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(写真:社長を兼任しながらもレスラーとしての存在感は絶大だ)

「今、全日が熱い!」。プロレスファンの間からこんな声が聞こえてくる。かつては低迷していた全日本プロレス。ここにきて集客も、盛り返してきた。今では満員も珍しくなくない。全日本復活の立役者が“全日の太陽”と呼ばれる宮原健斗だとするならば、屋台骨を背負っているのが社長兼レスラーの秋山準だ。自らと全日本を「一心同体」だと語る秋山に熱き“全日魂”を訊いた。

 

――メディアやファンの中でも「全日本プロレスが熱い」との声が聞こえてきます。

秋山準: 盛り上がりは感じています。ただ僕が知っている全日本はもっと遥か上にあった。今の若い子たちは良くない時期からスタートして、お客さんも入って満足しているかもしれません。僕はもっといい時期の全日本を知っているので、全然満足することはないです。

 

――良い時と悪い時の違いは?

秋山: 単純にお客さんの入りも違いますし、挙げて言ったらキリがない。ただ今もいい選手はいる。選手に関しては、その当時に匹敵するぐらいのメンツが揃ってきたと思います。

 

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(写真:若手の活躍が目立つが、大森<左>秋山の両ベテランが幹となって支えている)

――社長として、自らが果たしたことは大きかったと?

秋山: それはないです。自分の貢献は一切ない。お客さんが少ない時もファンの人は少ない中でものすごい応援をしてくれた。“この人たちのためにも絶対に盛り上げたい”と思ったし、選手も社員もみんな頑張ってきました。自分だけで何かをやったことは一切ないですね。そして誰かが欠けてもダメだった。

 

――どん底だと感じた頃は?

秋山: 例えば後楽園ホールで3分の1しか入らなかった。今でも、その写真を見ると“ウワー”と思うぐらいガッラガラです。少しでも気を抜くとこうなる。お客さんを裏切らないようにしないといけないと感じますね。

 

――それだけファンの存在は大きいわけですね。

秋山: そうですね。レスラー生活で最悪のところまでいった時に支えてくれたのが、ファンの声援ですから。それは本当に力になりました。

 

――秋山社長にとって、全日本プロレスとは?

秋山: 一心同体の存在ですね。僕がダメになれば(全日本も)ダメになるし、全日本が終わる時は僕が終わる時だと思っています。

 

 プロレスラーは表現者

 

――先月、新木場1st RINGで行われた「GROWIN' UP」では新日本プロレスの若手が乗り込んできました。その時、秋山社長は全日本の若手に対して不満を抱いたようですが、具体的にどの部分だったのでしょう?

秋山: 新日本の若手はセコンドも含めリングに上がってきたのに対し、ウチの若手たちはエプロンに立ったままでした。みすみすチャンスを逃したみたいでもったいないですよね。チャンスがいっぱいある中で、モノにできていないのが非常に歯がゆい。考えていないのでしょうね。シチュエーションなどを頭に入れて、“ここはこうしよう”というアイデアが明確にないと身体は動かないですから。あまりにも漠然とし過ぎているような気がします。

 

――秋山社長は若手に対して奮起を促すような発言をメディアやSNSでもされています。

秋山: 受け取ってそれ以上のものを返してくれればいいと思います。ただ真面目なんでしょうね。“これをやったらマズイ”“これやったら怒られるかな”と思ってしまっているのでしょう。逆に僕はやらなかったら怒る。いつも選手たちに「メチャクチャやってもいい。全部オレが対処するから」と言うのですが……。まだまだですね。

 

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(写真:デビュー1年目の24歳・岡田。感情剥き出しのファイトが魅力)

――中でも一番気になっている選手は?

秋山: 今年デビューした岡田(佑介)が一番面白いです。少しぐらいの先輩なら言葉や表現で、抜かせることはすぐできると思う。今のままどんどん発信してほしいですね。

 

――以前、自らを「大したことない選手」だと言われて、若手に対しても「そんな奴に言われていいのか」と叱咤したとお聞きしました。

秋山: まぁ大したことないとは言っても、そこそこはあります。僕はトップを取っている選手ではないので、僕なんかをはるかに抜かさないとダメなんです。団体内や同期と比べるのではなく、プロレス界や他のスポーツにも負けないようにしないといけない。僕らが若い時はプロスポーツ大賞で他競技の選手と並んで賞をいただくような場に出させてもらいました。他団体の選手、他のプロスポーツの選手を意識していました。そこまで高いところを目指してやれば、ウチの若手ももっと伸びるんじゃないかと思います。

 

――社長である一方で現役レスラーとして、リング上で表現していかないといけません。まだその火は消えていない?

秋山: 全然消えていないです。正直、僕が選手のことだけに専念してリングに上がったら、表現に関しては誰にもまだ負けないです。負けないというより、若手が全然置いて行かれると思います。やる度合い、次元が違う。みんなは型にはまったことしか、たぶんできない。僕は型なんか関係なくやっている。突拍子もないことをすれば、みんながそこに食い付きますよね。それを見越した上で型を壊していきました。

 

――まだまだ若手には負けていられないと?

秋山: それぐらい自分のやってきたことには自信があります。今の選手たちも試合はものすごくいい試合をしている。ただ表現という意味ではまだまだ。僕自身で表現が完璧だと思っていない。それをまだまだ抜かれていないので、もっともっとできるだろうと感じています。

 

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(写真:「表現にこだわらなかったらアマチュア」との想いを持つ秋山)

――レスラーとして絶対譲れないことは?

秋山: 僕は全部譲りたくないです。勝ちも譲りたくないし、表現も譲りたくない。言葉では若い奴に「行け」と言っていますが、リングに上がったら全然負けると思っていないですから。それを思った時点でダメです。

 

――その時は引退する?

秋山: 引退します。絶対負けないという気持ちが大事だと思います。

 

――今後、全日本をどういうふうにしていきたいですか?

秋山: まずは僕が知っている全日本プロレスがあるので、そこまでいけるようにしないといけない。ダメになりそうになってもここまで盛り返してきた。全日本プロレスの力を僕は信じている。僕らは輝かしい全日本プロレスに戻れるようにやるだけです。

 

「何かが起こる」新木場

 

「全日本プロレスは新木場大会から何かが起こる」。秋山はインタビューの席でそう口にした。新木場1st RINGでの「GROWIN' UP」は3月よりスタート。5月から毎月、開催している。7、8月は超満員札止め。全日本の盛況ぶりを感じさせた。8月のVol.5は見所の多い興行だった。

 

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(写真:髪を掴まれる安納<中央>。他団体選手の参戦も興行に彩を与えている)

 第2試合には女子プロレスラーが華を添えた。安納サオリ&夏すみれ組vs.沙紀&高瀬みゆき組のタッグマッチは入場から艶やかな踊りを見せ、観客を魅了した。ゴングが鳴ると“骨太”の試合を披露し、「明るく楽しく激しいプロレス」が垣間見えた気がした。

 

 第3試合はアメリカのプロレス団体WWEでも活躍したフリーのTAJIRIが参戦。同じくフリーの丸山敦とバズソーキック、毒霧を巡る攻防をコミカルな展開も交えて見せた。リング上での繰り出す丸山のトラッシュ・トーク(挑発)は場内を沸かせた。

 

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(写真:懐かしのポーズで会場を盛り上げるTAKAみちのく<右>とブラック・タイガーⅦ)

 試合後にはブラック・タイガーⅦとTAKAみちのくがリングに上がり、8月27日両国大会でのアジアタッグ王座挑戦を表明した。マイクパフォーマンスで休憩中にも観客を飽きさせなかった。

 

 第4試合はかつて全日本を離脱した鈴木鼓太郎&佐藤恵一組に、全日本所属の青木篤志&岡田祐介組が迎え撃った。秋山が評価していた岡田は闘志を剥き出して闘うファイトスタイルで、鈴木鼓太郎や佐藤恵一に真っ向勝負を仕掛けた。青木篤志も内に秘めた想いをリング上で吐き出すかのように攻撃を繰り広げた。

 

(写真:腹の辺りをさする宮原。三冠ヘビー級のベルト奪取をアピール)

(写真:腹の辺りをさする宮原。三冠ヘビー級のベルト奪取をアピール)

 メインは両国大会の“三冠前哨戦”となる秋山準&石川修司&大森隆男&KAI組vs.宮原健斗&野村直矢&岩本煌史&青柳優馬組の8人タッグマッチ。現王者・石川と元王者・宮原の直接対決はもちろんだが、他の6人もそれぞれの持ち味を出しつつリング上、場外で熱いファイトを見せた。

 

 試合は石川組が勝利したが、最後に締めたのは“全日の太陽”宮原だった。全員が退場した後、再びリングに戻ってきた宮原。マイクパフォーマンスで「最高ですかー?」と場内を煽り、ファンの心を掴んで花道を堂々と帰っていた。その背中は「主役はオレだ」と言わんばかりだった。

 

 この日の新木場は「全日本プロレスは新木場大会から何かが起こる」との秋山が発した言葉通りであり、その盛り上がりは「今、全日が熱い」を強く印象付けるものだった。

 

1708alljapanPF秋山準(あきやま・じゅん)プロフィール>

1969年10月9日、大阪府生まれ。高校、大学はアマチュアレスリングで活躍した。92年に全日本プロレスに入団し、同年9月にデビュー。その後、アジアタッグ王座、世界タッグ王座を獲得するなど四天王(三沢光晴、川田利明、田上明、小橋建太)と並び五強と呼ばれた。00年にプロレスリング・ノアに移籍。ノアのGHCヘビー級、全日本の三冠ヘビー級のベルトを手にするなど、第一線で活躍した。12年でノアを退団。フリーになり、13年7月に全日本へ復帰した。14年7月より運営会社オールジャパン・プロレスリングの代表取締役社長に就任した。現在は社長兼レスラーとして、全日本の舵取りをしながら、マットで熱い闘いを続けている。

 

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(文・写真/杉浦泰介)

 

 現在、BS11では「全日本プロレスイレブン」(毎月第4水曜23時30分~24時)を放送中。8月23日(水)の放送では8月3日新木場大会の模様や、27日両国大会の見どころをオンエアします。是非ご視聴ください。


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