皆さん、夏ですね! 夏と言えば高校野球。そう、甲子園です。私も33年前、1984年に宮崎県代表、都城高校の投手として甲子園に出場しました。「西のPL、南の都城」と優勝候補にも挙げてもらえるいいチームでした。

 

 さてそのときの昔話をひとつしましょう。甲子園初戦の3日前の練習時のことでした。2時間あった練習時間でしたが、監督が突然キレて1時間と少しで終了。そのままバスに乗り込み、不安を抱えたままバスで宿舎に向かいました。車中では「ボス(監督)がキレてる」「何も言わないけど何が待ってるんだ」と部員たちはボソボソと話していました。それで宿舎に到着したと同時に監督からの恐怖の一言。「全員、駐車場で座ってろ!」と。

 

 座れイコール手を後ろに回して正座なので、練習後なのに着替えもせず、すぐに整列して正座をしました。1時間経っても2時間経っても監督は出てきません。駐車場の外にはファンの女の子たちがいて、「田口君たち、どうしたんだろう」と不安顔。もちろん自分たちも「監督、どうしたんだろう」と不安顔でした。途中部長が出て来られファンの子には帰るよう伝えて、自分たちの所にやってきて「もうすぐ監督が来るから辛抱しろ」と言われてホッしたものの、監督が出てきたのはそこから約1時間後でした。片手にはノックバットを持っていて、「やばいなぁ~」と思っていたら案の定、エースの自分とキャプテンに集中的にお説教が始まりました。

 

 ノックバットのグリップで頭をコンコンと叩かれ続け、痛いから叩かれる場所を変えるため頭を動かすと、頭の動きに合わせてコンコンと叩いてくる。説教が終わったのは2時間くらい後だったでしょうか。駐車場で合計5時間の正座と、それでいただいたお説教の理由は「気合いが抜けてる」とのことだった気がしますが、ずっと頭をコンコンされていたのでよく覚えていません……。

 

 相当に叩かれたので鏡で頭を見ると、坊主頭がタンコブで角刈りのようになっていました。キャプテンと2人で顔を合わせ大笑い。それを見て他の部員も大笑い。いやー、懐かしい夏の思い出です。まあ今の時代なら大問題でしょうけどね(笑)。

 

 代表監督の選考基準は?

 さて今回は先日、発表された侍ジャパンの監督選びについて述べましょう。批判的なことも書きますが、選ばれた稲葉篤紀監督個人について一切批判をするつもりはありませんのでご了承ください。

 

 今回の監督選考には人選やその過程を含めて、疑問視されてる方も多いのではないでしょうか。実際自分の周りの方々も「何でなの?」と聞いてくる方がとても多いです。納得1割、疑問9割というところでしょうか。

 

 私も含めて「なぜ?」と思ってる人は、そもそも一度も監督を経験していない人を日本を代表するチームの監督になぜ選ぶのかと疑問に感じています。しかも今年のWBCまで指揮を執った監督に続けて、監督未経験者が連続して選ばれました。

 

 一体、どういう課程で誰が選んでるか。メディアの報道によれば「選手に対する求心力」「国際経験」「五輪や世界大会への熱い思いがある」という理由があげられていました。本当に2020年のオリンピックで金メダルと狙おうと思っているのでしょうか? そう感じているのは自分だけではないでしょう。

 

 なぜ、こんなことが起きるのか。その答えは皆さんもお分かりのことだと思いますが、監督選考にはっきりとした基準がないからです。日本を代表するチームを率いて優勝を目指すならば、最低条件としてプロ野球で監督経験があり、それに加えて代表選手をモチベートでき、客観的に試合を分析し、チームを導ける人間を選ぶのが普通だと思います。

 

 そうしたスキルを持っているのはやはりプロ野球でチームを日本一に導いていた人物ではないでしょうか。日本一にはなれなくてもリーグ優勝経験のある監督もたくさんいると思います。本気で勝ちを目指すなら外国人監督の招聘も選択肢のひとつです。

 

 こういうときにうらやましいな、と思うのはサッカーの日本代表監督です。あちらはあちらで選考結果に不満が出ることもありますが、日本サッカー協会はワールドカップで本気で優勝を考えてるから、常に指導者として実績のある人物を監督として招聘しています。またラグビーでは日本代表ヘッドコーチに名将のエディ・ジョーンズ氏を招聘して大活躍を果たしたのは記憶に新しいところです。

 

 こうしたことを考えると監督での指導経験がない人物を日本代表の監督に選んだことは、将来のためにもどうなのでしょうか。今回の監督がどんな結果を出すかはわかりませんが、結果がどうこうではなく、これからのために監督選びの基準を明確にすることが大事ではないでしょうか。誰もが応援したくなるチーム作りをする。そのために何をすべきなのかを今から考えるべきでしょうね。

 

 さて最後に個人的な事ですが、この夏、甲子園のマウンドに立つ投手たちをフェイスブックで評価してみようと思います。プロ注目の投手が本当にプロで活躍できるのか、荒削りだけど素材として魅力のある投手がいるかどうか。また1年生や2年生の投手が投げれば来年がより楽しみかどうか、など。私ならでは視点での評価をしてみようと思っています。お楽しみに!

 

1600314taguchi田口竜二(たぐち・りゅうじ)
1967年1月8日、広島県廿日市市出身。
1984年に都城高校(宮崎)のエースとして春夏甲子園出場。春はベスト4、夏はベスト16。ドラフト会議で南海ホークスから1位指名され、1985年に入団し、2005年退団。現在、株式会社白寿生科学研究所人材開拓グループ長としてセカンドキャリア支援を行なっている。

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