DSC03379(加工済み) 輪湖直樹がサッカーと巡り合うことはそれほど難しくなかった。「2歳年上の兄貴がサッカーをやっていたので、その影響で自然とサッカーを始めました」と本人は述懐する。本格的ではないにしろ、既に幼稚園生の頃からボールに触れていた。

 

 輪湖は小学校にあがると既に兄が入団していたサッカー少年団の宮和田FCの門を叩く。当時、父・彰は兄の年代のコーチを務めていた。

 

 輪湖は兄の年代に混じって練習することがあった。

「ついていくのに精いっぱいでした。体格差が全然違うので、難しかった。ただそこにポツンと入っているだけ、という感じでしたね」

 

 父からはどんな指導を受けたのか。輪湖は「今でも父親の教えが役立っているんです」と語り、こう続けた。

「父には、“諦めないこと”“粘り強く戦うこと”“天狗にならないこと”の3つを言われました。技術的なことを言われた記憶はあまりないです。メンタル的なことをすごく言われていた記憶があります」

 

 父・彰に指導の根幹を訊いた。

「自分は高校から社会人までラグビーをやっていたんです。諦めずに戦い続けることの大切さを知っていたから、子供たちにも伝えたかった。後は、最終的なスコアによる勝敗にこだわることも大事ですが、試合中における相手との1対1でも1回1回が勝負なんです。そういうところを諦めずに何度も何度も続けられるか。それが大事なんです」

 

 輪湖のプレースタイルのルーツはここにあった――。

 

 チームが負けている時は、体力的に苦しくても全力で前線まで駆け上がる。味方がボールを失えば猛ダッシュで最終ラインまで戻る。相手のアタッカーとの1対1の場面では粘り強く対応し、隙あらば体を当ててボールを奪う。“諦めない”“粘り強く戦う”。父からの教えが今に生きている。

 

 輪湖は小学3年まで宮和田FCで過ごした。4年生からは柏レイソルジュニアにステップアップする。Jリーグの育成組織という環境は少年の心をくすぐった。日々、切磋琢磨する仲間、地元の少年団に属していたら戦うことのできないレベルのチームとの対戦を経験した。「こんなにうまい選手が同い年にいるんだ。だったら、自分はもっと頑張らないといけない」。左利きの少年ドリブラーは自分を戒めた。至って謙虚である。「“天狗になるな、謙虚な気持ちでいろ”と教え込まれていたから」と輪湖は、はにかみながら言った。

 

 多くの刺激を受けた輪湖はレイソルのジュニアユースへと昇格。中学時代は「ドリブルで敵陣を切り裂いていました。今とは違って(笑)」と自虐をこめて当時のプレースタイルを振り返る。ジュニアユース期の3年間はエース格としてチームを引っ張った。

 

 成績が優秀なのはサッカーのため

 

 輪湖はどんな少年時代を過ごしてきたのだろう。「本当にサッカーと勉強しかしていなかったですね」と、さらりと語る。今回のインタビューで印象に残ったセリフがあった。「オレ、勉強にしてもわからないことがイヤなんです」。妥協をしないのは、サッカーだけではない。勉強にも自ら積極的に取り組んだ。

 

DSC03417(加工済み) 好きな科目を聞くと「算数、数学が好きでした。答えが絶対あるじゃないですか」と返ってきた。苦手な科目も聞いてみると、予想通り国語だった。「 “これが正解”と言われても納得できない時があるから」と理由を教えてくれた。

 

 中学、高校は年代別の代表に招集されることもあり、学業との両立は多忙を極めた。父・彰は当時の様子を懐古する。

「中学が年代別の代表活動的に一番ピークだった。海外遠征から帰ってくると私が成田空港に車で迎えに行きました。その車中で学生服に着替えて、学校に直行していました。でも、それは当たり前のことです」

 

 どんなにハードな生活でも輪湖は音をあげなかった。勉強も試験数日前に詰め込むことはしない。日頃から予習、復習は欠かさない。宿題もきちんと提出していた。なぜ、彼がここまで勉強に打ち込むのか。それはサッカーのためであった。

 

 Jリーグの育成組織は学校の部活と違い、練習に試験休みはない。とは言え、クラブ側もそこまで鬼ではない。学校の試験期間中に練習を休むことを許可はしていた。だが、輪湖は試験前であろうと練習に参加した。父・彰は「日頃からきちんと勉強をしていれば試験前に特別、勉強をせずに練習に行けますから。自分が好きなことをやるためには、事前の準備が大事なんです」と口にする。

 

 サッカーの時間を犠牲にしないために、日々勉強にも打ち込んでいた輪湖少年はレイソルユースに昇格する。今までレギュラーとして活躍してきた輪湖だが、初めての挫折を経験する――。

 

(第3回につづく)

 

DSC03410プロフ<輪湖直樹(わこ・なおき)プロフィール>

1989年11月26日、茨城県取手市生まれ。宮和田FC-柏レイソルU‐12-柏レイソルU‐15-柏レイソルU‐18-ヴァンフォーレ甲府-徳島ヴォルティス-水戸ホーリーホック-柏レイソル。柏のアカデミーで育ち、U-15、U-17、U-20日本代表にも選ばれた。2008年に甲府でプロデビュー。14年、柏に“復帰”した。熱い気持ちと冷静さを兼ね備えた左利きの貴重なサイドバック。身長171センチ、体重65キロ。J1リーグ通算82試合出場4得点(8月7日現在)。

 

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(文・写真/大木雄貴)

 


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