夏の甲子園も、後半戦に突入した。どのプロ野球のスカウトに話を聞いても、真っ先に名前があがるのが広陵(広島)の「3番・キャッチャー」中村奨成だ。

 

 1回戦の中京大中京(愛知)戦では、2本のホームランを叩き込んだ。それもいずれも右方向に。反対方向に大きな打球を飛ばせるのは、バットが内側から出ている証拠だ。すなわちインサイドアウト。右手の押っつけを褒めるスカウトもいた。手首が強い証拠だろう。

 

 聞けば足も速く、50メートル6秒0の俊足とか。肩も強く、二塁送球到達までのタイムは、プロの基準とされる2秒を切る。

 

 広陵出身のキャッチャーといえば、現在巨人で活躍する小林誠司の名前が浮かぶが、ほとんどのスカウトが「総合力で中村の方が上」と太鼓判を押していた。
 
 さて、カープは地元の逸材を、どう評価するのか。球団関係者が明かす。「甲子園が始まるまでは、1位はピッチャー、中村は2位か3位で、と考えていたようですが、甲子園で評価が急上昇したため、2位以下ではとれなくなった。横浜DeNAなどは現に1位指名を明言していますからね。判断の難しいところです」

 

 近年、広島出身の超高校級キャッチャーと言えば谷繫元信にとどめを刺す。カープは大学生の野村謙二郎と谷繁、どちらを1位にするかで迷い、最終的には野村を選択した。2人とも名球会入りするほどの活躍をしたわけだから、結果的には「どちらも正解」だったわけだが、ある意味、中村は谷繁以来の大物といっていい。球団の判断に注目が集まる。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


◎バックナンバーはこちらから