目のジョシュ・コラレスという4人。野手はBCリーグに2012年から在籍するジョニー・セリス、今年から加入のフランシスコ・ペゲロの2人です。

 

 勝つためにまず考えたのは、彼ら外国人選手が不安なく野球に専念できる環境を作ることでした。日本で初めてプレーするマバレ、ペゲロはもちろんですが、福岡ソフトバンクにいたバリオス、うちで2年目のコラレス、BCリーグに12年から在籍中のセリス、四国アイランドリーグplus徳島から来たシレットも含め、コーチ、通訳とともにコミュニケーションに気を配りました。

 

 私自身、メキシコの独立リーグでプレーしていたことがあります。向こうに行くまでは「言葉なんて関係ない。同じ野球だ。プレーすれば一緒だ」と思っていましたが、言葉が通じないとやはりプレーもしっくりこないんですよ。そのうちにプレーでもミスが出るし、ミスをした後も慰められてるのか怒られているのかも分かりませんでした。運良く通訳をつけることができましたが、そこからチームメイトと意思疎通がとれるようになって、すごくやりやすくなりました。

 

 環境作りの成果もあったのか外国人選手は期待通りの活躍を見せてくれました。投手陣は先発、抑えと盤石の体制を築けましたし、ジョニーは4番打者として7本塁打、32打点と十分に働いています。そしてペゲロは最初、4番に据えていましたが、彼を1番打者にしたことで打線に厚みが出ました。

 

 3番・河田直人と4番・ジョニーは本来のクリーンアップとして、そして下位打線の中村拓夢、和田康士朗が出塁して上位に回したときには1番のペゲロが"裏4番"として機能しました。下位打線からでも気を抜けないので、相手投手には相当にプレッシャーだったでしょうね。

 

 メンタルの成長を感じた3連戦

 私は富山の監督として4年目です。今季は最初に選手の顔ぶれを見たときに、新戦力も増えて随分とフレッシュだなと思いました。その分、チームとしてまとまりが出るのに時間がかかりましたが、オープン戦では投手陣が結果を残して、そして開幕してからは打線も上向いてきて、投手陣が打ち込まれても逆転をするという試合も増えてきました。

 

 それでも最初は勝率5割がようやくという感じだったのですが、5月の頭には首位に立つことができました。このあたりからチームに一体感が出てきた、まとまってきたと思ったものです。

 

 チームの変化を1番感じたのは先週(6月7日)、信濃に3連敗を喫して首位を奪われた後です。3連敗後、週末に3連戦が組まれていました。最初の群馬ダイヤモンドペガサスとの試合は、6回に1点差に迫られましたが8回に打線が爆発して8点をとり勝利しました。続く武蔵ヒートベアーズとの試合は先制を許す苦しい展開でしたが、打線がコツコツと反撃して7回に逆転しました。そして石川ミリオンスターズとの試合は先制点を奪われましたが4回に逆転。でもその直後に再逆転される苦しい展開でした。それでも最後は打線が奮起して3連勝を飾りました。

 

 このときベンチで選手を見ていると、すごく冷静だったんです。逆転されても慌てるわけでもなく、ミスをしてもうつむくことはありませんでした。自分たちのやることをきちんとやり、そしてチャンスをうかがっているのが手に取るようにわかったんです。

 

 常に選手には「いつも通りにやれ。でもそれが一番難しいんだぞ」と言っているのですが、その難しいことをシーズン終盤の大事な試合でやり遂げてくれましたね。技術はもちろんですがメンタル、精神面でもすごく成長したのを実感しました。

 

 あとは前期優勝を果たすだけです。そしてすぐに後期が始まります。後期はこれまで使っていなかった選手を起用するなど育成面も力を入れていきたいですね。そのためにもまずは前期優勝です。残り2試合(6月17日、18日)を勝って自力で決めたいですね。応援よろしくお願いします。

 

吉岡雄二(よしおか・ゆうじ)>:富山サンダーバーズ監督
1971年7月29日、東京都生まれ。帝京高校3年時にはエースとして春夏連続で甲子園に出場。夏は全5試合に登板し、3完封と優勝に大きく貢献した。打者としての素質も高く、高校通算本塁打数は51本を数えた。90年ドラフト3位で巨人に入団するも、右肩を手術。4年目の93年から内野手に転向した。97年オフ、交換トレードで近鉄へ。01年には26本塁打、85打点を放ち、リーグ優勝に貢献。02年はオールスターに出場し、03年は初の打率3割をマークする。04年の球団合併に伴い、新規参入の東北楽天に移籍した。09年からはメキシカンリーグでプレーする。10年オフに現役を引退。翌年、アイランドリーグ・愛媛の打撃コーチに就任。14年から富山の監督を務める。 昨シーズンは後期地区優勝を果たした。


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