(写真:那須川<左>はRIZIN参戦4試合すべてでKO、一本勝ちを収めている)

(写真:那須川<左>はRIZIN参戦4試合すべてでKO、一本勝ちを収めている)

 30日、格闘技イベント「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017 バンタム級トーナメント 1st ROUND -夏の陣ー」がさいたまスーパーアリーナで行われた。那須川天心が才賀紀左衛門とキックボクシングルールとMMA(総合格闘技)のミックスルールで対戦。那須川は得意のキックボクシングルールとなった1ラウンドで1分36秒のKO勝ちを収めた。バンタム級トーナメントは、この日勝利した堀口恭司、大塚隆史、カリッド・タハ(ドイツ)が2nd ROUND進出を果たした。

 

 その他では矢地祐介が北岡悟にTKO勝ち。レスリングの元世界女王の山本美憂がRIZIN3戦目で初勝利を挙げた。RIZIN初参戦となった真珠・野沢オークライヤーは腕十字で一本勝ちした。真珠はタレント野沢直子の長女。KINGレイナは判定勝ちだった。

 

「格闘技の魅力が詰まった大会だった」

 RIZINの榊原信行実行委員長は今大会を総括した。中でも「圧倒的な存在感を放っていた」のが那須川と堀口だ。那須川はキックボクシング界で“神童”と呼ばれる逸材。堀口はUFCで活躍し、現在もアメリカン・トップチームに拠点を置いている。新星と巨星ーー。RIZINの目玉商品とも言える軽量級ファイターが眩いばかりの輝きを見せた。

 

(写真:カクテル光線を浴びて入場する那須川。対戦した才賀は「スターやな」と感じたという)

(写真:カクテル光線を浴びて入場する那須川。対戦した才賀は「スターやな」と感じたという)

 先に登場した那須川の対戦相手は才賀。那須川にとっては教えを受けたこともある空手をルーツにする格闘家の先輩だ。現在はMMAを主戦場にしているが、元々はKー1の舞台で活躍した立ち技系ファイターである。1ラウンドはキックボクシングルール5分、2ラウンド目はMMAルールというMIXルールで戦った。

 

 那須川は矢沢永吉の『止まらないHa~Ha』に乗ってリングに上がった。試合は2分ともたなかった。那須川の右ジャブを受けた才賀が膝蹴りを見舞おうとした。しかし、彼の左膝が届くより先に那須川の左ストレートが才賀の顔面を撃ち抜いた。

 

 電光石火のワンツーが炸裂し、那須川は左拳を天に掲げた。才賀はそのまま大の字でキャンバスに沈むと、立ち上がることはなかった。1分34秒の鮮やかなKO劇は那須川天心強しをさらに印象づけるものだった。

 

「昔から(才賀)紀左衛門さんにお世話になっていてやりづらかった」と那須川。「でも試合をするとなれば、やるかやられるかの戦い。僕はぶっ倒すつもりで練習してきました」と語った。

 

 一方の才賀は「スピード、パワー、バランスすべてが強い。まともにKO負けしたのは初めてだった。あんなに差があるとは思っていなかった」と完敗を認めた。「今までKー1で上の階級の人ともやってきたんですが、別格に強い」と舌を巻いた。

 

「RIZINでキックもMMAでも活躍できれば、このリングを最高のものにできると思っています。僕は本物を目指して強い敵と戦っていきたい」

 18歳の若きファイターは1万人を超える観客の前で誓った。

 

(写真:豪快なKO勝ちを収めた堀口。リング上でも優勝宣言が飛び出した)

(写真:豪快なKO勝ちを収めた堀口。リング上でも優勝宣言が飛び出した)

 大会のトリを務めたのが堀口である。RIZINの今年の柱である軽量級戦線。バンタム級トーナメント1回戦で、堀口vs.所という好カードを実現させた。アメリカからバンタム級の頂点を決める戦いに参戦した堀口。フライ級から1階級上げて挑む。

 

 それでもUFCでタイトルマッチに挑戦するなど実績を残している堀口がトーナメントの大本命だ。そんな26歳のストライカーに対し、今年8月に不惑を迎える所が得意の寝技に持ち込めるかがカギだった。

 

 タックルでテイクダウンを奪うのではなく、立って堀口を迎え撃った所。堀口は「もっと組ついてくると思った。打撃に付き合ってくれてありがたかった」と振り返る。

 

(写真:堀口のパウンドを浴びる所。「圧倒的にやられてしまった」とコメント)

(写真:堀口のパウンドを浴びる所。「圧倒的にやられてしまった」とコメント)

 すると「当たれば倒れると思っていた」という堀口の右フックが所の頭部を襲う。ダウンを奪ったところで一気に畳み掛け、パウンドを叩き込む。レフェリーが2人の間に割って入り、1ラウンド1分44秒で試合を止めた。

 

 堀口の次の対戦相手は未定だが「誰が来ても受けて立つ」と気にはしていない様子。「しっかり優勝しないとRIZINが盛り上がっていかない」とタイトル奪取しか見ていない。主役を誰かに譲るつもりはないようだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)