現地時間12日、世界陸上競技選手権ロンドン大会9日目が行われた。男子400mリレー決勝は日本が38秒04で3位に入り、銅メダルを獲得した。今大会日本勢、初の表彰台。世界陸上同種目でのメダル獲得も初の快挙だった。地元イギリスが37秒47で優勝。2位は37秒52でアメリカが入った。4連覇中のジャマイカは、アンカーのウサイン・ボルトのレース中のケガにより棄権となった。

 

“お家芸”のバトンパスでリオデジャネイロ五輪に続く世界大会でのメダルを獲得した。

 

 日本は多田修平(関西学院大)、飯塚翔太(ミズノ)、桐生祥秀(東洋大)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)で臨んだ予選。第1組に登場し、38秒21で3着に入った。着順での予選通過を決め、決勝へとコマを進めた。迎えた決勝はアンカーのケンブリッジに代えて藤光謙司(ゼンリン)を起用。100mのベストタイムでは10秒0台の4人比べると劣るが、31歳のベテランはリレーでの経験は豊富だ。14年世界リレー選手権での銅メダル獲得に貢献している。

 

 日本は大外9レーンに位置した。第1走は多田。今シーズン急成長を遂げた若手だ。5月のゴールデングランプリ川崎ではジャスティン・ガトリン(アメリカ)を驚かせたスタートが持ち味である。世界陸上初出場ながら100mでも準決勝進出を果たした。リレーでも武器のスタートは健在。上位で第2走の飯塚にバトンを渡した。

 

 リオ五輪での快挙に貢献した飯塚、桐生は上位をキープしたままアンカーへとバトンを渡す。先頭争いをするイギリスとアメリカからは離されたが、最後の直線勝負で3、4番手だった。メダル争いの相手はボルトのジャマイカだ。藤光は桐生からバトンを受け取ると懸命に走った。

 

 すると、ここでまさかのアクシデントが起こった。バトンを受け取ったボルトが、加速しようとした直後に足を痛め、トラックに倒れ込んだ。ロンドンの地をラストランに選んだ“世界最速の男”。有終の美を飾るどころか、ゴールすらできずに幕を閉じた。ジャマイカは途中棄権。大会5連覇はならなかった。

 

 アンカーの藤光は3位を守り抜いた。イギリス、アメリカから0秒5以上離されたものの、表彰台に立って見せた。日本は世界陸上でのメダル獲得は史上初。自己ベストで9秒台を持つ者はおらず、個々の走力では世界の強豪に劣る。それでも磨いてきたバトンパスを武器に、リレーでメダル争いをできるチームとなった。

 

 頂点に立つためには個々の走力アップが必須だが、メンバーが代わっても勝負ができる日本短距離陣の層の厚さを感じさせた。今大会日本勢初の表彰台に上がり、新たな歴史を刻むと共に未来への期待が膨らんだ。

 

(文/杉浦泰介)