ハリルジャパンのゴールキーパー戦線に異状アリだ。

 

 正GKの座を長らく守ってきた西川周作(浦和レッズ)が今季は不調が続き、ついには6月のアジア最終予選イラク戦のメンバーから漏れた。一方、西川に代わって今年3月のアウェーUAE戦から先発に復帰した川島永嗣(メス)も、そのイラク戦ではゴール前のこぼれ球で吉田麻也(サウサンプトン)と“お見合い”をするミスで同点弾を献上してしまった。所属するメスでも再び控えに回っているという状況だ。

 

 ここで期待したいのがガンバ大阪の守護神・東口順昭である。

 Jリーグではここ3戦勝ちなしで、9日のサンフレッチェ広島戦、13日のジュビロ磐田戦と2試合続けて2失点しているが、東口のパフォーマンス自体は悪くない。リーグ22試合を消化し、ガンバの失点数は24でリーグ5位タイ。まずまずの数字だと言っていい。

 

 今季、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の心をつかんだゲームがあった。3月11日のFC東京戦。大久保嘉人のPKを防ぎ、終盤にもビッグセーブを披露して勝利に貢献した。大久保との接触プレーで左頬を骨折しながら魂のセービングを続けた姿に、視察に訪れた指揮官は高い評価を与えていたという。「今回、東口を呼べなかったことは私にとって悲しい出来事だ。今シーズンは素晴らしいコンディションでプレーしてくれていた。次の試合にスタメンでいける状態だった」と3月のUAE、タイ戦では先発に起用するプランがあったことまで明かしている。

 

 日本代表は8月31日にホーム埼玉スタジアムでオーストラリア代表を迎え撃つ。ここで勝利すれば6大会連続となるワールドカップ本大会行きが決まる。極めて重要な一戦だ。川島の状態次第とはいえ、継続的に招集されている東口の調子がいいと判断されればチャンスが巡ってくる可能性は十分にあると言えるだろう。

 

 東口が初めて代表に呼ばれたのは6年前だった。

 アルビレックス新潟時代の2011年3月、東日本大震災の復興支援チャリティーマッチに日本代表として招集された。同年6月のキリンカップ、8月の韓国戦と続けて呼ばれたものの、その後右ひざ前十字じん帯損傷の大ケガを負ったことで代表から遠ざかる形となった。しかし、2014年に移籍したガンバ大阪で3冠制覇に貢献し、ハビエル・アギーレ体制に移行していた11月ホンジュラス、オーストラリア戦で代表復帰を果たした。以降、代表に定着していくことになる。

 

 ただ、これだけ呼ばれていながら、出場キャップは2にとどまっている。

 彼は試合に出なくても、何か1つでも吸収しようと貪欲な姿勢でトレーニングに取り組んできた。そして、ライバルであり、尊敬の対象となっている川島には常に刺激を受けてきた。

 

 東口はこう語っている。

「永嗣さんは、(所属先のクラブで)試合に出てないときも、何ならパワーアップしたぐらいで代表に帰ってきていましたから。練習から抜群(の動き)やし、向こうで充実した練習をやってるんやなって感じました。監督もそれを感じるんで、クラブで出ていないときも永嗣さんを呼び続けたんだと思います。でも充実した練習をしているのでというのは自分も同じなので」

 

 いつか来るチャンスのために、東口は研鑽を積んできた。

 川島も控え時代が長かった。2010年、南アフリカW杯直前の強化試合、イングランド戦で先発に抜擢され、ビッグセーブの連発で本大会も正GKの座についている。ずっと準備してきたことが実を結んだのだった。

 

 東口はチャンスを呼び寄せることができるのか。

 パフォーマンスに波がなく、守備に安定をもたらせるのが彼の売りだ。

 大一番に向け、静かに爪を研いでいる。


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