23年前、W杯米国大会を取材した際に宿泊したのと同じロサンゼルスのホテルに滞在している。確か、あのころは部屋のテレビでNHKの国際放送が見られた記憶があるが、今回はどうしてもチャンネルが見当たらない。中国語のチャンネルは複数あるにもかかわらず、である。

 

 さて、テヘランで戦った我らが日本代表は、痛いというべきか、はたまた貴重なというべきか、見る人によってとらえ方が真っ二つに分かれる引き分けに終わったという。次のオーストラリア戦に勝てば6大会連続の本大会出場が決まる一方、ここで敗れるようなことがあれば、運命は敵地でのサウジアラビア戦にかかることとなる。名前ばかりのアウェーだったイラク戦とは違い、大観衆の声援を受けて戦うサウジは相当に手強(てごわ)いはず。日本にとって、ホームでのオーストラリア戦は掛け値なしで「絶対に負けられない戦い」とやらになった。

 

 だが、日本が置かれているのが「油断ならない状況」だとしたら、もはや「絶体絶命」と評してもいい苦境に追いやられたのがお隣韓国である。

 

 思えば、彼らが近年でもっとも危機的状況に追いやられたのは、日本では「ドーハの悲劇」として知られるW杯米国大会だった。アディショナルタイム、オムラムのシュートが松永の守るゴールに吸い込まれていなかったら、86年メキシコ大会から始まった彼らの連続出場は2で止まっていた。あの時以来、アジアでの韓国が崖っぷちまで追い込まれたことはない。

 

 ただ、今回の状況も相当に厳しい。残り2戦となった段階での順位は2位ながら、残る相手が首位のイランと3位のウズベキスタンである。

 

 すでにイランは本大会出場を決めているとはいえ、韓国はなぜか伝統的にこの相手に分が悪く、テヘランでの一戦でも敗れている。さらに、今回の予選での彼らはここまでのアウェー4試合でわずかに勝ち点1しかあげることができておらず、初の本大会出場に燃えるウズベキスタンとの一戦は、恐ろしく難しいものとなろう。4位につけているシリアの結果次第では、プレーオフどころかまさかの敗退すらありうる。

 

 ちなみに北中米カリブ海の予選も行われる。変則的な日程のため、ここまで苦戦が続いている米国の試合は行われないが、他国の結果次第では彼らもまた絶体絶命の状況に追い込まれる。何やら、世界のサッカーシーンで少しずつ地殻変動が起きつつあるような、そんな気がしてきた。

 

 ただ、いまのところこちらのチャンネルではサッカーの予選について特集している番組にはお目にかかれていない。テレビでMLSを見ていると、米国にもサッカーが根付いてきているな、と感じていたのだが。

 

 さて、それではスポーツバーにでも出かけますか。

 

<この原稿は17年6月15日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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