第3回WBCは18日、準決勝で日本代表がプエルトリコ代表に1−3で敗れ、決勝進出を逃した。日本は初回に1点を先行されると、7回にアレックス・リオスに手痛い2ランを浴び、3点のビハインドを背負う。日本は8回に1点を返したものの、反撃及ばず、3連覇への道を閉ざされた。

 前田、5回1失点の好投も報われず(AT&Tパーク)
プエルトリコ代表    3 = 100000200
日本代表         1 = 000000010
(プ)○M・サンティアゴ−デラトーレ−セデーニョ−フォンタレス−ロメロ−Sカブレラ
(日)●前田−能見−攝津−杉内−涌井−山口
本塁打 (プ)リオス1号2ラン
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 痛恨のプレーだった。
 8回、井端弘和のタイムリーで2点差に詰め寄り、なおも内川聖一が続いて1死一、二塁のチャンス。打席には4番の阿部慎之助が入っていた。2球目、二塁走者の井端と一塁走者の内川がスタートを切る。ダブルスチールで一気に一打同点の場面をつくりだす作戦だ。

 しかし、ベンチの指示が不徹底で、井端は途中で走るのをやめて帰塁。内川はそのまま走り、二塁付近で2人のランナーが重なるかたちとなる。これを見たプエルトリコのキャッチャー、ヤディアー・モリーナはそのままボールを持って一、二塁間上の内川を追い詰め、タッチアウト。貴重な同点のランナーがいなくなり、日本の反撃ムードはしぼんだ。

 痛恨の1球だった。
 0−1と1点ビハインドの7回、無死1塁。2番手の能見篤史がアレックス・リオスに投じた3球目のチェンジアップが甘く入る。失投を逃さなかった右打者の一振りはレフトスタンドへ。能見はその前のマイク・アービレイスに高めに浮いた球をライト前へ打ち返されていた。思い切って他のピッチャーに代えてもよい展開だったかもしれない。いずれにしても日本にとっては重すぎる2点がスコアボードに刻まれた。

 野球はミスをした方が負ける。一流選手が一発勝負でしのぎを削る舞台であれば、それはなおさらだ。この日の日本は流れを自らに引き寄せられず、終戦を迎えた。

 先発の前田健太は役割は十二分に果たした。立ち上がりはアウトコースへの際どい球を主審にほとんどボールと判定され、1死からアービング・ファルー、カルロス・ベルトランと8球連続ボールで連続して歩かせてしまう。4番のモリーナこそスライダーで3球三振を奪ったが、続くマイク・アービレイスにインコースのスライダーを詰まりながらもセンターへ運ばれる。二塁走者が生還し、先取点を許した。

 だが2回以降、前田はランナーを出しながらも踏ん張る。2回はカルロス・リベラに一、二塁間を破られたが、次打者の送りバントを二塁で封殺し、ピンチの芽を自ら摘み取る。3回もアンヘル・パガンに三遊間を突破されながら、エンドランを仕掛けたファルーの打球を前田が捕球し、素早く二塁へ。ダブルプレーを完成させた。5回は2死からヘースス・フェリシアーノにヒットを許すも、二盗を阿部が刺して追加点を与えない。

 この力投に応えたい打線は、プエルトリコ先発のマリオ・サンティアゴの手元で沈む変化球に苦しめられた。3回まではひとりの走者も出せず、ノーヒット。4回に井端がセンター前ヒットでようやく出塁したものの、3番の内川、4番の阿部が自分のバッティングをさせてもらえず、反撃できない。

 日本の大きなチャンスは5回だった。先頭の坂本勇人がセンター前へ運び、初めて無死から走者を出す。糸井嘉男は送りバントを失敗したものの、なんとか一、二塁間へ転がして走者を進める。続く中田翔の打席でサンティアゴにアクシデントが発生。右ヒジ痛を訴えてピッチャーがホセ・デラトーレにスイッチする。

 この機に乗じたい侍ジャパンだったが、緊急登板でコントロールが定まらないデラトーレに対してボール球に手を出してしまった。中田が歩いて一、二塁と走者がたまった場面で、稲葉篤紀がワンバウンドの変化球に空振り三振。続く松田宣浩も追い込まれてからスライダーにタイミングが合わず、連続三振に切ってとられた。

 6回は2死から内川が放ったセンター前の打球をパガンが捕り切れず、後ろへ逸らす。三塁打となり、打席には4番・阿部。プエルトリコベンチも左のゼイビア・セデーニョを送り出し、勝負をかけてきた。左対左も苦にしない阿部だが、追い込まれてからスライダーにバットが空を切る。中盤のチャンスで追いつけなかったことも試合を苦しくさせた。

 ただ、日本投手陣は追加点を奪われた7回以降、必死の継投で守り切った。能見が2ランを打たれた後は攝津正が登板。2死から一、三塁と走者を背負うと、杉内俊哉が救援し、ファルーをサードゴロに仕留めて切り抜けた。

 さらに8回はエラーと四球、ヒットで1死満塁の大ピンチ。ここで山口鉄也がマウンドに上がる。決して今大会本調子ではなかった左腕が、圧巻のピッチングをみせた。左バッターのリベラに対し、アウトコースいっぱいのストレートで見逃し三振を奪えば、アンディ・ゴンザレスは落ちる球で力ないファーストゴロに打ち取る。2次ラウンドの台湾との初戦でも投手陣が粘り、終盤の逆転勝ちへつなげた。その再現へムードが高まっていただけに、悔やまれる直後の8回裏の攻撃だった。

「選手は本当によくやってくれた。国際大会の経験はこれからの野球人生、シーズンにもプラスになると思う」と試合後、山本浩二監督はメンバーをねぎらった。ここまでの道のりは平坦ではなかった。参加か不参加で揺れ、監督人事も難航した。代表入りを打診したメジャーリーガーにはことごとく参戦を断られた。

 そんな中、日本のプロ野球から集まった28名の選手たちだ。最初の実戦では若手投手陣の広島相手に0−7の完敗を喫した。主力と目された選手の不調や故障にも悩まされた。それでも指揮官が「第2ラウンドからチームがまとまってきた」と明かすように、苦境を乗り越えてチーム力を高め、当初の目標に掲げていた「アメリカ行き」を達成した。

 3大会連続で決勝ラウンドに進出した国・地域は日本しかいない。「NPBの選手だけでも、これだけやれるんだというのを世界に見せられるチャンス」と主将の阿部は語っていた。3連覇はならずとも、日本のレベルの高さは示せたはずだ。

 この戦いを4年後へ、いかにつなげるか。代表常設化を決めているNPBの舵取りが何よりも問われることになるだろう。今回の侍ジャパンの中には4年後の主力となり得る若手も多い。29日に開幕する日本のプロ野球は、再び世界の頂点に立つための新たなスタートである。

(石田洋之)

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