(写真:ダメ押しのトライを取った中靏<左>を祝福するカーペンターと畠山)

(写真:ダメ押しのトライを取った中靏<左>を祝福するカーペンターと畠山)

 18日、ジャパンラグビートップリーグ2017-2018シーズンが開幕した。東京・秩父宮ラグビー場では昨季王者のサントリーサンゴリアスと同7位のキヤノンイーグルスが対戦。開始早々に先制したサントリーはその後も得点を重ね、19-0で前半を終えた。後半に入ると、キヤノンに1トライを返されたものの、2トライを奪い32ー5で勝利した。

 

 昨季、無敗で頂点へ駆け抜けたサントリーが、開幕戦を白星で飾った。

 

(写真:攻守両面で安定感のあるプレーを見せたスミス)

(写真:攻守両面で安定感のあるプレーを見せたスミス)

 今季は世界的ビッグネームである元オーストラリア代表CTBマット・ギタウが加入するなど、タレント豊富なチームに更なる厚みが増した。昨季のベストフィフティーン6人(SH流大、SO小野晃征、WTB中靏隆彰、FLジョージ・スミス、LOジョー・ウィーラー、FB松島幸太朗)はそのまま残っており、他にも代表クラスの選手が揃っている。対するキヤノンも日本代表のSO田村優、ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズで活躍するFL/No.8エドワード・カークが加入し、昨季7位からの上位進出を狙う。

 

 序盤から試合を優位に運んだのはサントリーだった。敵陣で圧力をかけると、キヤノンが反則を連発。LOフィナウ・トゥパがシンビン(10分間の一時退場)を科される。数的有利のサントリーは敵陣右サイドからのラインアウトでボールをキープすると、モールを組んで前進。最後はPR中村駿太が押し込んでトライを奪った。小野のコンバージョンは外れたものの、5-0と開始早々に先制に成功した。

 

(写真:オーストラリア代表100キャップを超えるギタウ。献身的なプレーでチームを支えた)

(写真:オーストラリア代表103キャップを誇るギタウ。献身的なプレーでチームを支えた)

 追加点もサントリー。前半28分、敵陣深くに攻め込むと、最後はスミスがインゴールへ飛び込んだ。小野がコンバージョンキックを成功し、12-0。35分には鮮やかなパスワークから最後は中靏がトライを奪った。敵陣中央深くで左に展開。ギタウが内に走り込んだCTB村田大志にパスを送る。「大志がいいラインを走ってくれた」とギタウ。その村田はすぐさま中靏へ渡す。パスは少し低かったが、中靏が滑り込むようにボールをキャッチし、インゴールへ。コンバージョンも決まり、19-0と突き放した。

 

 鮮やかなパス回しから得点パターンはサントリー得意のかたちだ。「キヤノンさんのディフェンスが前にきてプレッシャーをかけてきていた。CTBとSOの内側を狙うコミュニケーションが取れてスムーズにできた」と中靏は振り返る。新加入のギタウともチームがいいコミュニケーションを取れている証と言えよう。昨季最多トライゲッターにもトライが生まれ、前半は19-0。サントリーはいい流れで後半を迎えた。

 

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(写真:新戦力ギタウとも良いコンビネーションを見せた村田はフル出場)

 後半早々に相手のペナルティーをもらい、小野のペナルティーゴールで加点。サントリーはキヤノンを突き放す。その約10分後には自陣で流がインターセプト。一気にカウンターを仕掛け、WTB江見翔太へキックパスを送り、ビッグゲインした。そこから繋いでウィーラーのキックパスをキャッチした村田がインゴールへ飛び込んだ。

 

 サントリーの圧勝ムード。しかし、ここでキヤノンも反撃に遭う。司令塔・田村が牽引するキヤノンのアタックに攻め込まれる。20分には田村のパスからWTBハヴィリ・リチャードアファにトライを奪われた。その後も押し込まれる展開。FLツイ・ヘンドリックがシンビンとなるなど耐える時間が続いた。

 

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(写真:昨季大ブレイクの中靏は「毎試合1本はトライを取りたい」と意気込む)

 試合を決めたのは昨季MVPだった。36分、サントリーは自陣でボールを奪うと、大きくゲイン。途中出場のジョーダン・スマイラーからのパスをフリーで受けると、俊足を生かしてゴール右へと飛び込んだ。この日、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた中靏は「トライするだけだった。チームでアタックして、サントリーらしいトライだった」と胸を張った。

 

 32-5でサントリーのほぼ危なげない勝利だったが、沢木敬介監督は「一番の収穫は勝ったこと」とコメント。キャプテンの流も「中身を見るとファイナルで、このラグビーをやったら勝てない」と続いた。沢木監督によれば、試合直後のミーティングでも選手たちに満足する様子は見られなかったという。それでもサントリーの強さは際立っていたように感じた。キヤノンのFL植松宗之副将は「サントリーさんは1人1人が何をすべきかわかっていた」と語ったように、チームとしての完成度は高い。今季優勝争いの中心にいることは間違いない。

 

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(写真:TLは今季から試合後にファンサービスの機会を設けている)

 今季のトップリーグは16チームがレッドカンファレンス(サントリー、神戸製鋼コベルコスティーラーズ、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、東芝ブレイブルーパス、クボタスピアーズ、近鉄ライナーズ、NTTドコモレッドハリケーンズ)、ホワイトカンファレンス(ヤマハ発動機ジュビロ、パナソニック ワイルドナイツ、リコーブラックラムズ、キヤノン、NECグリーンロケッツ、宗像サニックスブルース、コカ・コーラレッドスパークス、豊田自動織機シャトルズ)の2つに分かれ、各チーム13試合(同一カンファレンス7試合+交流戦6試合)を戦う。各カンファレンスの上位2チームが優勝を懸けたプレーオフに進出する。

 

 観客動員は史上最多の50万人が目標にしている。この日のキヤノンvs.サントリーは1万547人。他会場を含め4試合が開催され、トヨタ自動車vs.ヤマハ発動機(豊田スタジアム)では2万7871人と、過去最多動員記録を更新した。開幕節は19日に2試合、20日に1試合行われる。1月中旬までの約5カ月間の戦いがスタートした。

 

(文・写真/杉浦泰介)