23日、ボクシングのダブル世界タイトルマッチが東京・大田区総合体育館で行われた。WBA世界ライトフライ級タイトルマッチは王者の田口良一(ワタナベ)が同級1位のロベルト・バレラ(コロンビア)を9ラウンドTKOで下し、V6を達成した。IBF世界ミニマム級タイトルマッチでは同級9位の京口紘人(ワタナベ)は王者ホセ・アルグメド(メキシコ)を判定で破り、プロデビュー8戦目でベルトを奪取した。

 

 ライトフライ級最強へ、また一歩

 

 田口が統一戦への道を自らの拳で拓いた。

 

 序盤から仕掛けてくるチャレンジャーの強打に手を焼くかと思われたが、「前回が不甲斐なかったので1ラウンドから払拭したかった」と田口もボディを軸に応戦した。昨年末に行われたV5戦は引き分け防衛と納得のできる結果ではなかった。田口は右に左にとスイッチしてくるバレラにもうまく対応。的確なブローがコロンビアからの刺客の腹をとらえる。そのダメージの大きさは徐々にスピードを失っていることを見ても明らかだった。

 

 田口は中盤以降もラッシュを仕掛け、ロープ際へ追い込んでバレラをキャンバスへと沈めようとしたが、挑戦者は1度も倒れない。それでも田口のパンチが効いているのは明白。ダウンを奪えぬまま迎えた9ラウンドに決着はついた。ラウンド序盤からラッシュ。24秒でレフェリーが2人の間に割って入る。試合を終えるゴングが鳴り響いた。

 

 終始相手を圧倒してのKO劇。田口本人は「自分の中では圧勝ではなくきつい試合でした」と振り返る。3年半以上もの間、守り続けるWBAのベルト。通算戦績は26勝(11KO)2敗2分けとなった。30歳の王者は“最強”を目指す。

 

 試合後にはWBO王者の田中恒成(畑中)がリングに上がり、統一戦の機運はさらに高まった。田口が「強い相手とやりたい。願ってもないことです」と口にすれば、田中も「最強の相手だと思いました。9月の防衛戦に勝って年内向き合えることを望んでいます」と応えた。

 

 打ち合い制し、輝いた新星

 

 23歳の京口はデビューからわずか1年3カ月で世界のベルトを掴んだ。

 

 序盤から大振りのアルグメド、効果的にパンチを当てていく京口。打ち合いの様相を呈しながらラウンドを進めていった。京口はここまで7勝中6KOのハードパンチャー。時折、アルグメドはキャンバスに尻餅を付くなど、足にきている様子が見えた。

 

 9ラウンド残り1分を切ったところで、京口の飛び込んだ左フックで王者から血しぶきが舞う。そのままラッシュを仕掛け、最初のダウンを奪った。このまま倒し切りたいところだったが、アルグメドもなんとかこらえてゴングを聞いた。

 

 10ラウンド開始直後に観客を煽る京口。しかし今度はチャンピオンが意地を見せた。これまで以上の大振りで逆転KO勝ちを狙いにきた。ダメージは確実に残っているものの、京口に畳み掛けさせなかった。

 

 死力を尽くした36分間。12度目の終了のゴングが鳴ると、大きく勝利をアピールしたのは京口だった。2人のジャッジが116-111、1人のジャッジが115-112で京口を支持し3-0。ユナニマス・デシジョンで京口が戴冠した。

 

 プロ8戦目での王座奪取は中学時代に指導を受けた元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎に並ぶ国内歴代4位タイのスピード記録だ。2016年4月デビューの新星・京口が日本人世界王者としてその名を刻んだ。

 

(文/杉浦泰介)