1日、明治安田生命J1リーグ第17節の大宮アルディージャ対横浜F・マリノスがNACK5スタジアム大宮で行われ、2-1で横浜FMが勝利した。試合は後半14分にMFマルティノスのゴールで横浜FMが先制すると、23分にはDF山中亮輔が追加点を決める。33分には大宮のDF菊池光将に1点を返されるが、横浜FMが逃げ切った。横浜FMは今季初のリーグ戦5連勝。また、この試合で横浜FMのDF中澤佑二が140試合連続フル出場を果たし、フィールドプレーヤーの最多記録を更新した。

 

 5連勝で暫定4位浮上(NACK5スタジアム大宮)

大宮アルディージャ 1-2 横浜F・マリノス

【得点】

[横] マルティノス(59分)、山中亮輔(68分)

[大] 菊池光将(77分)

 

 中澤は前節のヴィッセル神戸戦で連続フル出場の記録を139に伸ばし、浦和レッズのMF阿部勇樹の記録に並んでいた。39歳のベテランセンターバックは今日も両膝をテーピングで固めてピッチに立ち、時に知的に、時に体を張ってゴールを守った。

 

 まずは22分の場面だ。大宮のFW江坂任にペナルティーエリア内でボールを持たれる。江坂と対峙した中澤は無理にボールを奪いに行かなかった。うまく相手との距離を取りつつ、ゴール方向のコースを遮断。時間を稼ぎ、味方の帰陣を待った。そして守備的MF中町公祐にボールを奪わせてピンチをしのいだ。

 

 23分には大宮にカウンターを食らう。FW大前元紀がペナルティーエリア内左サイドからシュートモーションに入った。しかし、中澤がタイミングとコースを見切ってスライディングブロック。ここでも中澤は強引にボールを奪いに行かず、かわされるリスクを避け、相手にシュートを打たせたような知的な守備だった。その後も、身振り手振りでチームメートを鼓舞し、前半を無失点で終えた。

 

 後半に入ると、中澤は攻撃面でもチームに貢献した。14分、大宮に攻め込まれるが中澤が間一髪のところでボールを奪い、センターサークル付近にいたFWウーゴ・ヴィエイラへロングフィードを供給。ヴィエイラはトラップで反転し、左サイドを駆け上がるマルティノスにパスを送る。マルティノスはドリブルで内側に切り込みDFをかわし、ペナルティーアーク付近で右足一閃。グラウンダーのシュートはゴール左に突き刺さった。ゴールの起点となった中澤は、右手でガッツポーズをつくり、喜びを爆発させた。

 

 9分後には、山中の強烈な左足ミドルがゴール右に決まり、2-0。リードを広げた横浜FMだが、徐々に大宮のリズムになってしまう。不用意なミスからボールを失い、ピンチを招くシーンが散見した。33分にはセットプレーから菊池に頭で決められた。バタつく若手を中澤が落ち着けと、なだめる姿が多く見られた。

 

 中澤はボールを呼び込み、無理をせずゆっくりと自陣でボールを回した。冷静な判断でチームの狂い掛けた歯車を修正。その後はうまく時間を使いながら、時計の針を進め、タイムアップ。2-1で横浜FMが逃げ切り、中澤の140試合連続フル出場を勝利で飾った。

 

 試合後、横浜FMのエリク・モンバエルツ監督は「ボンバー(中澤)におめでとうと言いたい。世界的に見ても素晴らしい記録」と称えた。

 

 警告を受けやすいセンターバックというポジションで、この記録は快挙である。しかし、当の中澤は連続フルタイム出場にこだわりはない。

「僕が欲しいのは個人の記録よりもマリノスのタイトル。まずは、タイトル獲得を達成して、おまけで僕の記録がついてくれば一番良い」

 

 これだけ長く試合に出続けられる秘訣を問われると、「毎日、飯を食って練習して寝て、監督にごまをする(笑)」とジョークを飛ばし、ベテランの余裕を見せた。

 

  中澤はプロサッカー選手の夢を捨てきれず、高校卒業後にサッカー留学でブラジルへ渡った。帰国後は東京ヴェルディの練習生から這い上がった苦労人。得意のヘディングで名を売り、日本を代表するセンターバックとなった。来年には不惑を迎えるが、まだまだプレーに衰えは見られない。

 

(文/大木雄貴)