福井ミラクルエレファンツは前期3位に終わりました。優勝できなかったことは当然、悔しいです。でも先発の軸として頑張った濵田俊之が前期MVPに選ばれたのは嬉しかったし、彼の励みにもなると思います。

 

 度胸のある前期MVP濵田

 濵田の持ち味はなんといっても気持ちの強さと、そこからくるマウンド度胸の良さですね。彼は信濃グランセローズを戦力外になって昨シーズン、うちのチームに加わりました。来た当初はそんなに強気のピッチャーには思えなかったんです。というのもフォームが崩れていて思うようなボールがいかなかったんですね。それで自信をなくしている部分もあった。だからフォームの修正から始めて、フォームができあがるとそれで自信を取り戻したんでしょう。15年は信濃で1勝もできませんでしたが、昨シーズンは21試合に投げて6勝。完投も3つ記録しました。そして今季は前期だけで7勝。リーグトップの成績をあげたので前期MVPも納得ですね。

 

 昨シーズンは毎回ランナーを出す不安定さがありましたが、今シーズンは成長してそういう面も見られなくなりました。あと気になる点をあげるとすれば本人も課題にしていますが、夏場の体力、スタミナですね。昨夏は目に見えて調子を落としていたのがわかりましたが、今年はまだ大丈夫です。それに本人も練習の間にトレーニングを積極的に取り入れるなど夏場対策は十分にしているのでこの夏は大丈夫でしょう。いずれにしても後期優勝のためには濵田の前期同様の活躍が不可欠ですね。

 

 濵田とともに先発陣の柱と期待しているのが岩本輝です。阪神を戦力外になって今季から福井に入団しましたが、前期3勝とちょっと数字が物足りなかった。優勝した富山GRNサンダーバーズとは2ゲーム差ですから「岩本があと2、3勝していればなあ……」と思ったりもしましたよ(笑)。それとイム・テフンも2勝ですから、彼らには後期はうんと頑張ってもらわないと。

 

 現役時代は全試合「完全」狙い

 うちは抑えの藤岡雅俊が安定しているのでゲーム後半までいかにリードを保つかがポイントです。そのためにも先発陣は最少失点でゲームを作ってほしいですね。

 

 投手陣には「打線は水物。いつも援護があるわけじゃない。自分たちが3点以内に抑えることを目標に投げなさい」と言っています。あとは基本を大事にしろ、ということですね。「先頭打者を打ち取る」「無駄なフォアボールを出さない」。この2つを気をつけるだけで勝率はグンと上がりますから。まあ常にできるわけではありませんが、それを意識することが大切です。試合ではもちろん、練習でもそのことを意識して投げれば身につきますから。

 

 私は現役時代、ロッテにいました。来日して5年連続で二桁勝利を記録しましたが、マウンドに上がるときはいつも完全試合を狙ってたんですよ。それでパーフェクトが崩れたら、今度は完封。それがダメだったら完投……という気持ちで投げていました。特に私が先発に定着した87年以降はチーム打率が2割6分くらいで、そんなにガンガン打つチームではなかった。あまり援護は期待できなかったんですよ(笑)。でも「だったらこっが0点に抑えてやる。それなら負けることはないだろう」と、奮い立ったもんですよ。福井の投手陣にもその気持ちでマウンドに上がってほしいですね。

 

 後期は絶対に優勝したいですね。私の生まれた台湾で「頑張れ」は「加油(ジャーヨウ)」と言います。選手とともに頑張りますので、ぜひ「加油! 加油!」と応援よろしくお願いします。

 

<荘勝雄(そう・かつお)>:福井ミラクルエレファンツ投手コーチ
1959年2月1日、台湾・台南市出身。84年、ロサンゼルス五輪に出場し、郭泰源と両輪の活躍で銅メダルを獲得。85年、世界選手権ではMVPに輝いた。85年、ロッテ(現・千葉ロッテ)に加入し、5シーズンにわたって2桁勝利をマークした。91年12月に日本に帰化し、95年に現役を引退した。以後、千葉ロッテ、江蘇(中国)、ラミゴ(台湾)で投手コーチを務めて、14年から福井ミラクルエレファンツの投手コーチに就任した。NPB11年で通算70勝83敗33セーブ。オールスター出場1回(85年)。


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