今季の交流戦、パ・リーグが56勝51敗1分と勝ち越しました。これで8年連続して"パ高セ低"ですが、今季はセ、パでそう大きな差はなかったと感じました。

 

 選手層の厚みの差

 これまでセ、パの交流戦における差はDHの有無から生じているとされていました。DHを前提にした編成をしているパ・リーグと、代打の一番手をDHに入れるのが最善手のセ・リーグではパ主催試合で戦力に差が出て当然と言われています。今季は広島が最後の最後まで最高勝率を争いました。直接対決の戦績で"優勝"は逃しましたが、福岡ソフトバンクと並ぶ12勝6敗は文句なしの数字です。

 

 広島のように選手層の底上げができているチームは、やはり強いということを実感しました。新井貴浩、松山竜平、ブラッド・エルドレッドなどDHがあれば強打者を揃ってスタメンで使える上に、今季は4番に鈴木誠也が定着しました。チームの中で選手が育っているかどうか、交流戦はそれを確認する場でもありますね。

 

 一方、巨人、東京ヤクルト、北海道日本ハム、千葉ロッテと下位に沈んだチームはケガ人が多く、ベストな戦力が組めないことが影響しました。編成、育成を含めて第2、第3のスタメン選手、バックアップを揃えることがこれからの課題でしょう。ソフトバンクは投打に多くの故障者がいますが、それでも最高勝率でした。選手層の厚さ、育成のうまさなど他球団が見習う点は数多くあります。

 

 広島包囲網を敷け!?

 交流戦明けからオールスター前まで、セ・リーグは広島の独走を許さないために他5球団の奮起が求められます。広島戦を中心にして先発ローテーションを組むのか、それともこれまで通りのローテーションを崩さずにいくのかがポイントです。広島中心のローテを組んだ場合、他球団との対戦で取りこぼす危険性があります。裏ローテと表ローテ、その投手力をしっかりと見極めた先発起用が求められますね。

 

 広島は中崎翔太が復帰して試合後半を安心して任せられる体制が整いました。広島を2位で追う阪神もラファエル・ドリス、マルコス・マテオ、桑原謙太朗、高橋聡文と試合後半に登板させるピッチャーは安定しています。残りの前半戦、そして後半戦と広島と優勝争いをするには先発陣の奮起が必要ですね。ランディ・メッセンジャーは安定して長いイニングを任せられますが、秋山拓己、能見篤史らがいかに毎試合、ゲームを作れるかどうか。藤浪晋太郎がファーム調整中で先発の駒が足らない阪神が優勝を目指すにはそこがポイントでしょう。

 

 交流戦を終えて阪神と広島のゲーム差は3でした。前半戦を終えて5ゲーム差以内であれば優勝争いは可能というのが球界の定説です。まあ実際にプレーしている選手はゲーム差は気にしていないんですけどね。目の前の試合を勝つ、負けたら連敗をしないようにする……と、日々切り替えて戦っていますから。選手や監督が「ゲーム差は気にしていません。目の前の試合を頑張るだけです」とよくコメントしていますが、あれは本心です。ゲーム差は最後の最後、優勝が見えてきて初めて気になる程度のものですね。

 

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商、近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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